野良猫、地区で管理し「地域猫」に TNR、当番でエサやり
静岡市駿河区のある地区で、地域のボランティアが野良猫を飼育管理する「地域猫活動」が続いている。2012年に始めた当時は約30匹の野良猫がいたが、今では7匹まで減り、猫にからむ苦情も減った。静岡市によると、自治会といった地域組織単位での活動が続いている例は珍しいのではないかという。
「地域猫活動」では、地域の有志が飼い主のいない猫を捕獲し、不妊手術を受けさせて、元の場所に戻す「TNR活動」をした後、餌の管理や便の始末などを担う。野良猫の増加防止だけでなく、殺処分を避け、猫が命を終えるまで見守る活動だ。
駿河区のこの地区では、12年度に市が実施した「地域猫活動の協働パイロット事業」に手を挙げたことが、活動を始めるきっかけになった。
活動のリーダー役である小泉勇さん(72)は「置き餌をする人が原因で畑を何度も猫に荒らされて、困っていた。個人で猫の問題をなくすのには限界を感じ、町内会ぐるみでなんとかしようと考えた」と振り返る。当時、地区内のスーパーの駐車場に約30匹の野良猫がすみつき、近隣の住宅からは猫の繁殖期の鳴き声や便、自動車に傷をつけられたなどの苦情がスーパーや市動物指導センターに相次いでいたという。
パイロット事業で市から25万円の補助金を受けたほか、地区で開いた事業説明会に市の担当者に出てもらい、捕獲装置の貸し出しなどの援助も受けたという。スーパーや寺院などにも協力してもらい、猫が集まる駐車場付近に餌置き場と猫用のトイレを二つずつ設置。10人のボランティアが当番制で餌やりなどをして、猫の様子を「猫日記」に記録した。
並行してTNR活動を続け、月1回の全体集会で情報を共有し合ってきた。餌や掃除道具などの費用はスーパーや公民館に置いた「猫募金箱」への寄付でまかなってきた。活動を続けた結果、野良猫の数は現在7匹までに減った。
市動物指導センターの長田正孝動物管理係長は「猫の問題をなくすためにはTNR活動だけでは不十分。猫の生息管理をすることで、早期に捨て猫や置き餌問題に対応することができる」と地域猫活動の重要性を訴える。
市はパイロット事業の後、原則20万円以内の補助金が支給される「地域猫活動モデル事業準備事業」を市内の5地区と実施。地区の説明会への出席や技術指導をした。しかし、その後の各地区の現状までは把握できていないという。
野良猫の増加を防ぐには、ボランティアによる地域猫活動だけでは限界があると小泉さんは指摘する。「飼い猫に不妊去勢手術を受けさせていない人や餌を置きっぱなしにする人もいる。猫の数を減らすためには、飼い主を含んだ地域全体の理解と協力も必要だ」と強調する。
県衛生課によると、昨年度に県内で殺処分された猫は1835匹。うち約84%が生後90日以内の子猫だという。
(北川サイラ)
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