地域猫 野良猫を排除ではなく繁殖を制限
千葉県千葉市緑区のある住宅。毎朝午前8時、主人がエサをやる時間になると猫が一斉に集まってくる。
その数11匹。いずれも耳の先がカットしてある。不妊去勢手術を施し、地域のルールで管理されている「地域猫」の目印だ。
「猫を排除するのではなく、地域の問題として考える。それが野良猫のトラブルや猫の殺処分を減らすことにつながる」。県動物愛護推進員を務める秋元理美さん(63)は言う。
野良猫を何とかしたい。秋元さんのもとにはそんな依頼が舞い込む。解決策として進めるのが、捕獲した野良猫に不妊去勢手術をして元の場所に返す「TNR」と呼ばれる手法だ。屋外の猫の寿命は5年程度とされ、繁殖制限をして徐々に個体数を減らす。
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秋元さんが地域猫の活動を始めたのは2008年。同区内の新興住宅街の空き家に30匹の猫が住みつき、問題になっていた。そこで自治会内に猫プロジェクトを結成。募金やフリーマーケットで調達した費用で手術をし、エサやりやトイレ掃除の担当を決めた。
「エサを与えるから猫が減らないんだ」。そう訴える人も多かったが、秋元さんは「確実に減らすにはTNRで適正に管理するしかない」と説明。少しずつ住民の理解を得て、現在数匹に減った。
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そんな地域猫活動が県内各地でも広がっている。中でも積極的に進めているのが千葉市だ。11年に「猫と共に暮らすためのガイドライン」を策定。地域猫セミナーを年3回開き、年間300匹の不妊去勢手術を市の負担で行う。
鳴き声や糞尿(ふんにょう)など、市には年間約700件の苦情が寄せられる。市動物保護指導センターの大友慎二所長は「地域猫活動は、街をきれいにするための活動と考えてほしい」と話す。
市内のある公園では野良猫が一時期、約180匹いた。誰かがエサをやり、繁殖するという悪循環。そんな状況を見た「千葉地域ねこ活動の会」代表の岩切由花さん(54)が市にかけ合い、TNRを進めた。エサを与えている人を探し、エサ場や掃除など公園内のルールも決めた。5年前から続け、いまは80匹ほどで落ち着いたという。
「住民たちがよく話し合い、それぞれの地域に合った解決策を主体的に探る必要がある」と岩切さん。年に30カ所以上の現場で地域猫活動をしている。
こうした取り組みが進む一方、県動物愛護管理条例には地域猫は盛り込まれなかった。県は12年に「地域ねこ活動に関するガイドライン」を策定したが、「条例に入れるにはまだ考え方として早い」と県衛生指導課。都市部と郡部では猫に対する意識や問題点の差が大きく、一律にできない事情もある。
飼い主のいない猫をどうすればいいか。秋元さんも、岩切さんも「野良猫は人間の問題でもある。住民、ボランティア、行政の三者が一緒になって、地域猫活動を継続的に行うことが大切」と声をそろえる。(石平道典が担当しました)
(朝日新聞2015年2月16日掲載)
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