生き生きとした平飼いの鶏。日本もケージフリーへと早急に進まなくてはならない
生き生きとした平飼いの鶏。日本もケージフリーへと早急に進まなくてはならない

世界は動物をケージに閉じ込めない 日本の鶏、ケージフリーの割合はたった1.12%

 鶏という動物は、太陽とともに起き、巣の中で隠れて卵を産み、グループで移動しながら地面を歩き回り、地面を掘って虫を探し、砂浴びをして体をきれいにし、太陽が沈むとともに高いところに登って眠る、そんな動物だ。

 我が家の鶏たちはどんなに寒くても、どんなに暑くても、雨が降っていても、昼間は外に遊びに行って、卵を生むとき以外は家の中には戻ってこない。台風の合間にも、少し風が収まると外に出せと騒いで、外に遊びに行く。変化する空を見上げたり、庭から見える学校の子どもたちを見て過ごしたり、私達と変わらない行動もする。

過酷なケージの中で過ごし、殺される

 私達と変わらず自由を愛する鶏たちだが、日本では、卵用に飼育される鶏たちの98.88%(2023年12月時点)は、ケージの中ですべての本能を奪われ、細い金網の上で、耐え続けている。

 ケージに足が挟まり骨折し、隙間に体が挟まり抜けなくなって餓死し、病気になっても一切治療はされず、やることがなく自分の爪や仲間を傷つけ続け、羽はぼろぼろになり、とさかは真っ白になり、心身ともに死ぬ間際となる。

ケージに足が挟まり身動きができない鶏。誰も助けない

 450~650日を過酷なケージの中で過ごし、殺される。

 世界はこの残酷なケージ飼育を終わらせる決断をしている。

世界は平飼い飼育へと変わりつつある

 EUではすでに60.3%の卵がケージフリー(平飼いか放牧)に切り替わっている。韓国は5.6%であり、この数字は年々増加している。台湾も15%が、インドネシアも12%がケージフリーに切り替え済みであると言われる。

 中国の数字は不明だが、2023年9月、中国国内で最大となる50万羽規模のケージフリーの養鶏場の建設が始まったと報道されており、また、2021年に中国はケージフリー生産の評価ガイドラインを策定しているが、これを報じた養鶏業界紙のなかで、この基準を策定した公的鶏卵業界団体の副会長が「中国は現在、より高品質の卵を生産するために、鶏卵生産者にケージフリーシステムの採用を奨励している」と述べるなど、ケージフリーへの切り替えが奨励されている状態にある。

健康的に見える平飼いの鶏たち、ケージで飼われている鶏とは様子がまったく異なる

対して日本は…

 日本のケージフリーの割合1.12%というのが世界最低レベルであることは間違いがない。

 環境省は、バタリーケージのような飼い方が「アニマルウェルフェア上推奨されるものではない」という立場を取っている。

 さらに農林水産省は、今年7月に策定したアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針の中で、将来の実施事項としてケージフリーでないと実現できない砂浴びなどを明記した。

 将来は日本もケージに動物を閉じ込めないことが当たり前になる時が来るはずである。

鶏は卵を産むための機械ではない。この写真を見て、そう思えるだろうか?

 しかし、進みがとにかく遅いのが日本。アニマルウェルフェアの低さは重大な社会課題であり、課題を解決できなければ、競争力を失っていくということだ。アニマルウェルフェアであろうと環境問題であろうと、スピード感を持って進めることが、結局は将来のリスクを軽減し日本の経済を強くする。課題解決が遅れて得することなど、何一つ無い。

 ケージは動物が生きる場所ではない。日本も早急に動物をケージに閉じ込めないという道に進まなくてはならない。

 市民も、買い物ではケージ飼育下で産み落とされた卵を“購入しない”という選択に変えることで、ケージフリーに向かおうと努力する企業を応援することができる。

(次回は2月13日公開予定です)

【前の回】動物への苦しみは継続 実態は毛皮と変わらない、残酷さを隠した「ファーウール」

認定NPO法人アニマルライツセンター
1987年設立。動物たちの苦しみを効果的になくし、動物が動物らしくいられる社会を目指す。食べ物や衣類、娯楽や実験に使われる動物など人の支配下に置かれている動物を守る活動と、エシカル消費の推進に取り組んでいる。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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