健康寿命を保つための5つの約束⑤ ペットロス期
最期のときが来るまで
癒やし癒やされる関係を
長生きしたら犬も猫も人間と同じく
「ピンピンコロリが理想」と言うだろう。
しかし、起こりうる認知症や介護の心構えをしておきたい。
いつかは来るお別れのときまで、
癒やし癒やされハッピーに暮らすために。
(文=福光 恵 中村千晶 イラスト=谷山彩子)
ペットフード協会の調査(2013年)によると犬の寿命は平均14.19歳、猫は15.01歳。最近は犬で17歳、猫は20歳を超す長生きも増えている。
一般の年齢に合わせたフードのほかにも肥満対策や腎臓病用などのサポート食も発達し、必要な栄養素をフードでうまく取れるようになったことも重要な要因だ。
認知症が増えている
反面、長寿になったことで起こる病気も増えている。がんや認知症などだ。特に認知症は最近増えている。犬で12歳くらいから発症することが多いが猫は少ない。
「犬種では日本犬とその雑種に多くみられます。理由は不明ですが、20年ほど前から多くなってきたように思います」(赤坂動物病院の柴内裕子院長)
東京大学附属動物医療センターの武内ゆかり准教授によると、認知症の症例は犬猫ともに夜鳴きが多い。ほかに排泄障害、何度も食事を催促する、ぐるぐる歩き回る、失禁など人間の認知症と変わらない。
「不安を持っていると判断される子には抗不安薬を処方したり、眠くなる薬で夜鳴きを回避することもあります」
だが人間と同じく、認知症には特効薬がない。飼い主が介護で対応することがほとんどだ。前出の柴内氏も話す。
「動物たちにとって、飼い主さんが笑っているときが一番ハッピーなはずなのです。つらくても最期まで見守り、病気のときも明るく、力づけてあげてほしいですね」
ペットロスを乗り切る
生きものは、みないつかは亡くなる。老齢期には飼い主も心の準備が必要だ。
飼い主とペットが共に高齢になる場合もある。近年、独居の高齢者が犬猫を飼ったまま孤独死し、残された犬猫が行き場を失う不幸な事例も問題になっている。
犬猫と暮らす幸せを最後まで享受するために、普段から周囲の人とコミュニケーションを取っておきたい。自分に万が一のことがあった場合を考え、ペットの受け入れ先やお墓の準備などをし、遺言に残しておいたほうがいい。赤坂動物病院では「もしものときのために」と飼い主が自宅の鍵を預けたり、遺言書を預けたりするケースもあるという。
準備をしていても別れは当然悲しいもの。
ペットを亡くしたことで体調不良や摂食障害、不眠やうつ病を発症する「ペットロス症候群」も他人事ではない。
身近にペットを亡くした人がいたらさりげなく話を聞いてあげるなど、周囲も気を配りたい。
「悲しみは当然です。亡くなったときは泣いていい。でも、そのあともずっと泣き続けるのは、動物たちも望まないでしょう」(柴内氏)
次のペットを飼うことで癒やされる人も多い。アニマルセラピーといわれるように、動物との触れ合いが人の心と体に良い影響を与えることは知られている。だが特に中高年の飼い主は「散歩に行けない」「自分が死んだあとの世話を頼めない」などの理由から、新しい犬や猫を迎えることをためらってしまいがちだ。
同院では年齢に応じて「どういう子を迎えたらいいか」をアドバイスし、保護された犬や猫を紹介するなどの手助けもしている。高齢者の場合は子猫や子犬よりも成犬や成猫のほうが飼いやすいこともある。
「高齢者もペットと一緒に最期まで過ごせることが理想です。アメリカのミズーリ州立大学はキャンパス内に、医師と獣医師が連携し、人とペットが最期まで共に過ごせるケアホームを持っています。日本でもそうした状況を目指したいと考えています」(柴内氏)
ペットと暮らす際に「高齢になったら」「病気になったら」を意識することは必要だが、あまり心配しすぎるのも考えものだろう。
「動物には〝明日〟という概念はありません。『明日、散歩に行こうね』と言うと喜んでリードを持ってきたりする。人間よりも動物たちは〝今〟を生きているのです。今、痛みやつらさがなくて、幸せならばそれでいい。私も自分の犬や猫に『お別れのときまで、楽しくね』と言っていますよ」(柴内氏)
動物を幸せにすることは、その命を見守ってあげることだ。
そしてなにより動物も飼い主も「おおらかに、いまを生きる」ということが養生の秘訣かもしれない。
知っておきたいペットのお墓事情
ペットのお墓をどうするか?これは大きな問題だ。周囲をみると「いつもそばにいたい」と、お骨を自宅に置いている人が多い。だが自分が死んだときにお骨が捨てられたりしては困る。ペット専用の霊園に納骨する方法もあるが、「家族同然のペットと一緒のお墓に入りたい」と考える人も多いはずだ。
小豆沢墓苑(東京都板橋区)は「人とペットが共に眠れるお墓」という理念で10年前にスタートしたペット可霊園のパイオニア。現在、全体の半分がペットと人が一緒のお墓だ。管理事務所の関田里美さんは、「全館(全区画)でペットの納骨が可能な霊園は、都内でも唯一だと思います」と話す。
実はペットと一緒に入れるお墓はまだまだ少ない。人間の埋葬と動物の埋葬は法律も別なため、自治体の墓地などでは規則で不可なこともある。宗教上の理由で許可されない寺院もある。
「ペット可でも、決められた一部区画のみだったり、ペットと人のお墓が別々の区画にあるケースもあります」(関田氏)
小豆沢墓苑では墓石にペットの名前を彫ることもでき、先にペットのお骨だけを入れることも可能だ。費用は墓石の種類、場所にもよるが「150万円台から可能」だそう。
最近、人間の埋葬法としてもじわじわと話題になっているのが「樹木葬」だ。霊園・寺院内で墓石の代りに樹木を植え、遺骨を木の下にそのまま埋葬する。環境にもやさしく、費用も数十万からと抑えめ。管理費を払えば永代供養をしてくれるところも多い。こちらも「ペット専用樹木葬」を行う霊園・寺院のほか、一部に飼い主とペットが一緒に埋葬できる区画をもうけている霊園もある。
お墓を含め、エンディングノートにはぜひペットのことを入れておきたい。
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