映画「三日月とネコ」 原作者のウオズミアミさん「猫の魅力は数えきれない」

メインキャストは、安達祐実さん、倉科カナさん、渡邊圭祐さん。「第1回anan猫マンガ大賞」大賞受賞作、ウオズミアミさん著「三日月とネコ」の実写映画化。5月24日より全国映画館で上映中(©2024映画「三日月とネコ」政策員会 ©ウオズミアミ/集英社)

公益社団法人アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事の西平衣里です。アニドネでは、映画「三日月とネコ」とコラボし「寄付で猫を救おうキャンペーン」を7月24日まで実施中です。

「三日月とネコ」は猫が主役の映画ではありませんが、猫の存在なしでは成り立たないストーリー。アニドネ的にうれしいのは、登場している猫たちがとにかくナチュラルでかわいい。そして、日本の動物福祉問題にも触れてくださっていること。原作者でもある漫画家のウオズミアミさんにインタビューをし、なぜこれほどまでに猫への愛が深いのか、ウオズミさんにとって「猫とは?」を聞いてみました。

ウオズミアミ
熊本市在住の漫画家。調理師免許を持つ。料理と猫の描写を得意としている。漫画「三日月とネコ」では、作者自身も体験した熊本地震の被災体験をきっかけに集った人の温かさや絆、猫という人々を癒やす存在の大切さを表現。三日月のように満ちていく途中の、迷えるオトナ3人と愛おしいネコたちの物語となっている。

(末尾に写真特集があります)

幼いころからずっと猫と暮らしてきた

――映画化されていかがでしたか?

「主役の安達さんは原作を深く読み込んでくれて、何度も監督やプロデューサーに役どころの相談をしてくださったと聞いています。ですから映像を観た感想は、『原作のイメージ通りの作品になっている』と大変うれしく思いました。また、猫たちがたくさん出てくるのですが、どの子も本当にかわいい!純血種の子も雑種の子も愛らしい演技をしていて、キャストの方も猫への接し方が本当に上手でした。一般的に猫の撮影は大変な認識があるのですが、見事に猫の自然な演技を引き出していて感動しました」

「三日月とネコ」の1巻表紙(Ⓒウオズミアミ/集英社)

――映画の反響はありましたか?

「はい、とてもうれしい反響があったんです。実は久しぶりに幼馴染から連絡がきました。息子さんと映画を楽しんでくれたそうで。発達障がいを持つ息子さんは生きづらさを感じながらも、家族に支えられ懸命に生きています。その息子さんが『好きな遊びをがまんするから、どうしても猫と暮らしたい』と切望してくれたそうなんです。このような反響はとてもうれしく、できるなら保護猫を迎えてくださいと友人に伝えました」

――ウオズミさんの作品には猫がたくさん出てきます。なぜでしょうか?

「私は生まれ育った熊本に現在も住んでいます。自然豊かな場所で生きてきました。生まれたころから当たりまえのように猫がいて、猫のいない生活をほとんどしたことがありません。一番多いときで5匹の猫たちと一緒に暮らしていました。私は自身の経験を作品に投影することが多く、そうなると当然猫は欠かせないキャストになります」

ウオズミさんの愛猫で、愛を一身に受けているクンちゃん。ウオズミさんの仕事が終わるとすぐに、ひざに顔をのせて甘えてくるのだとか。歴代一位のくっつきたがり気質(ウオズミアミさん提供)

「猫の魅力は数えきれないほどありますね。やわらかい体をなでるだけでも気持ちが落ち着きます。そっけないと思われる動物かもしれませんが、私は案外甘えたがりの側面があると思っています。かわいがるだけでなく、飼い主に対して幸せをくれる存在は尊いです。現在は黒猫の『クンちゃん』(女の子)と一緒に暮らしています。甘えん坊でおしゃべりで内弁慶で、雀や鳩も怖がるビビりで可愛い愛猫です」

ウオズミさん宅に来て一週間目、赤ちゃんのころのクンちゃん。国道でへたり込んでいるところを友人が保護。小さな体でたくさん威嚇しながらも、たくさん甘えてくれた(ウオズミアミさん提供)

――劇中内にゴミ箱から猫を救うシーンがあります。実話だとか?

「そうなんです。先代猫の『テンちゃん』は産まれたての幼齢時にゴミ袋で捨てられていました。か細い鳴き声に友人が気づき、レスキューしました。2匹いたので、私が無類の猫好きと知る友人に『ぜひ飼ってほしい』言われ、迎えたのがテンちゃんです。他にも映画の冒頭で猫と暮らす被災者が集まるシーンありますが、これも実話です」

先代猫のテンちゃん。熊本地震の日、避難先から帰ってすぐ。抱っこ嫌いなテンちゃんが、不安からか、初めて自分からひざにのってきたそう(ウオズミアミさん提供)

――日本の動物福祉について、どのようにお考えですか?

「熊本市は犬猫の殺処分ゼロの達成が早い地域でした。しかし現在も動物愛護センターに保護されている犬猫は多数います。こういった問題を皆が知っているかというとそうではなく、一部の愛猫家たちだけが問題視していると感じます」

熊本地震の直後、3歳の若さで先天性の心臓疾患で突然亡くなったテンちゃん。過去の猫たちは天寿をまっとうしていたので、突然元気だった愛猫との別れは身を切るほどつらく、1年ほどはペットロス状態だったそう(ウオズミアミさん提供)

「私自身は、猫は屋内飼育をすること、赤ちゃん猫がゴミ箱に捨てられるようなことがないよう避妊去勢をし、今生限りの命を大切にすることは重要であると考えています。生体販売に関しては反対派ですね。猫を取り巻く状況は複雑ですぐには変えられないかもしれません。そんな中で作家の私ができることは、作品を通じて猫という存在のすばらしさを伝えていくこと。これは今後もずっと続けていきたいと思っています」

――これから作品を観る方へメッセージをぜひ

「気持ちが楽になる作品です。今少しでもつらいことがある人に『自分らしく生きられますように』と、祈るような映画になっていると思います」

安達祐実さんからのメッセージもご紹介

「この映画の撮影期間中に、知人から『事情があって飼えなくなってしまった猫を引き取ってもらえないだろうか』という相談があり、これは運命かもしれないと思い、迎えることに決めました。ひとつの大切な命ですので、覚悟も必要でしたが、我が家でのんびり幸せに過ごしてくれたらという気持ちでした。今ではこんなにも心を許してくれるものなのか!と思うほど無防備な姿でくつろいでくれています。私のことを頼りにしてくれているのを感じるし、小学2年生の息子が寝るときには、必ず添い寝をして寝かしつけをしてくれます(笑)。とても愛おしい存在ですし、家族を癒やしてくれています」

戸馳 灯役を演じた安達祐実さん。撮影初日が猫の「まゆげちゃん」との撮影だったそう。何にも動じないまゆげちゃんの貫禄に圧倒され、助けられたそう(©2024映画「三日月とネコ」政策員会 ©ウオズミアミ/集英社)

「映画撮影時は、出来る限りの配慮をしてはいても、どうしても猫ちゃんにストレスがかかることもあると思うので、とにかくプレッシャーをかけないように心がけました。『私はあなたのことが好きだから安心していいよ』ということを伝えつつ、でもこちらからベタベタはしない、という関係が築けたらなぁと思いながら向き合っていました」

保護猫たちを救える寄付企画

 映画公開の数か月前に「三日月とネコ」の製作委員会の方から「寄付をつけたいのです」というありがたいお話をいただきました。猫が主役の映画ではないけれど、猫という存在が人間にとって必要で、大切にするべきことを優しく伝えている本作品。ぜひ、これから猫との暮らしを考えている人、過去一緒に暮らしていた人、いま愛おしい猫と暮らしている方、すべての猫を愛する方に観ていただきたい作品です。

  映画を観た後には、猫たちを救ってあげたい、という気持ちにもきっとなるはずです。その際は以下の特設サイトを覗いてみてください。すべては愛すべき猫のために。

寄付で猫を救おうキャンペーン

(次回は8月5日公開予定です)

【前の回】「とにかく楽しむこと」 本業と動物保護活動を両立するリーダーたち

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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