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隠れ場所の安全性や避難先でのトイレ問題、ペットの疎開先 猫と暮らす家族の防災

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、「猫の防災」について、入交先生が答えます。

災害にどう備えるか

 この度の令和6年能登半島地震にて被災された方々には心からお見舞い申し上げるとともに、復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈りいたします。今回の地震に関係して亡くなられた方々、海上保安庁の輸送機の事故でお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。

 今年のお正月は本当に心が痛く、いまだに心軽やかに何か新しいことをはじめてみる、という気持ちになれないのですが、改めて災害にどう備えるかを考えることの大切さを痛感しました。

 東日本大震災の時、私は東北にいたのに、あの時の緊張した記憶が薄まってしまっています。今回は猫を家族に持つ皆様と一緒に、猫と一緒に大きな災害に備えて何ができるかをこの場を借りて考えてみたいと思います。

1.キャリーの準備

 いざ、というときのためにキャリー(猫を入れて動物病院などに連れていくかごや猫を入れる入れ物のこと)は普段から準備しておきます。キャリーはしまい込まずに置いておき、おやつを中であげるなどして、猫が抵抗なく中に入れるようにしておきます。また、おいしいおやつを中で食べている間、キャリーのふたを閉めてみて、持ち上げ、おやつを与えてみてください。キャリーの中ではよいことばっかり起こるようにすることで、何かあった時にキャリーの中に入れようとした際、猫が抵抗せずに入ってくれるようにしておきます。

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2.隠れ場所の確認

 何か怖いことがあった時(お客様がいらした、掃除機をかけた、など)あなたの猫ちゃんはどこに隠れますか?何かあった時に猫がそばにいる状況とは限りません。怖いことがあった時に猫がいつも隠れる場所を確認しておくと、万が一の時にどこを探したらいいのか見当がつきます。また、もしいつも隠れている場所が危険な状態にあると判断されたら、安全な場所に移動することを考えます。(例えば、猫の隠れ場所が本棚の前に置いてある猫ちぐらだった場合、隠れ場所を変える必要があります)

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3.車の中で休んだりトイレに行ったりできるか?

 自家用車での避難や車中での避難生活、避難所や集会所など、自宅以外の場所にしばらく身を寄せることが想定される場合、車の中、あるいは避難している場所で猫も排泄(はいせつ)する必要が出てきます。そんな状況への備えとして有用なのが、猫用のケージです。大きなケージしかない場合、簡易ねこケージ(ポータブルケージ)を備えておくのがおすすめです。簡易ケージでもその中にトイレと寝床を入れておけるので、災害時に猫を長時間入れておくことができます。普段から、ポータブルケージを持って自動車で猫と一緒のお出かけをしてみて、車内や出先でも排泄できるかどうか、練習をしてもよいかと思います。

4.事前にハザードマップなどをチェック

 ご自身が住む地域のハザードマップを見ます。どんな危険がありそうですか?例えば私の住む地域は、洪水と火事と高いブロック塀の倒壊が問題になりそうです。それらが起こるかもしれない場合、どう避難するか、どこに避難するか、家族と連絡する方法、ペットたちはどうするか、今からご家族で話し合っておくとよいかもしれません。頭の中での避難シミュレーションを行うだけでもいろいろ課題が見えてきます。

5.ペットの疎開先を考えておく

 もしご自身が被災された場合、ペットも一緒に避難することが多いかと思います。本当はペットも一緒に復興まで付き合ってもらいたいところですが、避難所や車にペットをずっと置いておけないこともあるかもしれません。また、ペットがいることで復興のための活動ができないかもしれません。身の回りのことをしないといけない間、ペットを一時的に疎開させた方がよい場合もあります。そんな状況がくるかもしれない可能性も考え、ペットの疎開先、一時的に預かってくれるご友人やご親戚と相談しておくといいでしょう。ご自身の住んでいる地域とは違う場所に住むご友人やご親戚とお話をしておいてもいいですね。

 日本はどこにいても、いつ災害にあうかわからない国です。このような記事を作成しながら、自分も準備はできていません。また家族みんなで話し合おうと思います。

(次回は3月10日公開予定です)

(この連載の他の記事を読む)

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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