猫だけで16種類、みんな顔が違う「どうぶつドーナツ」
見て可愛く、食べて美味しい。ペット好きの心を捉えて離さない――子どもにも大人にも人気の、どうぶつドーナツの秘密を探ってみた。
(末尾に写真特集があります)
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9月はじめ、東京・自由が丘の駅側の通りを歩いていると、自由が丘デパートの前で、猫の絵の看板を発見した。
「毎月22日は にゃんこday 猫ドーナツ8種類登場」
吸い寄せられるように店に入ると、ショーウインドーに並ぶ動物顔のドーナツの数々。猫、犬、子ぶた、アルパカ、ウサギ、象、カエル……なんともキュートだ。
「猫をください! まるちゃん、チョコちゃん、クロに、ミケちゃん」。ぜひ家に“連れて”帰りたくなった。
「どのお顔がいいですか?」
尋ねられてよく見ると、表情がそれぞれ違う。丸い目だったり、目を閉じていたり、ウインクしていたり。
もったいない感じだが、食べるてみると……マイルドな甘さで、後味がいい。猫の耳の中はアーモンドで香ばしさが絶妙なアクセントになっている。
店名(商品名)は「イクミママのどうぶつドーナツ!」。自由が丘店は昨年9月に開店し、ちょうど1年を迎えたところだという。調べると、“知るひとぞ知る”有名なドーナツだ。目と心と舌をくすぐるスイーツを開発した会社代表でドーナツパティシェのイクミママに、話を聞いてみたくなった。
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イクミママこと、中尾育美さん(46)にお目にかかったのは9月半ば。川崎市中原区木月(最寄・元住吉駅)の商店街「ブレーメン通り」にある本店を訪ねた。テナントビルの一階に店舗と製造室、2階に事務所がある。
「創業は2012年、丸4年が過ぎました。最初は子猫のミケとクロから始めて、今では猫16種類、犬は柴が3種類(限定で他犬種も)。季節ものを入れると全部で90種類くらいあります」「猫好きな方と犬好きな方には違いがあって、猫(のドーナツ)はどんな子でもいいけれど、犬はご自分の飼っている犬種がいい、とおっしゃる方が多いですね」
製造室(厨房)も見せてもらった。
「手作業で、一度に揚げられる量は30個。だから朝5時から何度も工程を繰り返して1日約2000個作ります」
1ヶ月に6万個、冬場はそれ以上売れるという。
作り方の基本は①原材料を混ぜて型(ドーナツカッター)に入れ、フライヤーで揚げる。②冷ましたら、溶かしたチョコでコーティング、乾いたら模様など色づけ。動物の種類によって別に作った鼻や耳の部分をつける。③最後にチョコペンで口や目やひげを描く。
夕方5時、犬と猫の顔を描く最終工程が始まった。スタッフがドーナツ一つ一つに、チョコペン(絞り袋)でポツポツ目を描いていく。
「ベースの顔は決まっていますが、人によって、『かわいい』と思う顔が違うので、いくつも表情を作るんですよ」
もちろん見た目だけではなく、素材にもこだわりがいっぱいありそう。そもそも、ドーナツの誕生のきっかけは何だろう?
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2階の事務所に上がると、育美さんのご主人で、オーナーの和善さん(43歳)が笑顔で迎えてくれた。
「夫婦ともに京都出身。妻は以前、料理教室の講師でしたが、僕は食とは関係ない仕事をしていた。じつはその時に二度ほど体を壊したんです」
暴飲&コンビ二食ばかりで入院したという。
「お酒をすぱっと辞めたら、甘いものを欲して(笑い)。スイーツ作りに興味をもって全国を食べ歩くうちにドーナツにいきついたんです」
東京都内で、手作りでふわふわで素材が活きたドーナツに出会い、影響を受けたという。
「最初は僕一人でフランチャイズのドーナツ店を始め、それから夫婦で独立したんです」
和善さんは体を壊した経験があるだけに、素材は特に吟味した。国産のストレスのない鶏の有精卵、北海道産の小麦粉。塩は沖縄の自然塩、バターも国産。保存料や添加物は使わず着色も自然素材。そこに、付加価値として「かわいい」を取り入れた。
和善さんと育美さんは、ニコニコしながら「お客様がドーナツを見て笑顔、安心して食べて笑顔になってくださるのが一番」と話す。
「実は、私たちは家に戻ると、本物の猫にいやされているんですよ」
朝から晩まで大いそがしの夫妻だが、川崎市内の自宅に4匹が待っているという。
「これが実に不思議な出会いで」。イクミママ夫妻を支える、猫たちの話は、また次回に……
(藤村かおり)
●元住吉・本店 神奈川県川崎市木月3-6-18モトスミコアビル1F
(7~11種類のどうぶつ&プレーンなど18種類販売)TEL:044-434-3640 (不定休)
●自由が丘店 東京都目黒区自由が丘1-28-8
(どうぶつドーナツのみ販売)TEL:03-6421-4533 (水曜定休)
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