荒川静香&ティラミス

アマチュア時代、そしてプロに転向してからも、銀盤の妖精を奮起させるのは、愛らしい犬たち。

取材・文/sippo編集部  撮影/和田裕也  ヘアメイク/岩本郁子


 

 

家族を支える「犬貯金」

 プロスケーターとして国内外で活躍を続ける、オリンピック金メダリストの荒川静香さん。その荒川さんの活力のもとになっているのが、4頭の犬たちだ。10歳になるシー・ズーのチョコを筆頭に、カニンヘン・ダックスフンドのティラミス(7歳)、アロマ(7歳)、アロマの娘ローザ(5歳)、皆女の子である。

 

「『ペットは癒し』と言われますが、私にとってもまさにそうです。それに、彼らが元気で幸せに暮らせるように自分が頑張らないと、とお尻を叩(たた)いてくれる。自分がうまくいっていないと、犬たちにも影響が出てしまいますから」

 

 そんな荒川さんの思いが具体化されているのが、「犬貯金」というオリジナルの積み立てだ。「自分の気持ちで迎えた犬たちだから、犬に何かあったときに、自分のその時の経済状況にかかわらず、対応してあげられるようにと始めました。ローザが生まれた頃からなので、5年になります。自分の気持ちにも、『犬貯金がある』と、ゆとりが生まれました」

 

 毎月収入口座から専用口座へ振り替え。椎間板(ついかんばん)ヘルニアになったアロマの治療費、心臓に負担がかかり気味で投薬治療を続けるティラミスの薬代、そして、4頭みんなの定期健診にと、犬貯金は荒川さんのペットライフを支える強い味方となっている。

 

多頭飼いと健康、加齢への配慮

 散歩は4頭同時に、ご両親と共に家族総出で出かける。ごはんは、出産してから結石ができやすくなったアロマには療養食といった具合に、個々の体質・年齢に合わせてあげている。また、健康管理に排泄(はいせつ)物のチェックは欠かさないが、「留守中だと、どの子のものかわからなくなって」と荒川さんは苦笑する。

 

「ティラミスは幼い頃から白内障を患っているんです。将来、もし目が見えなくなったとき、そばに“存在を感じられる子”がいるといいのではとアロマを迎えました。ただ、同性同年齢なので、主導権争いをすることも。それでも、どちらかが見えないと、お互いそわそわしているんです」

 

 荒川さんは普段から多頭飼いのストレスにも配慮して、犬たちの間に適度な距離を保つようにしている。アロマが椎間板ヘルニアの入院から戻ったときにも、つい他の子と以前のペースで遊んでしまい安静にできないという状況に陥らないよう、特に注意したそうだ。

 

「みんないい年になってきました。チョコを見ていると頑固で短気になってきて、人間と同じだなぁと感じます(笑い)。ティラミスは定期的にしている歯石除去の、麻酔用の血液検査で、白血球の数に異変があることがわかりました。どんなサインも見落としてはいけないと実感しています。近所にはかかりつけの獣医師さんがいて、アロマがヘルニアになったときにも、夜中でしたが、すぐに連携している専門病院を紹介していただけました」

 

動物とのかかわりは生涯のテーマに

 荒川さんは宮城県育ちだ。子どもの頃から、動物を見たり触れ合ったりするのが好きで、ペットを飼えない住宅事情だった幼少時代は、両親が動物と触れ合える県の動物愛護センターや施設に連れて行ってくれて一緒に遊んだという。

 

 東日本大震災後すぐ、ペットシートなど思い当たるものをすぐ宮城県の動物愛護センターに届けた。その後も震災復興への意識が風化しないようにとスケートを通してチャリティー活動を続けている。

 

「何ができるだろうと考えます。どこに、どのような支援をするのがよいのか。支援がよりよい形で役立つよう、工夫していきたい」

 

 今は多頭飼いの子たちをしっかり育てることが大切だが、将来次の機会が来たら、シェルターから新しい子を迎えたいとも思っている。「ひとつでも救える命があれば。動物とのかかわり方は、生涯考えていきたいテーマです」

 

「海外に遠征すると、特に欧州の人と動物との距離の近さを感じます。公共の乗り物やホテルにも動物同伴で行ける。動物にアレルギーがある方や嫌いな方もいますからバランスのとれた対応が必要ですが、日本でも飼い主のマナーやしつけが向上すれば、もっと間口が広がるのではないでしょうか」

 

 ファッションとしてペットが扱われ、多くの動物が不幸な道をたどっていることにも胸を痛める。

 

「飼うにあたってのガイドラインが整備されればいいですね。ペットと暮らすとはどういうことか、自分のライフスタイルに合う選択はなど、飼う前に情報を得て、不安を解消し、納得してから迎えるように社会が変わっていけばと思います」

 

 犬がいると、家に帰りたくなる。ペットは永遠の子ども、無償の愛を注げる存在だと荒川さんは言う。彼らはいつも変わらない表情で待っていてくれる。だから、向き合う彼女自身も、自分が望む時だけでなく、常にコミュニケーションをとることが大切だと実感している。

 

「少しでも幸せな時間を過ごしてもらえるように頑張ります!」

 

 愛犬4頭に贈りたい言葉をたずねたら、満面の笑顔と共に、この言葉が返ってきた。

 

 

(朝日新聞タブロイド「sippo」No.20(2013年9月発行)掲載)

 


荒川静香(あらかわ・しずか)

1981年、東京都生まれ。1歳から高校卒業まで宮城県の仙台市と利府町で育つ。小学校から本格的にフィギュアスケートを始め、数々の大会で活躍。2004年、世界選手権優勝。06年、トリノ五輪で金メダルを獲得。現在はプロフィギュアスケーターとして、プリンスアイスワールドなど国内外のアイスショーに出演。プリンスホテル所属。

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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