「笑う狛犬」知ってる? 北海道・江部乙神社の「看板娘」
午後の日ざしを浴びながら、狛犬(こまいぬ)が笑っている。古代オリエントのライオンをルーツに、日本で独自の進化を遂げたという狛犬。顔立ちや毛並み、しぐさなどがそれぞれ個性的な彼らは、ファンを惹(ひ)きつけてきた。中でも、ユニークな表情で人気を集めるのが、北海道滝川市・江部乙(えべおつ)神社の「笑う狛犬」だ。
同市江部乙町は、1894(明治27)年に1府19県から入植した400戸の屯田兵によって拓(ひら)かれた。神社も同年に創祀(そうし)。6代目宮司の齋藤豪さんによれば、狛犬は「2012年ごろには、すでに人気者だった」そう。阿吽(あうん)2体の台座には「明治43年9月」「石工佐々原一夫」の文字。佐々原氏は福岡県から入った屯田兵で、子孫は今も妹背牛町で石材店を営む。
口を開けた阿形(あぎょう)は、満面に陽光を受けてニタリ。だから笑う狛犬なのだが、いつもニヤついているわけじゃない。光の具合や見る者の心境によっても微妙に変化する。一方、吽形(うんぎょう)は木陰にひっそり佇(たたず)んでいた。何やらもの寂しげであどけない姿は、今にも鼻を鳴らしてすり寄ってきそうだ。私が「甘えんぼ狛犬」と呼ぶゆえんでもある。「男の子なんです」と宮司の妻静香さん。よく見るとたしかに男の子の証しが目に入った。
お守りや朱印にもなっている「笑う狛犬」は、神社のいわば看板娘。そして、思わず手を差しのべたくなる甘えん坊の男の子。屯田兵の想像力が生んだ無二の守護獣の、クリンとしたおちゃめな瞳は、百年をこえてまちを見守ってきた。
(文と写真・塚田敏信)
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