東山動植物園のライオン「ソラ」、甲状腺を治療 すくすく成長
東山動植物園(名古屋市)のライオンで、首に大きな「こぶ」があったソラ(雄、4歳)。ホルモンの分泌異常で甲状腺が膨らみ、成長が遅れるなどの症状が出ていたが、投薬治療で今やすっかりたくましい姿に。こぶも徐々に小さくなった。園によると、ライオンの甲状腺の投薬治療は珍しいといい、2月にあった動物園職員が集まる全国会議で事例報告したという。
ソラのこぶは1歳を迎えるころから目立ち始めた。3歳になっても犬歯が小さく、たてがみも短いなど外観は「子ライオン」のまま。食欲も減り、えさを残すこともあったため、園は経過観察を続けていた。
実は、ソラと双子のステラ(雌)にも、同じようなこぶがあった。園が2015年5月にステラのこぶを手術で摘出したが術後に容体が急変し、死んでしまったという。2歳だった。
園はステラのこぶを解剖し、ソラの血液検査のデータとあわせて、甲状腺が膨らんでこぶになるメカニズムをつきとめた。病名は原発性甲状腺機能低下(クレチン症)。ライオンでは報告例がないという。
人間もライオンも、おとなの体になるためには甲状腺ホルモンが必要だが、ソラは数値が検出できないほど低かった。甲状腺ホルモンの分泌を促そうと、ソラの体内で「指令役」の刺激ホルモンが過剰に出てしまい、これが甲状腺の膨らむ原因となっていた。
園は16年1月から、甲状腺ホルモンの入った薬をえさに混ぜて与える治療を開始。その結果、こぶの大きさも約5分の1まで縮み、体も成長した。
園の田中喜和子獣医師(39)は「ファンの方から心配の声も届いていたが、症状も落ち着いて生活の質も向上してきた」。ソラは成長期に甲状腺ホルモンが不足していたため、今後も骨格の成長具合などを経過観察する必要があるという。
成果は、全国の動物園職員が集まる技術者会議で報告された。ライオンの治療経験もある上野動物園教育普及課の金子美香子課長は「飼育動物を健康に保つ責任が動物園にはある。症例が珍しければ珍しいほど、情報を共有する意義は大きい」と話す。
(大野晴香)
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