犬の記憶力 記憶のメカニズムをさぐる
犬ってどれくらい記憶力があるの?過去を思い出すことはあるの? 音も記憶できるの? など、犬の記憶については謎が多い。動物や犬の記憶に関する画期的な実験を成功させてきた、京都大学心理学研究室の藤田和生教授に、犬の記憶について伺ってみよう。
犬と人間の記憶のメカニズム 実はあまり違いはないらしい
犬は、一般的には比較的記憶力がよい、と言われている動物。
だが、本当にそうだろうか? 近所の犬を見るとそうは思えない。3日前に会った時は、懐いてきたのでオヤツをあげたのに、昨日会ったら敵意丸出しで吠え続けるなんてことを繰り返しているし。
しかし、犬と人間は、というかほとんどの動物は、同じ脳のシステムを持っているのだという。一応高等生物で、インターネットとか飛行機をどんどん開発してしまう人間と、犬が同じシステムの脳を持つなんて本当なのだろうか? と思ってしまうが。
「犬、猫、鳥、脳の基本構造は同じです。記憶のシステムもそうですよ。記憶を司どる脳の部分は進化に関して保守的で、昔からあまり変わっていないので、各動物似ていると言われています。脳にある海馬という場所で記憶を作って、いろいろな部分に分散させて記憶しているようです」
それでも人間と犬や他の動物の記憶力に差があるのは、記憶を保管する場所などの機能に違いがあるからだと言われている。
では、犬の記憶力はいったいどれくらいのものなのだろうか? 他にもどんなことを記憶できる? 嫌な記憶を忘れさせられるの? など多くの疑問が生まれてくる。それらを藤田教授にぶつけてみようではないか。
これを読めば、愛犬の記憶について詳しくなれるはず。ふかーい記憶の世界へようこそ!
犬の記憶のメカニズム
記憶はどのように、脳のどの部位で作られる? わかりやすいようにまとめてみた。
・海馬
ここで、記憶が作られるといわれている。脳の中心部、梨状葉の奥くらいに位置する、小さな部位だがとても重要な器官。
・大脳新皮質
大脳新皮質はその層状の構造的特徴から同定されるもので、哺乳類にだけ存在する。鳥類では新皮質の代わりに「外套」と呼ばれる構造が発達しており、哺乳類の新皮質と同じような働きをしているので、実は同じくらい「賢い」。新皮質、とりわけ高次情報処理を司る前頭葉(中でも前頭前野)がもっとも発達しているのがヒトの特徴。
記憶する理由とは?
捕食するために覚える必要がある
理由はたくさんあるが、重要なものの一つとして、狩りをするためという理由がある。まだ犬の多くが野生動物として暮らしていた頃、獲物がどの辺りにいるか、どこに隠れたか、どんな動きをするか?などを記憶しなければならなかった。その記憶力は、家庭犬になってからも発揮されている。獲物ではなく、オヤツを得るために。どんな動きをしたら、飼い主は喜ぶのか? あるいは、どこにオヤツが隠されているのか? などをちゃんと覚えているのだ。
危険をさけて、命を守るため
他の大きな理由として考えられるのは、危険を回避するため。生きるために、という意味では狩りと同じ。どこに行った時、他の動物に襲われそうになったか、この奥には以前落ちそうになった崖がある、など。現代においては、この先に行くと動物病院があるから、こっちの道を歩こう! かあちゃんが腕まくりするとシャンプー、逃げろ―!といった感じで危険なことが起こるであろうきっかけを覚えていることもある。
監修:藤田和生教授
京都大学文学部心理学研究室教授。多様な動物の認知、知性、感情の働きを分析し、相互に比較することを通して、心の進化を明らかにすることを目指している。主な著書に『誤解だらけのイヌの気持ち』など。
★実験参加犬募集★
藤田教授はCAMP-WANというプロジェクトを主宰している。人と犬の関係をさらに深いものにするために、犬の行動や知性について調査している。CAMPWANでは調査に協力してくれる日本犬を募集している。
https://sites.google.com/site/kyotocampwan2/home
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