いまだ1700万枚を超える世界のミンク毛皮生産量 毛皮反対の世論は高まっている

毛皮農場のミンク。毛皮を動物たちから奪うのはもう終わりにしなければならない

 JAVAは、毛皮に反対する国際連盟「Fur Free Alliance」(FFA)の一員として、世界35カ国の50の動物保護団体と連携し、毛皮の廃止に向け活動を続けています。

 毛皮(リアルファー)を使った商品が店頭に並ぶこの季節、今一度、毛皮の問題についてぜひ皆さんにお考えいただけたらと思い、今回は、このFFAの活動やFFAが発表している毛皮産業の現状についてお伝えします。

毛皮産業の悲惨な実態

 毛皮をとるために、ミンク、ウサギ、タヌキ、キツネ、チンチラといった動物たちが、「毛皮農場」の狭く汚い檻に閉じ込められ飼育されます。動物たちはストレスから精神に異常をきたし、自傷行為や共食いといったことも起こります。最期は、二酸化炭素で窒息させる、口と肛門から電気を流して感電させるなど、毛皮を傷つけないようにするために残酷な方法で殺され、短い生涯を閉じます。まだ意識がある状態で毛皮をはがされることもあるのです。

狭く汚い檻に閉じ込められている毛皮農場のウサギたち

 また、ボブキャット、コヨーテ、キツネといった野生動物も、毛皮をとるために罠にかけられ、長時間放置されて衰弱して死に至ったり、罠を確認に来たハンターによって踏み殺されたり、殴り殺されます。

毛皮反対の世論は高まってきている

 毛皮の悲惨な現状を知った消費者が声をあげ、日本を含め、各国で毛皮反対の世論は高まってきています。FFAとベルギーの動物保護団体「Eurogroup for Animals」が共同で行ったEU全域での毛皮農場と毛皮製品の流通の禁止を欧州委員会に求める署名運動では、わずか10カ月で150万人を超えるEU市民の賛同が集まったほどです。

 こういった反対世論の高まりは、アパレル業界も動かしています。FFAは、毛皮を使わないことを宣誓したブランドを承認する「FUR FREE(毛皮を使わない)ブランドプログラム」を世界中で展開しています。JAVAは日本の窓口となっていますが、ZARAやH&Mといったカジュアルブランドから、グッチ、プラダ、アルマーニ、バーバリーなどの高級ブランドまで、すでに1600近いブランドが毛皮を使わないことを宣誓しました。

FFAの「FUR FREE(毛皮を使わない)ブランド」承認ロゴマーク

地図で見る「毛皮と毛皮農場の法規制」

 国ごとの毛皮農場禁止などの動きも進んできています。下記はFFAが作成した世界各国の毛皮と毛皮農場の法規制をまとめた地図です。

世界の国と地域における毛皮に関する法規制(2023年9月時点 FFA作成/JAVA訳)

 法律で最初に毛皮農場を禁止した国は英国(2003年)で、それ以降20年間で、ヨーロッパの25カ国以上が禁止をしています(部分的禁止も含む)。

 国内の生態系を保護する目的で毛皮農場を禁止した国もあり、日本もその一つです。2006年、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の規制により、新しくミンク農場を開設することができなくなりました。そして2016年に最後のミンク農場が閉鎖され、国内すべての毛皮農場はなくなりました。

 また、イスラエルや米国の10以上の州や都市では毛皮製品の販売を禁止しています。

※2023年9月時点の情報です

毛皮生産量は減少していても、大量に流通している現状

 毛皮反対の世論の影響は、生産量にも表れています。FFAが発表した新しいデータによると、世界のミンクの毛皮生産量は、2020年の3300万枚から、2022年には1700万枚へと減少していることがわかります。EUでは、1800万枚(2020年)から750万枚(2022年)に、世界最大の毛皮生産国である中国でも、930万枚(2020年)から580万枚(2022年)に減少しました。

 キツネの毛皮生産量も、EUでは、120万枚(2020年)から70万枚(2022年)に、中国では、1200万枚(2020年)から800万枚(2022年)と減少しています。

 とはいえ、ミンクの1700万枚など依然として非常に多くの生産が続いていて、日本で需要があるため、それが日本に輸入されています。日本で生産していなくても、たくさんの動物たちが毛皮のために殺され続けている現状は変わらないのです。

世界のミンク毛皮生産量は2年で半減しているが、膨大な生産が続いていることに変わりない

毛皮をゼロにしなければ、動物たちの犠牲は続く

 日本から毛皮農場がなくなっても、毎年のように秋になると毛皮(リアルファー)を使った商品が店頭に並ぶ現状も変わりません。

 最近は、毛皮を洋服のフードの縁やサンダルの甲などに部分的に使っていることが多いです。そのため、毛皮とは気づかずに買ってしまう人もいるでしょう。

 需要がある限り、毛皮の生産は続きます。この世界から毛皮のために犠牲になる動物がいなくなるようにするには需要をなくさなければならず、それには私たち消費者誰もが「毛皮を買わない」ことが重要です。

 そして、日本でもさらに毛皮反対の世論を高めていく必要があります。私たち消費者の力で、日本でも毛皮製品の販売禁止を実現させましょう!

「毛皮をなくすために、あなたにできること」(JAVAのウェブサイト)もぜひご覧ください。

(次回は1月8日公開予定です)

【前の回】動物実験の代替法への転換を望む ある大学の卒業生による私記「実験用ラットのルル」

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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