家族のみんなから愛されていた優しい愛犬 突然の体調悪化から2週間で旅立った

10歳ごろから外耳炎や皮膚炎でシャンプーを頻回にするようになったいちごくん。洗われるのはあまり好きではなかったけれど、暴れたりしせず穏やかな子だった(美奈さん提供)

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2017年11月、13歳になる直前に亡くなったキャバリアのいちごくん(享年12歳)。飼い主の美奈さんに、いちごくんの病気や亡くなった経緯、ペットロス、現在のお気持ちを伺いしました。

(末尾に写真特集があります)

キャバリア独特の穏やかで優しい男の子

――亡くなったいちごくんはどんな性格の子でしたか?

 とても穏やかで、ほえたのを聞いたことがないくらい本当にいい子でした。ほかのわんちゃんにケンカを売られても、やり返したりしない子でしたね。

――いちごくんを飼うことになったきっかけを教えてください。

 いちごは私が初めて飼った子でした。どうしても犬を飼いたくて、仕事を始めて1年後に迎えました。その頃は独身で実家に住んでいましたので、飼い始めてから3年間は私と私の両親と一緒に暮らしていました。

 結婚することになって、いちごが4歳の時に私と一緒に家を出たのですが、父がいちごを溺愛(できあい)していて、毎日、私の出勤前にいちごを迎えにきて、実家で面倒を見てくれていました。仕事が終わると私が実家にいちごを迎えにいき、自宅では夫と3人で過ごすような生活だったので、いちごがひとりになる時間はほとんどありませんでした。

――いちごくんはさみしがり屋さんだったのですか?

 いいえ、けっこうひとりの時間が好きだった子でした。でも、家族がいちごのことをひとりにしたくないという感じで、私の両親にも夫にも大切に育てられて過ごしていました。

家族みんなに可愛がられ、美奈さんの祖母に手編みのセーターを作ってもらい着ていた(美奈さん提供)

7歳で脊柱管狭窄症を発症、心臓に雑音

――いちごくんは12歳で亡くなるまでは元気に過ごしていましたか?

 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)を7歳くらいで発症しました。歩き方が少しおかしいなと気づき、検査をして病気がわかりました。加齢に伴い、ついかんばんの変性により神経障害がおこる病気です。獣医からは手術を勧められたものの、踏ん切りがつがず、お灸や漢方などをして様子を見ていたのですが、少し経って心臓に雑音も聞こえ始めたので薬を服用するようになりました。

――それが亡くなった原因でしょうか?

 亡くなった原因は急性腎不全でした。定期的に血液検査などもしっかりしていて、リパーゼの値がずっと高かったのと、肝臓のGPT、ALT、GOTが高めだったので肝臓の疾患はうたぐっていたのですが……。

 13歳の誕生日の2週間前に嘔吐(おうと)が始まってガタガタと体調が崩れて、あっという間に逝ってしまいました……。嘔吐以外にも、尿が出なくなり、2日間通院もしていたのですが点滴が入らない状態でした。獣医師に「体の中に水分がたまって点滴のルートが取れないから、自宅で皮下注射をして様子を見たほうがいい」と言われました。

――自宅ではどのような状態でしたか?

 食事ができなくなり、強制給餌(きゅうじ)しても全部吐いて、一晩中唾液を出し続け、水分は皮下注射でどうにか入れていたのですが、栄養は取れませんでした。最期は自宅で夫と私の前で亡くなりました。夫婦が休みの日を選んで、旅立ってくれた優しい子でした。

――体調が急変するまで、兆候は見られなかったのでしょうか?

 亡くなる前、秋くらいからでしょうか、そんなに人を追いかけるような子ではなかったけれど、一緒に出かけたいというしぐさを見せるようになって、「歳をとって人恋しいのかな」などと、みんなで話していました。

 あと、もともと食欲にムラがある子だったので、いつもの好き嫌いかな?と、食べなくなっても気に留めていなかったのですが、今考えると、そのころからきっと具合が悪かったんだろうなと思います。

亡くなる半年ほど前のいちごくん。薬の服用や小さなトラブルはあったものの、穏やかな日々を過ごしていた(美奈さん提供)

ひどいペットロス、当時のことは覚えていない

――ペットロスにはなりましたか?

 亡くなった直後はひどいペットロスで、不眠や情緒不安定になり、当時の記憶があまりありません。何年も経ってからやっとペットロスはなくなりましたけれど、今も遺骨を自宅に置き、毎日お線香とご飯をあげています。忘れないですね。もうここにはいないのに頼っちゃったりして……。

――「ペットの死に向き合う」ということは、美奈さんにとってどういうことでしょうか?

 亡くなった子に感謝することだと思います。一緒に同じ時間を過ごしてくれて、いたらない飼い主だったのに不満を言わずにそばにいてくれたこと、ただその存在自体に感謝しています。それが今、私にとってのペットの死に向き合うということです。

5歳の頃のいちごくんと飼い主の美奈さん。穏やかでほえることもなかったので、いちごくんとどこにでも一緒にお出かけをしていたそう(美奈さん提供)

<取材を終えて>
 小さいころから亡くなるまで、家族みんなに愛されて、最期は飼い主の美奈さんに見守れて旅立ったいちごくん。取材中、美奈さんがいちごくんのことを語る一言一言に、今も変わらぬいちごくんへの愛情を感じることができました。

【前の回】3歳の愛猫が原因不明の死 「その子にとってのベスト」を考えてあげることが大切

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

sippoのおすすめ企画

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!

この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。