招き猫が瀬戸物を救う? 欧米人にウケ、米国進出の切り札に

中外陶園は、250種にものぼる招き猫を作っている=愛知県瀬戸市
中外陶園は、250種にものぼる招き猫を作っている=愛知県瀬戸市

 創業から半世紀超の焼き物メーカー、中外陶園。招き猫を始めとする縁起物、ひな人形や干支(えと)の置物など、季節物を中心に瀬戸焼を生産、販売している。常務の鈴木康浩さん(31)は「TPP(環太平洋経済連携協定)をきっかけにして、一度は撤退した米国向け輸出に再挑戦したい」と意気込む。

 東海地方の焼き物は、良質な土と精緻(せいち)な技術で知られる。かつては輸出も盛んだった。とくに瀬戸焼は「セト・ノベルティー」と呼ばれ、海外でも人気を集めた。

 中外陶園では、かつては売り上げのほぼ100%が海外販売だった。歯ブラシスタンドや食卓小物入れ、西洋人形などを手がけた。人形が着るドレスの生地まで細かく表現する技術が、欧米で受けたという。「中外」という社名は「国内から海外へ」を意味する。

 だが、1985年のプラザ合意で円高ドル安が急激に進んだ。国内の陶磁器は価格競争力を失い、韓国勢や台湾勢の後塵(こうじん)を拝す。

 焼き物で1300年の歴史を持つとされる瀬戸も、例外ではなかった。輸出に頼る陶磁器メーカーは次々と窯を壊し、マンションに変わった。事業を続ける会社も、国内向けに集中したり、海外生産に切り替えたり。さらに近年は、後継者不足が追い打ちをかけている。鈴木さんは「焼き物を継いだ地元の同級生は、ほとんどいない。業界では40~50代でも若手と言われる」と話す。

 そんな中で明るいニュースとなったのが、TPPの大筋合意だ。TPPが発効すれば、陶磁器では米国向けで最大28%かかっている関税が撤廃される。米議会の承認が見通せない状況ではあるものの、「海外でどんなものが売れるのか、社内で議論している」。

 候補に挙がっているのは招き猫だ。同社は縁起物に絞ることで逆境に耐え、「ニッチなところでやってきたからこそ生き残れた」という自負がある。これまで250種類もの招き猫を売り出しており、そこで培った技術をTPP時代に生かそうというわけだ。

 ただ、文化が異なる海外で招き猫の需要があるのか――。鈴木さんは「手応えはある」と話す。

 今年1月、東京・新宿の伊勢丹で招き猫の展示販売をしたが、米国やフランスなどの外国人客が多く買っていった。インバウンド(訪日外国人旅行客)効果でアジアの購入客も増え、客の3分の1は中国や台湾から来た人だ。中国では、現地産の招き猫風の置物も目立つようになった。ニッチ路線を続け、一定の需要を確実に取り込めば勝機はあると見込む。

 マーケティングを続けるうちに、かわいらしい置物が売れる日本と違い、欧米では職人が一つ一つ手描きで絵付けをするような、クラシックなものが受けると気づいた。一朝一夕でまねされる技術ではない。海外への再挑戦は、まだ明確な計画を立てていないが、「将来的には売り上げの半分を海外で売りたい」という。

(友田雄大)

◆中外陶園(愛知県瀬戸市)
1952年創立。社員は約50人で、うち6割が女性。「薬師窯」というブランドを展開し、干支の置物や風鈴など、季節物に特化した商品を作っている。招き猫の文化を紹介するため、瀬戸や常滑、九谷の招き猫約5千体を展示した「招き猫ミュージアム」(愛知県瀬戸市)も運営している。
朝日新聞
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