「初めての犬」ピンとの出会い 犬は苦手だった私がなぜ?
いまでこそ「犬ズキ」の一人として取材をしていただくこともあれば、こうして犬絡みの文章を書かせていただいたりすることもあります。また「エンジン01文化戦略会議」の動物愛護委員会やTOKYO ZEROキャンペーンなどに参加させていただいたりもしていますが……実は、犬を初めて飼ったのは2003年春のことです。その「初めての犬」が、ミニチュア・ピンシャーのピン(メス)でした。
そのころ私は、10年以上にもわたる不妊治療の末、なぜか自然妊娠。それまで人工授精や体外授精に数え切れないほどチャレンジしても妊娠できなかったのが、どういうワケか46歳という高齢にもかかわらず自然妊娠できたのです。
でも、結果は流産。処置のために入院していた病院から自宅に戻ると、パートナーが「犬、申し込んだから」と言って、パソコン画面を指さすではないですか。
子供ができなかったから犬を飼う……という話はよく聞きますが、私はそんなに犬が好きではありませんでした。それに、「流産後は妊娠しやすい」との医師の言葉に、まだ出産を諦めてはいなかったのです。
しかも、子どものころから犬は苦手……。「私、犬、ダメだって言ってなかったっけ?」とパートナーに言うと、「え? そうだっけ?」と。私の話は半分くらい聞き流しながら、パソコン画面に見入っています。そういえば数カ月前、この家に引っ越すことを決めたとき、彼は「ペット可」というチラシの文字に喜んでいたような……。「振り込んどいて!」と二十数万円という金額を記したメモを渡されてしまいました。
全く乗り気ではなかった私は、期日までの振り込みを忘れていて、パートナーの第一希望だった犬は、別の飼い主の元に行ってしまいました。諦めきれない彼が次に選んだのがピンでした。渋々ながら振り込みをし、約束の日、羽田空港まで迎えに行きました。ピンは沖縄県にある、ミニピンとタイ・リッジバック・ドッグ専門(当時)のブリーダー「ハウスドッグ」の子だったからです。
「〇時〇分着の〇便」というメモを握りしめ、荷物が降りてくるベルトコンベヤーの前で待っていたパートナーと私。「乗ってなかったよね? 便、間違えたのかな?」というわけで、係の人に尋ねると「犬ですか? 犬は貨物です」と……。慌てて貨物ターミナルまで飛んでいき、カウンターで遅れてしまった事情を話しました。
そのとき、すごく覚えているのは、あちこちから犬の鳴き声がしたことです。その都度、カウンターに走り寄ると、別の方の番号が呼ばれる……というのを10回以上は体験したでしょうか。
係の人によると「地方でドッグショーがあったときなどは、もっと、たくさんいますよ」とのこと。時はペットブームの真っ盛り。犬たちは、飛行機に乗って日本中を移動していたようです。
ペットショップのスタッフさんらしき人たちも、たくさん見かけました。その方々は、手慣れた様子で複数の犬をケージや籠に入れ、ワンボックスカーで貨物ターミナルを後にしていきました。その際、これまた慣れたカンジで、犬の全身をチェックしていたのも目に焼き付いています。
犬は貨物――。
犬は商品――。
これまで思ってもいなかったことですが、そういう扱いを受けている犬をたくさん見た日でもありました。
そしてついに、オレンジ色のふた付きの籠に入ったミニピンが私たちの元にやってきました。1・3キロのミニピン(ブラックタン)の女の子。彼女がなぜ「ピン」という名前になったのかは次回、書かせていただきます。
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