飼い猫と長女をモデルに童話 椋鳩十「モモちゃんとあかね」

児童文学作家椋(むく)鳩十(1905~87)は、25歳からの約60年間を鹿児島で過ごした。多くの動物物語を手掛けた椋は、自宅でも犬やネコなどを飼い、観察日誌を付け、物語の材料にしていたという。
童話「モモちゃんとあかね」は、椋家で飼われたネコと、椋の長女あかねさんをモデルにした。表紙には五百住乙(いおずみおつ)によって、主人公のモモとあかねが描かれている。
物語のモモは、あかねの生まれた年に、オランダの水兵からもらった「まっ白のペルシャネコ」(実際に飼っていたモモはトラネコだった)。あかねとモモはいつも一緒に牛乳を飲み、おやつを食べ、夜は一緒のふとんで寝た。モモはあかねと一緒に成長し、母となり、やがて老猫となり、別れの時を迎える。
ここで描かれた、少女とネコの友情物語は、ほとんどが実話だという。椋は、娘のあかねさんがお嫁入りする時に「永久の記念になるようなお宝物」の代わりとして、この物語を書き残したのである。
本作から作者の娘に対する深い愛情と、娘とネコの交流を見つめる父親の優しいまなざしを感じることができる。
企画展「猫に恋した作家たち」は、かごしま近代文学館で7月4日まで開催中。
(かごしま近代文学館・吉村弥依子)
40歳。鹿児島大学法文学部卒。2007年から「かごしま近代文学館」学芸員。
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