餅を食べて苦しむ猫 「吾輩」の逸話、夏目家の飼い猫の実話

「吾輩は猫である」には、夏目家の実際の「事件」が使われている。雑煮の餅を食べて苦しがる猫(16・17回)も、台所で飼い猫が子供の食べ残しの雑煮の餅を食べて「前足でもがきながら踊りをおどって」いたのを漱石が聞いて書いたという(夏目鏡子『漱石の思い出』)。
長女の筆子は「上の娘、トンコとして登場」。「当時の私たちの生活そのまま」で、「一体いつの間に見ていたのだろうかと思う程」だった。
漱石の朝食はトーストと紅茶、いつも1人で食べていた。「ハイカラなお父様しか召し上れないもの」がうらやましく、娘たちは、漱石が食べ終えるやいなや駆けつけ、残ったパンを焼きもせず、バターもつけずに食べていた。その様子を、いつもは残り物のパンにつける砂糖を、姉妹が競って盛り上げるユーモラスな話(12回)に仕立て上げた(松岡筆子「夏目漱石の『猫』の娘」)。
(岡恵里)
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