ハイパーなポメラニアンとどう向き合う? 他の犬と比べず、周りの支えも励みになる
寝ない、止まらない、落ち着かない、かみつく……。お迎えしたポメラニアンは問題行動フルコースのスーパーハイパーな子犬だった。地方都市に暮らす家族は、迷いながらもUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のもとへ、子犬を連れていくことを決意する。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!
「先代犬やほかの犬と比べていては意味がない。目の前のその子をしっかりと見てあげて!」
ポメラニアンじゃない!?
東北の街から遠路はるばる中目黒までやってきたポメラニアンのアーニャちゃんとお母さん。電話カウンセリングの際、送られてきた動画を見ていた高橋店長だったが、「思っていた以上に強いな、と。体は子犬なのにガッチリむちむちで、メンタルも激強なのが一目でわかりました」と振り返る。そして店長に告げられた言葉にお母さんはびっくり仰天!
「アーニャちゃんはポメラニアンじゃない。柴犬だと思って育ててください」
UGの群れに入れられたアーニャちゃんは一切ひるむことなく、強い先輩犬2匹に向かっていき、2対1でも決して負けなかった。それでもひとしきり満足すると、静かな棚の下に移動してまったりとお昼寝。「ホントに子犬?とみまごうほどの貫禄もあって」と笑う店長がつけたニックネームは「小熊のアーニャ」。「見た目だけでなく、まさにヤンチャ盛りの小熊のようでした」
首周りを触られるのをひどく嫌がり、お散歩も好き勝手。UG名物「店長の脱力」(力を抜かせ寝かせること)をしようとしたが、「『なんでアタチがこんなことしなきゃいけないの!?』とブチ切れ、最初はまるで寝てくれませんでした」と店長も苦笑い。
それでも群れの中でとことん遊び、お散歩も仲間と一緒に練習することで、アーニャちゃんはどんどん変わっていった。そしてお泊まり4日目、おとなしくブラッシングされる動画にお母さんは驚く。「私たち家族には暴れてかみついて絶対にやらせてくれなかった。なぜ? どうして?と」。その疑問を投げかけると、店長からは「関係性ができているから」という答えが返ってきたという。その意図を店長はこう説明する。
「触られるのが苦手な子は、3日目ぐらいまでは僕らでも簡単には触れません。でも、僕たちがその子を信じ、犬も僕らを信頼してくれるようになると、おとなしく触らせてくれるようになるのです」
お母さんはその言葉にいろんな思いが込み上げてきて、号泣。涙とともに「目が覚めました」と振り返る。
「娘がまだ赤ちゃんのころ、夕方になると突然泣き出したことがありました。なぜ泣くのかわからず、昼間公園に行って疲れるまで遊ばせたり、グズったら外に連れ出したりしたことを思い出して……。アーニャにもそうしてあげるべきだったし、もっとアーニャがどういう子なのかを理解してあげなければいけないんだと気付かされました」
店長はこう話す。
「お母さんは先代の犬たちとアーニャちゃんを無意識のうちに比べていた。でも、前の子と違うと悩んだところで、アーニャちゃんはアーニャちゃん。変わらないのです。まずは目の前にいる犬が何を考えているのか、なぜかむのか、なぜ暴れるのかを考える。そして、やるべきことをやる。リーダーになるとかそんなことはどうだっていい。決して否定せず、信じてあげる。娘さんを手探りながら一生懸命育てていたときのことを思い出したというお母さんに、そう!それ! そういうことです! と、うれしくて気づいたら僕も一緒に泣いていました(笑)」
支え合える仲間の存在が大切
通常社会化お泊まりは1週間だが、遠方ということもありアーニャちゃんは2週間に延長した。1週間すると落ち着く時間が増え、最初はやる気のなかったごはん前のフセ、マテもバッチリ! そうして迎えた最終日。再び東京へやってきたお母さんは「まだ不安の方が大きかった」と正直な気持ちを吐露する。
しかし、再会したアーニャちゃんは別犬のようだった。「お散歩の練習をすると、引っ張ることなく、アーニャがいるのを忘れるぐらい普通に歩けて感激しました」とお母さん。店長は「アーニャちゃんはとにかく体力がハンパない。でも、疲れたら落ち着く。駆け引きは必要ありません。とにかくお散歩を頑張りましょう!」とアドバイスした。
家に帰ると、かんだり暴走したりはなくなっていた。お母さんは朝晩1時間ずつ、アーニャちゃんが満足するまでお散歩に出かけた。
順調のように見えたが、月齢7カ月を迎えたころ再び荒れ始める。「ドッグランで木の根っこをかじっていたので注意したら、それをきっかけに散歩中に私の服のすそにかみつくようになってしまったのです」。店長は「アーニャちゃんの強さを考えると、一筋縄ではいかないことは想定内。可能ならば、アフターケアに来ていただくことをお願いしました」と話す。
お母さんは店長にLINEで相談しつつ、その後2回ほど東京へ。「3回目にして店長から『ようやく体力の底が見えてきました』と言ってもらえたときはホッとしたし、連れて行ってよかったと思いました」
お母さんを支えたのは、店長やUGのスタッフに加え、「仲間」の存在があった。最初のお泊まりのあとお母さんなりに頑張っていたが、悩んだり孤独を感じたりすることも。そんなとき思い出したのが、お泊まりの同期で一緒に遊んだマルプーのむぎちゃんだった。SNSを通じむぎちゃんのお母さんとやり取りするように。「ハイパー女子の親同士、すごく共感でき悩みを共有できました」とお母さん。同じように悩んで、同じように頑張っている仲間がいる――。そう思えることがお母さんの孤独を癒やしたのだ。
今もアーニャちゃんは体力バリバリで元気いっぱい! 「警戒吠えや、興奮してほえることはありますが、私が注意すればやめます。コントロールできるようになったことで、うろたえることはなくなりました」とお母さん。
むぎちゃん一家とは家族ぐるみで付き合うようになり、昨年は一緒に旅行へ。先日はむぎちゃんの家にお泊まりし、神奈川で開催されたUGのオフ会にも参加した。「アーニャがうちの子にならなかったら、こんなふうに地元から遠出することもなかった。仲間ができて世界が広がり、私たち家族の人生は本当に豊かになりました」。お母さんはそう言って最高の笑顔を見せた。
犬育てで悩む誰しもがUGへ、店長のもとに来られるわけではない。距離や時間、経済的な事情もある。それでも店長は「できるだけ多くの悩んでいる家族を、理解されないでいる犬を救いたい」と力を込める。電話カウンセリングに対応しているのはその思いからだ。「犬を見ることは当然ですが、飼い主さんの話を聞くことはとても大事。そこから関係性や、犬の問題とされる行動の理由が見えてくるから」
先日開催されたオフ会には40人近い家族が参加。UGにたどり着くまでの苦悩、愛犬とともに頑張った日々、今の楽しい毎日を笑顔で語り合う姿に、店長は「感動して泣いちゃいました」。激アツ店長は涙もろいのだ。
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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