親子ネコ、いかだ生活10年 養殖フグの見張り番
海上に浮かぶ養殖用いかだの上で暮らすネコの親子が、山口県下松(くだまつ)市にいる。
生まれた時から10年以上も波の上でゆらゆら。飼育するトラフグを鳥から守る「仕事」もしており、地元のアイドル的な存在だ。
トラフグの試験養殖などをする下松市栽培漁業センターから南東へ約400メートル。笠戸島近くの海上に、タテ約120メートル、ヨコ約14メートルのいかだが浮かぶ。船で近づくと、2匹が「ニャー」と鳴いて迎えてくれた。いずれもメスで、推定15歳のチーと同12歳のドラミの親子だ。
20年以上前、センター職員が地元の漁師からチーの両親を譲り受けた。この両親も海上の別のいかだ生まれ。同じ環境がいいだろうと、センターはいかだに小屋を置いて飼育を始めた。
親子は、幅約30センチの板をジャンプしながら駆け回る。食事は、魚の世話に来るセンターの倉本悟技術係長(48)がほぼ毎日、ペットフードや水を与える。時には海中に前脚を伸ばして小魚を捕ることも。ただ、センターが試験養殖しているトラフグには手を出さず、それを狙って飛んでくるカラスは、駆け寄っていって追い払う。
海に落ちても「ネコかき」で泳ぎ、いかだにはい上がる。台風が近づいた時は地上の倉庫に避難させるが、揺れない地上では逆に落ち着かない様子で、よく鳴いたという。
倉本さんは「まるで家族のような存在です」。センターの久山裕司所長(53)は「海上で1人で作業する職員の癒やしになっている」と話す。2匹のこれまでの活躍に、感謝状の贈呈も考えている。(奥正光)
(朝日新聞2013年9月29日掲載)
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