行政に迅速かつ着実に悪質業者に対する措置を遂行させるため、「自治体職員の“動物Gメン”化」を実現させよう(getty images)
行政に迅速かつ着実に悪質業者に対する措置を遂行させるため、「自治体職員の“動物Gメン”化」を実現させよう(getty images)

動物愛護法の次期改正でJAVAが求める 自治体職員の“動物Gメン”化

 2020年6月に改正「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護法)が施行されて3年。施行後5年を目途として見直しを行うとなっていますが、超党派の国会議員で構成されている「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」(以下、動物愛護議連)では、すでに次の改正に向けての検討が始まりました。JAVAは、前回改正で主要な役割を担っていたこの議連の動物愛護法改正プロジェクトチームのアドバイザリーボードの一員として、検討・議論に参加しています。

改正要望を動物愛護議連に提出

 JAVAは前回同様、認定NPO法人アニマルライツセンター、PEACEと連携してロビー活動など改正のための取組みを行っていくことにしています。JAVAはこの2団体とともに前回改正で実現できず、課題として残っている次のようなことを重点的に求めた改正要望を動物愛護議連に提出しました。

  • 動物愛護法から動物福祉法への転換
  • 動物取扱業と愛護動物の対象動物種を「すべての脊椎動物」に拡大(両生類と魚類の追加)
  • 繁殖制限の対象種を「犬猫」から「すべての脊椎動物」に拡大
  • 動物取扱業の対象業種を「脊椎動物を扱うすべての業」に拡大
  • 産業動物に関する条項を新設
  • 動物実験代替法の利用を義務化、3Rの徹底
  • 動物の輸送に関する条項を新設
  • 動物を殺す場合の方法を改善(「速やかに、かつ苦痛のない方法によって」と「意識を失わせた上で」を追加)
  • [罰則の明確化]衰弱や死亡に至ることを前提とせず、暴力行為や酷使等そのものを禁止する
  • [罰則の明確化]罰則の条文に、15の虐待の定義を明記し、虐待の判断をしやすくする
  • 虐待された動物の保護(動物の緊急一時保護/虐待者の再飼育の禁止)
  • [第一種動物取扱業の規制強化]移動展示・移動販売の禁止
  • [第一種動物取扱業の規制強化]自治体職員の“動物Gメン”化
  • すべての動物の所有者または占有者の責務・禁止事項の強化

※詳細はJAVAのウェブサイトをご覧ください。

「自治体職員の“動物Gメン”化」とは?

 上記の要望の中で、「自治体職員の“動物Gメン”化」について、「なんだろう?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。現在も、行政は問題ある動物取扱業者に対して指導などを行っていますが、指導を繰り返すことに時間を費やし、改善に至らないことが多いという現状があります。

体の向きも変えられないほど狭いケースに入れられて売られるカメ。悪質な動物販売業者が後を絶たない

 そのため、次の1~7の改正を行うことによって、動物虐待に対して、行政が迅速かつ着実に的確に手続を遂行する制度にすることを、私たち3団体が「自治体職員の“動物Gメン”化」と名付けました。

1. 虐待の通報を受けた後、できるだけ速やかに、遅くとも1週間以内の事前通知なしでの立入検査を義務付ける。(第24条の義務化)

2. 環境省の「動物虐待等に関する対応ガイドライン」を規則等に格上げし、チェックシート形式で点検し、1つでも該当すれば虐待と認定する。

3. 行政が第一種動物取扱業者及び第一種動物取扱業者だった者の違反を発見したときは、勧告しなければならないとし、また、その勧告に係る措置をとるべきことを命じなくてはならないとし、義務化する。(第23条・第24条の2)
 ① 勧告、命令をする期限を3か月以内から1か月以内に改正する
 ② すべての問題点の改善までが1か月。すべてが改善されていなければ次の措置命令、行政処分、または動物虐待での刑事告発等に進まなくてはならない

4. 命令に違反した場合などの登録取消し等を「できる」から義務化にし、即時登録取消し、もしくは3か月以内に営業停止を命じる。(第19条の義務化)

5. 勧告、命令、登録取消し、営業停止の行政処分時に業者名の公表を義務化する。(現行法では勧告違反者の公表はできる。(第23条第3項))

6. 基準違反等に対し、期限内の勧告・命令を怠った場合、環境省による自治体への指示をできるようにする。

7. 動物愛護管理担当職員の要件を強化する。(第37条第3項)
 ① 環境省が動物愛護管理担当職員研修を毎年実施、その受講と試験合格を必須とする
 ② 研修では、複数の自治体における虐待の通報と自治体の対応例を挙げて、虐待の判断や適切対応のトレーニングを行う
 ③ 自治体同士で議論して問題点をあぶりだし、改善・向上につなげる

「許可制」「免許制」ではなく、“動物Gメン”化で悪質業者を減らす

 悪質な動物販売業者や動物園などの動物取扱業が後を絶たず、「もっと厳しい規制にするため、許可制や免許制に」といった声もあります。しかし、JAVAは「許可制」「免許制」には反対です。

 動物愛護法に基づき、動物取扱業者に対して改善のための措置を講じるのは自治体です。ところが、その肝心の自治体が虐待の通報を受けても動きが鈍かったり、虐待現場をみても「これは虐待ではない」と主張したりして、放置や適切な対応をとらないケースが発生しています。たとえ改善が必要な状態と判断しても、業者に対して指導を繰り返すだけで改善に至らないケースが多いのです。本来は指導ではなく、勧告及びその措置命令をすべきなのです。

非常に劣悪な環境で飼育されている動物園のウサギ。このような悪質業者をなくさなければならない

 このような状況で「許可制」や「免許制」にしても単に制度名の変更になってしまい、悪質な業者にも許可や免許が与えられてしまうことが容易に想像できます。実際、届出制から今の登録制になった際もそうでした。つまり、改正によって、より規制が厳しくなっても、それを行使する自治体が適切な対応を取れなければ、動物たちの救済につながらないのです。そのようなことから、着実に悪質な業者を減らしていくため、上記の「自治体職員の“動物Gメン”化」のような改正をして、実効性のある制度にすることが最適と考えます。

 一般の飼い主の不適切飼養についても、第25条にある行政による飼い主への指導及び助言を削除して、勧告及びその勧告に係る措置命令を義務化し、「自治体職員の“動物Gメン”化」をここでも適用させることも求めています。

(次回は3月11日公開予定です)

【前の回】いまだ1700万枚を超える世界のミンク毛皮生産量 毛皮反対の世論は高まっている

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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