猫カフェは夜10時までOK? 夜営業はストレスあり?なし?
猫とふれあいながら飲食できる猫カフェの営業時間を巡り論争が起きている。動物愛護法に基づく規則では、犬や猫を店などに展示できるのは夜は午後8時までだが、今年5月末までの経過措置で午後10時まで認めていた。ここに来て環境省は6月以降も認める方針を示したが、「猫も夜遅くまで働くとストレスがかかる」という懸念は消えない。
環境省によると猫カフェは全国に314店ある(15年10月時点)。その27%、86店が午後8時以降も営業しているという。
東京・新宿の歌舞伎町にある猫カフェ「きゃりこ新宿店」は午前10時から午後10時まで開き、常時約40匹がフロアにいる。昼間は若者や外国人らでにぎわい、夜はサラリーマンやカップルが多く訪れる。
同店を営み、21店(2016年4月15日時点)が加盟する「猫カフェ協会」の理事長も務める福井隆文さんは「賃料や人件費を考えれば、午後8時まででは経営がなりたたない。猫カフェの猫は小さいころからこういう環境に慣れており、ストレスはかかっていない。午後8時までと午後10時までとでは、猫にとって変わりはない」と話す。
規制の動きに対して、猫カフェ協会では猫たちが快適に過ごせるようにと▽年1回のワクチン接種と健康診断を行う、▽営業フロアにスタッフが最低1人常駐する――などの自主規制を始めている。また、福井さんが経営する店舗では「抱っこ禁止」や「中学生以下の入店禁止」などの対応をすることで、猫のストレス軽減に務めてもいるという。
午後8時以降の展示禁止ルールは2012年に定められた。ペットショップなどの犬猫の休息時間が不足しがちなことや、不適切な生活サイクルがもたらすストレスを考慮し、夜間(午後8時~午前8時)の展示を禁止した。
しかし、猫カフェの業界団体が「営業活動の自由を侵害している」「猫は夜行性である」などと申し入れたのを受け、期限付きで午後10時まで認めた経緯がある。
環境省は、猫にストレスがかかると増加するホルモンの糞(ふん)中濃度を調べた。午後8時までに閉店するカフェの猫と、8時以降も営業するカフェの猫とで比較したところ、有意な差は見られなかったという。同省は27日に開かれる中央環境審議会動物愛護部会の報告を受け、恒久的な規制緩和を決める構えだ。
だが、調査を担った加隈(かくま)良枝・帝京科学大学准教授は「新しい手法で、結果の妥当性は今後さらに評価を進める必要がある」と話している。環境省は「確立された研究手法ではないが、新しい科学的知見が出ればその時にまた対応すればいい」(則久〈のりひさ〉雅司・動物愛護管理室長)と言う。
部会では、猫は猫カフェではどうしても休息できず「高齢ならよりストレスを感じる」という意見も出ている。
米国獣医行動学専門医の入交眞巳(いりまじりまみ)・日本獣医生命科学大学講師は「そもそも猫は夜行性ではない」と指摘する。「猫は薄明性、つまり早朝と夕暮れの時間帯に最も活発に動く動物だとわかっている。夜はぐっすり寝ている」と解説する。
猫は、明け方に活動を始める小鳥や、日が沈む頃によく動くネズミなどの小動物を狩り、暮らしてきた動物。入交講師は「餌のある時間帯に活発に活動しているというわけで、猫が薄明性であるという研究成果はうなずけます」という。
環境省の姿勢に対して、ペット法学会副理事長の吉田真澄・弁護士は疑問を抱く。
「法律は科学的合理性だけではなく、社会的状況なども含め総合的な判断に基づいて作られる。本来であれば、猶予期間中に対象業者の側が、規制に対処できるよう準備することが求められる。本則を一度も実施せず反故にする今回の措置は、準備をしないほうが得をするというおかしな話になる。本則と付則に関連して、立法と行政の役割分担の問題も気になる」
(太田匡彦)
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