地震で収容力限界、熊本の「殺処分ゼロ」全国で支え

河田さんに受け渡されたミンゴ=高松市春日町の県動物管理指導所
河田さんに受け渡されたミンゴ=高松市春日町の県動物管理指導所

 収容された犬や猫の「殺処分ゼロ」に取り組んでいる熊本市動物愛護センターが、一連の地震で被害を受けた。被災地では新たな飼い主探しが滞る。先進的な「殺処分ゼロ」の理念を守ろうと、熊本市から犬や猫が全国に渡っている。香川県にも1匹の雑種犬がやって来て、新たな飼い主に引き取られた。

 熊本市から来たのは推定5~7歳のオスの雑種犬「ミンゴ」。9日午前、高松市の県動物管理指導所で、新たな飼い主になった同市の介護ヘルパー河田好美さん(48)になでられ、元気にほえた。河田さんは「震災で怖い思いもしたと思う。知らない土地で不安でしょうし、平穏な気持ちで過ごしてもらえるように可愛がっていきたい」と話した。

 熊本市動物愛護センターは、地震で大きな被害が出た熊本県益城町から約7キロの場所にある。2日に取材で現地を訪れると、近くの斜面が崩れ、建物を囲むように地割れがあった。

 センターには地震前、犬78匹、猫42匹が収容されていた。地震直後から迷子になったとみられる犬や猫が相次いで運び込まれ、今月1日までに犬猫合わせ64匹が新たに収容された。犬37匹は飼い主が見つかったが、センターの収容能力は限界。4月27日からは環境省の仲介で全国26府県市の自治体へ犬猫29匹の譲渡が始まった。

 同センターは、2002年に全国に先駆け動物の「殺処分ゼロ」を目標に掲げた。収容した動物の新たな飼い主探しに力を入れ、14年度に初めて犬の殺処分ゼロを達成した。その理念を尊重し、譲渡先の自治体には「殺処分せず、収容困難になった場合は環境省に差し戻す」と約束してもらった。村上睦子所長は「被災した職員もおり、相次ぐ問い合わせや対応で手いっぱいになっていた。自治体の助けはありがたい」と話す。

 香川県も熊本市からの犬を受け入れることにした。県の担当者は「香川県内の動物は毎週処分されている。受け入れに対しては葛藤があった」と話す。

 香川県でも殺処分を減らす取り組みは続けている。収容されている犬や猫の新しい飼い主を探す譲渡会は以前は月1回の開催だったが、14年ごろからは随時対応できるようにした。その結果、12年度に県と高松市で犬92匹、猫16匹だった譲渡が、15年度は速報値で犬384匹、猫203匹に増えた。それでも、収容数に比べ譲渡希望が少なく、依然として殺処分される犬や猫は多い。今回も動物愛護団体が自主的に協力して広報し1件だけ申し出があった。

 河田さんに引き渡されるまでミンゴの世話をした東讃保健福祉事務所の獣医師は「譲渡先が見つかってホッとした。ミンゴはおびえや疲れもなく、人なつこい。熊本市で大切にしつけられていたと思えた。幸せになってほしい」と見送った。


■人とペットの共生、災害に備えを

 地震発生から約2週間後、被災地取材班に加わった。

 熊本には高松に来る前に住んでいた。記者としてのスタートを切った思い入れのある土地だ。勤務していたころ、地震を意識したことはなかった。

 地震後の熊本市は、山は崩れ、水前寺成趣(じょうじゅ)園の水も枯れ、道は波打ち、つぶれた家が並んでいた。地震の際に人と動物の命を共に守るにはどうすればいいかを取材した。

 地震直後、熊本市動物愛護センターに猫の死体が運ばれたという。揺れに驚き高層階から飛び出してしまったとみられる。動物病院にも建物から飛び降りた猫や車にひかれた犬が次々と運ばれた。準備不足から避難所では動物トラブルも相次いだ。

 香川も災害の少ない土地といわれる。動物と人が共に災害を乗り切るには、今回の熊本をはじめとした被災地の状況を学び、事前に備える必要があると実感した。

(田中志乃)

朝日新聞
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