鼎談 動物病院との付き合い方③ 高い診療費には理由

飼い主にとって、身近であるべき動物病院。
だが、どのように付き合っていけばいいのか、誰も教えてくれない。
飼い主、街の動物病院、大学病院それぞれの立場から、動物病院と飼い主の理想の関係を考える。
構成=太田匡彦 写真=高井正彦


(写真は本文と関係ありません)
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藤田道郎×新妻聖子×山根義久

高い診療費には理由 獣医師からの説明必要

藤田 大学病院などの二次診療施設では検査をし、治療の方向性などを決めたら、もとのかかりつけの動物病院に患者さんを戻します。大学では飼い主さんへのサポートをしきれない面もあります。ですから、動物を真ん中に置いて、飼い主さんと一次診療の先生、二次診療の先生とが三角形のように結ばれて、見守っていくというのがいい関係なのです。

新妻 信頼関係があっても、「今日は高かったな」ということがあるんですよね。何の費用として払ったのかよくわからないことも少なからずあって、飼い主としては診療費はベールに包まれている感があります。

山根 二次診療施設を中心とした専門性の高い診療ができる動物病院の場合、高額な機器を備えていますし、先生自身が技術を習得するために時間もお金も投資しています。ですから、どうしてもそれ以外の動物病院よりは診療費が高くなってしまいます。普通の動物病院同士で比べても、ある程度の検査を自前で行うのに必要な機器を備えて、ワクチンの保管方法にまでこだわるようなところがあります。そういう病院では相対的に高めの診療費がかかるかもしれません。これは確かに飼い主さんからは見えにくい部分です。診療費についても、獣医師の側からきちんと説明をすべきですね。

 もちろん、「悪徳」と言えるような金額をふっかけているところがあれば、飼い主さんに見放されていくだけです。高額な医療機器をそろえていても、高度な獣医療ができない病院もたまにはありますが、そういうところも廃れていくんじゃないでしょうか。

藤田 日本獣医生命科学大学には、人にも使える放射線治療の機械を導入しているのですが、これには設備も含めて約3億円かかっています。でも人のように、一日に何例も処置するわけではありません。そもそも採算は合わないのですが、それでもそれなりの診療費をいただかないと経営は成り立ちません。一方で獣医療は自由診療であるために、たとえば日本獣医師会が統一料金のようなものを提示すると、独占禁止法違反になってしまいます。飼い主さんとしては大事な「家族」を任せるのですから、金額と診療方法の両方についてよく説明を聞き、納得したうえで選択していくことは、当然のことだと思います。

新妻 診療費についても、やはり質問と説明、それによって生じる信頼関係が大事だということですね。飲食店の評価サイトのようなものがあると良さそうですが、食べ物と違って獣医療の場合、それが正しい評価かどうかわかりませんよね。

藤田 私たち獣医師は「この治療をしなさい」と結論だけを伝えるのでなく、「この病気に対してはこういった治療の選択肢があるけれども、それぞれこういうメリットとデメリットがあります。費用もこのくらい変わってきます。あなたはどれを選びますか」というスタンスであるべきだと考えています。僕はがんの治療を数多く手がけているのですが、根治するということはあまりなく、延命治療になることが多い。ですから亡くなるまでに何をどこまでするかというのは、やはり十人十色です。でも、それでいいと思います。

山根 動物看護師の教育や資格の問題など、日本の獣医療についてはまだまだ改善の余地は多いです。でも基本的には、いい方向に向かっていると私は思っています。あとは獣医師も含めた国民全体の、動物福祉についてのレベルを上げたい。それが私の願いです。

新妻 将来、自分がまた犬を飼えるような状況になったら、保護犬を引き取りたいと思っています。そのときには、今日のお話を参考に、動物病院を選んでみようと思います。飼い主としてしっかり獣医師に質問をし、説明を聞き、時には一緒に悩んでいただきながら、次の愛犬とも長く幸せに暮らせるようにしたいです。

「愛犬の状態を知りたいし、理解したい。それが飼い主の責任であるとも思います」
「愛犬の状態を知りたいし、理解したい。それが飼い主の責任であるとも思います」

「これまで飼った猫はすべて元野良猫。今いる子は鼻にがんができて治療中です」
日本獣医生命科学大学付属動物医療センター長 藤田道郎(ふじた・みちお)

1963年大阪府生まれ。日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)大学院博士課程修了。小動物の放射線腫瘍学などが専門。第1種放射線取扱主任者の国家資格も持つ


「17歳で大往生した天馬はわが子のような存在。無償の愛を注いでくれました」
女優・歌手 新妻聖子(にいづま・せいこ)

1980年愛知県生まれ。2002年、「王様のブランチ」(TBS系)でデビュー。03年、5千倍のオーディションを突破し、ミュージカル「レ・ミゼラブル」エポニーヌ役にて初舞台。以降、「ミス・サイゴン」キム役を務めるなど、ミュージカル界屈指の歌姫として活躍。第31回菊田一夫演劇賞、第61回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第7回岩谷時子賞奨励賞を受賞。その豊かな表現力と、力強くかつ美しい歌声は唯一無二と評される。また現在は、JDL IBEXのCMに出演、ANA機内オーディオ「Hot Hits Selection」ナビゲーターも務めている。NHK大河ドラマ「真田丸」にも出演。16年9月28日にはニューシングル「この祈り~The Prayer~」をリリース。10月1日からは、自身初の全国でのコンサートツアーを控えており、好評のうちに終えたばかりのミュージカル「王家の紋章」の再演も発表された。ドラマやバラエティー番組でもその存在感を発揮するなど活動は多岐にわたり、今後の活躍がますます期待される実力派として、注目を集めている。
ヘアメイク/SHIZUE



「40年以上前に開業しました。動物と接する仕事に長く携われていて幸せです」
動物臨床医学研究所理事長 倉吉動物医療センター会長 山根義久(やまね・よしひさ)

1943年鳥取県生まれ。前日本獣医師会会長。動物の循環器系疾患が専門。2013年、地元・倉吉市に動物保護施設「人と動物の未来センターアミティエ」を開設した

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