今なお愛されるスヌーピーの魅力 六本木にミュージアム
犬のスヌーピーや飼い主のチャーリー・ブラウンで知られる米国発の新聞漫画「ピーナッツ」。作者チャールズ・M・シュルツ(1922~2000)が描いた作品世界を紹介するスヌーピーミュージアムが東京・六本木に開館して半年になる。連日ファンや家族連れでにぎわい、オープニング記念展には30万人超が訪れた。連載開始から66年を経てなお、世代を超えて愛され続ける理由とは――。
■1950年から新聞連載
スヌーピーミュージアムは、米カリフォルニア州にあるチャールズ・M・シュルツ美術館の、世界初の分館として今春オープン。10月8日に始まった第2回展覧会「もういちど、はじめましてスヌーピー。」では、「世界で最も有名なビーグル犬」として愛されるスヌーピーが4本足だった子犬から二足歩行になり、唯一無二のキャラクター性を確立してゆく約50年の変遷をたどる。会場には原画約80点のほか、日本初公開のスケッチやビンテージグッズが並ぶ。
同ミュージアムの中山三善(みよし)ディレクターは「半年ごとに展示室全体がまるごと入れ替わるのが当館の特徴。原画をもとに新たに制作したアニメーションも必見です」と話す。開館に合わせて来日したジーン夫人は「スパーキー(シュルツの愛称)はいつの時代でも日常生活で誰もが抱く感情をアイデアの源にしていた。たくさんのファンがいる日本で、その世界観を分かち合うことができて彼も幸せに思っていると思う」と話した。
「ピーナッツ」は1950年10月2日、アメリカの新聞7紙で連載が始まった。アシスタントなしで、50年間ほぼ休まず描いたエピソードは約1万8千話。これまでに21の言語に訳され、75カ国2200紙に掲載されている。
魅力のひとつは徹底したキャラクター設定だろう。野球で負け続けてもめげない心優しきチャーリー・ブラウンに、気むずかしくていじわるなルーシー、毛布なしでは生きていけない小さな哲学者ライナス……。70を超える登場人物は誰の心にも宿る一面を描いていたり、実在する身近な人物に思えたり。大人は登場することなく、子供たちの目線で日常のおかしみとかなしみを映し出し、哲学的要素を持ち合わせたエピソードにつなげた。
家族でミュージアムを訪れた飯島心結(みゆう)ちゃん(10)は、3年ほど前にコミックを読んで好きになったという。「チャーリー・ブラウンの最後まであきらめないところが共感できて好き」。おばの清水佳子さん(46)も中学生の頃からのファン。「英語の教科書に載っていたのが出会い。キャラクターのかわいさだけでなく、物語の面白さにひかれた」と話す。
■動かぬ何かがある
45年以上にわたって翻訳を手がけている詩人の谷川俊太郎さんは「シュルツさんのユーモアは品がいい。日々の変化をとらえながら、事実だけを描くのではなく、事実に動かされた自分を描いている。時代によって動かない何かがあるから、いつまでも古くならない」と語る。
65年にシュルツらが製作した初のアニメ「スヌーピーのメリークリスマス」は、米国では今もクリスマスの時期に放映され、冬の風物詩になっている。
同じ米国発でも、ウォルト・ディズニーは白雪姫やシンデレラなど童話をもとにした世界を描いた。一方、「ピーナッツ」にファンタジー要素はない。鋭い観察眼で身近な出来事や人々に着想を得ながら、シュルツはさりげない皮肉とユーモアを織り交ぜてリアルなアメリカを表した。
絵本雑誌「MOE」(白泉社)では2000年以降、4度のスヌーピー特集を組んできた。同編集部の位頭久美子さんは、年齢やその時の気分によって様々な受け取り方ができるのが「ピーナッツ」の魅力だという。「時にシニカルだけど、人の心の奥まではえぐらない。ありのままでいいんだよ、と包んでくれる作者の人柄が伝わる稀有(けう)な漫画。その優しさが、忙しい現代人にも響いているから愛されているのだと思う」と分析する。
ミュージアムは18年秋までの限定開館の予定。詳細は公式サイト。
(松沢奈々子)
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