段ボールで捨てられていた雑種犬「Danbow」 いまや歩く保護活動啓発犬に!
個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。第14回は、段ボールに入れて捨てられていたという「Danbow(ダンボウ)」。捨てられていた「段ボール」と、虹の架け橋を意味する「Rainbow」をかけたという名前の通り、いまでは自然と動物保護活動についての啓発を担い、また人と犬をつなぐ架け橋となっています。
【基礎データ】牧羊犬×猟犬を思わせる中型雑種犬
- DATA
- 《名前》Danbow ダンボウ
《年齢/性別》5歳/オス
《役割》歩く保護活動啓発犬。撮影のモデルやイベントのナビゲーターもしています
《サイズ》体高44cm・体⻑48cm・体重9.5kg
《チャームポイント》垂れた耳、複雑な柄、ふかふかのシッポなどの外見も、面倒くさくも面白い性格も、全部!
《特性》
人慣れ度★★★
犬好き度★★★
食いしん坊度★★★
運動量★★★
トレーニングしやすさ★★☆
ケアのしやすさ★★☆ - (写真:犬丸美絵さん提供)
河川敷に捨てられていた子犬たち
きょうだい4匹で段ボールに入れられて、多摩川の河川敷に捨てられていたというDanbow。通りすがりの人が見つけて保護し、他の3匹は新しい飼い主を見つけてくれたものの、Danbowだけ飼い主が見つからず、動物愛護センターに持ち込まれました。
動物愛護センターから連絡を受けた動物保護団体がDanbowを引き出し、譲渡会に連れてきていたところを、現飼い主の犬丸美絵さんの友人が発見。写真を撮ってSNSに上げたのを犬丸さんが見たことから、縁が始まりました。
「子どものころからいろんな犬と暮らしてきたんですが、7年前に先代のシェットランド・シープドッグの『ゴマシオーネ』が亡くなって。動物愛護センターで撮影のボランティアをしつつ、ゴマが何らかの形で帰ってくるのを2年半ぐらい待っていたんです。そしたら、ゴマにそっくりの目をした子犬の写真を、友人がSNSに上げていて、見た瞬間射抜かれてしまいました」
と、犬や家族を撮影する写真家として活動するほか、犬と飼い主向けのネイチャーツアーを企画したり、動物に関する啓発活動を行ったりと、犬にかかわるさまざまな活動を続けている犬丸さん。
とはいえ、当時の犬丸さんはひとり暮らしで、フルタイムで仕事をしており、そのころ多くの動物保護団体が一般的に掲げていた飼い主の条件には、到底当てはまりませんでした。しかし、Danbowを保護した団体の代表が友人だったこともあって、何はともあれ会いに行くために、まずは「写真を撮らせてください」と頼み、初対面したのだそう。
「生後2カ月ぐらいのDanbowに会って、迎えたいと思ったものの、自分がDanbowと一緒に暮らせるのかどうか2〜3週間ぐらい悩みました。さんざん悩んだ末に、保護団体の代表に迎えたいことを伝えました。じつは、一時預かりボランティアさんも知り合いだったのですが、Danbowを見て『この子、犬丸さんのところに行くような気がする』と感じたんだそうです」
犬丸さんが付けた「Danbow」という名前は、捨てられていた「段ボール」と、虹の架け橋を意味する「Rainbow」をかけたもの。散歩中に「カッコいいですね」と声をかけられて、Danbowの名前を伝えると自然と保護した経緯の話になることから、「歩く啓発犬です」と犬丸さんは笑います。
ひどい分離不安が意外な方法で解決
生後1~2カ月で河川敷に捨てられ、動物愛護センターで1週間過ごし、その後一時預かりボランティア宅で2カ月ほど暮らして、生後4カ月ほどで犬丸さんの家に来たDanbow。最初から人の顔色をうかがう「いい子」でしたが、唯一困ったのが、家に迎えて来て間もなく始まった分離不安でした。
「家にいると常に私の後をついて回るし、私が外出中はずっとすごい声で鳴いていました。集合住宅ではないし近所の理解があったので、その点は問題なかったんですが、私が一緒でないとすごく不安そうなのがかわいそうで……。クレートトレーニングをしたり、短時間の留守番から練習したり、寝るときはハウスに入れて距離を取ったりと、分離不安の対策と言われることは一通り試したんですが、全然直らなくて」
ところが、2カ月ほど経ったあるとき、ハウスに入れるのをやめて一緒に寝てみたところ、分離不安がぴたりと直ったのだそう。「『また捨てられるかも』という不安が治まったのかもしれませんね」と犬丸さん。信頼関係ができたいまでは、長めの留守番も平気になりました。
お互い自由で対等なパートナー
犬丸さんは、先代犬のゴマにはガチガチのトレーニングを入れて、飼い主しか見えない犬に育ててしまったことへの後悔から、Danbowには誰といても大丈夫な犬に育ってほしいと考えていました。そこで、Danbowが生後4カ月のころから、犬丸さんが写真家として主宰する、犬と一緒に旅を楽しむフォトレッスンイベント「Photrip」や、愛犬家向けネイチャーツアーなど、撮影以外の仕事にはDanbowも連れていくようにしていました。
すると、最初は犬丸さんに媚びるような態度だったDanbowが、分離不安が解消されたころから徐々に変化。あちこちに出かけて経験値を積み、いろいろな犬や人と遊び、キャパシティの大きい犬へと成長していきました。いまや仕事のパートナーにもなったDanbowの性格を、犬丸さんは「天真爛漫で頑固な自由人」と表現します。
「Danbowも私もお互い自由で、それぞれ忙しい。Danbowが朝私を起こすことはないし、ごはんが遅くなっても文句を言うようなことはありません。私の姿を目の端で追ってはいるし、ついて回るけれど、呼んでも来たくないときは捕まらない(笑)。でも、私が絶対に愛しているという信頼はあるみたいで。Danbowは私の犬というよりも、もっと対等なパートナーという感じがしますね」
犬と人間は違う動物だけれど、対等な存在。そんなほどよい距離感でのびのびと育てられたことで、Danbowらしさが開花したのかもしれません。「人間」と「犬」、そして「自然」をさりげなくつなぐ架け橋として、Danbowは活躍しています。
(次回は2月23日公開予定です)
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