「保護犬を家族に迎えたい」ネット上で決めず必ず会いに行こう 訪問時のチェック項目

 7回にわたって「保護犬の迎え方」を紹介する当連載。第3回は、実際に保護団体をはじめとした保護主のもとへと足を運び、確認しておきたいことについて取り上げます。インターネットで情報収集して、実際に足を運んで、時間と手間をかけてもなかなか譲渡が決まらないこともありますが、これも新しい家族に出会うための大切な時間です。

保護犬に会える場所

譲渡会

 主に保護団体が、保護犬の飼い主を探すためにシェルター以外の場所で行うイベントに譲渡会があります。「譲渡会」と言ってもその場で連れて帰れるわけではなく、保護犬と出会い、知ってもらうための場として開催されています。一つの保護団体で開催していることもあれば、複数の団体が集まって開催していたり、動物愛護センターなどが主催していたりすることもあります。また、動物福祉に対する意識の高まりの中で、昨今は企業が社会貢献事業の一つとして主催する譲渡会も見られるようになってきました。

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 譲渡会は公園やイベント会場など人が集まりやすい場所で、開かれたものとして行われていることが多く、参加しやすいというメリットがあります。保護犬と触れ合うことができ、団体の人から話を聞けるいい機会。なんとなく保護犬やその団体の雰囲気をつかむだけでも十分に有益なことなので、譲渡会情報をキャッチして、ぜひ足を運んでみましょう。

保護シェルター

 気になる保護団体や保護犬が出てきたら、実際にその保護団体にアクセスしましょう。規模の大きな団体はシェルター(保護犬たちが暮らしている専用の施設)を持っていて、見学を受け付けていることもあります。事前に連絡を入れ、保護犬を迎えたいと考えていて、見学したいと思っている旨を伝えます。ただ、保護団体は人手不足のところも多く、保護犬を迎える予定がない人の見学は断られる場合がほとんどです。

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 規模の大きな団体以外はシェルターを持っておらず、また犬たちも一般家庭で生活するほうが望ましいため、多くの保護犬たちは、新しい飼い主が見つかるまでの間家に迎え入れて世話をする「一時預かりボランティア」の家庭で生活しています。その場合は、希望の犬を決めて保護団体に申し込みをし、譲渡条件に当てはまるかを確認してもらったうえで、一時預かりボランティアとスケジュールを調整して、犬と対面することになります。

 シェルターの見学や犬との対面を断られたら、その団体は候補から外したほうがいい場合もあります。事前に犬やその飼育環境を見せてくれない団体は、不衛生でとても見せられる状況でないなどの問題を抱えている可能性もあり、信頼できるかどうかに疑問符がつくためです。ただ、特に小規模な保護団体や一時預かりボランティアは、自身の仕事や生活の合間を縫って自費で活動していることが多いため、相手の都合も尊重するようにしましょう。

団体訪問時の確認事項

 保護団体や一時預かり家庭を訪問した際は、動物愛護管理法の「第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準」 を参考に、以下をチェックします。

  • 適切な飼育環境であるかどうか(衛生的な環境か、居場所の広さは十分か、清潔な飲み水がいつでも飲める状態になっているか、スタッフの人数は十分か、など)
  • 保護犬たちの状態(清潔に保たれているか、人間との触れ合いがあるか、適度な運動をさせてもらっているか、獣医師による健診や治療を受けているか、など)
  • スタッフたちの譲渡希望者への対応(質問に対して誠実に回答してくれるか、など)

 また、訪問先がシェルターの場合は、犬たちの暮らしにかかわる部屋を見せてくれるかどうかもチェックポイントになります。いざ見学にいっても、応接間のような部屋に犬を連れて来て、ふだん飼育されている施設を見せてくれないような場合は、適切な飼育環境であるかどうか疑問です。犬が集まれば、多少汚れていたり散らかっていたりすることはある意味で当然とも言えます。大切なのは、そうした状況でも包み隠さず見せてくれることなのです。

(アニマルレフュージ関西提供)

 保護団体とは譲渡後も付き合いが続く場合があるので、その後の付き合いに対する考え方や、スタッフたちの雰囲気が合うかどうかも確認しておくといいでしょう。卒業犬のコミュニティができていてオフ会などを開催している団体や、譲渡後もトレーニングの相談にのってくれるなどアフターフォローがしっかりしている団体だと、初心者の場合は安心です。また、譲渡した犬の状態を確認するため、譲渡後も毎月犬の写真を送ることなどをルールとして設けている団体もあります。考え方はそれぞれなので、自分に合った団体を選べるのが理想です。

保護犬についての確認事項

 もし信頼できる保護団体に出会えたなら、どんな犬を希望しているのかスタッフに相談しながら、いつも犬を見ている人やプロの視点で、マッチングしてもらうのが理想です。保護団体にはそれぞれ譲渡条件がありますが、「単身者と高齢者はNG」と条件で切るのではなく、各家族の事情や犬の状態を見て、できるだけ合う子を提案してくれる場合もあります。

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 とはいえ、自分たちで犬を選ぶときは、実際のところ、「写真を見て気になった」など見た目から入る人がほとんどではないでしょうか。保護犬に限らず、たとえ見た目から入ったとしても、必ず見た目ではわからない情報もよくチェックしてください。

 保護犬に関して、確認したいポイントは以下です。

  • 保護された経緯(性格や特徴にも影響しています)
  • (推定)年齢(その子の活動性や、あと何年ぐらい生きそうかが想定できます)
  • 性別(性格の傾向や、かかりやすい疾患などがわかることもあります)
  • 不妊・去勢済みであること(月齢や病気など理由がない限り、保護主が保護団体であれば済んでいるのが普通です。また不妊・去勢済みかどうかは、性格や特徴のほか、不妊・去勢手術の費用が今後必要になるかどうかにかかわります)
  • 犬種(性格・特徴や必要なケアなどにかかわります)
  • 性格・特徴(家族が希望するライフスタイルに合うかどうかを見極める、重要なポイントです)
  • サイズ(子犬の場合は成犬時にどれくらいのサイズになりそうか。生活に必要なスペースや運動量、飼い主に求められるパワーなどにかかわります)
  • 病気の有無や既往歴(特にフィラリア陽性かどうかなど。必要なケアや医療費をイメージできます。場合によっては先住動物との隔離が必要になります)
  • ワクチン接種状況(迎えた後すぐ散歩に行けるのか、先住動物との隔離が必要か、迎えた直後にかかる費用などがわかります)

 特に見た目ではわからない性格や特徴は、保護団体のスタッフや一時預かりボランティアによくヒアリングしましょう。好きなものや苦手なもの、人にどれくらい慣れているか、かむ・吠えるなどの問題行動や攻撃性の有無、トイレトレーニングはできているか、などです。また、先住犬や先住猫がいる場合は、相性も確認する必要があります。

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 その他、動物愛護センターなどの行政施設や個人から迎える場合も、必ず決める前に、実際に保護犬に会いにいくようにし、同様の内容を確認します。個人の場合は保護施設がイコール自宅ということもあり、別の場所での対面を提案されることもあるかもしれません。そこについては許容をし、何はともあれ犬を見て、保護主としっかり話をすることが大切です。

 そして、その子を前に、5年後、10年後の生活に思いを馳(は)せて、よく考えるようにしましょう。一緒に落ち着いた暮らしがしたいなら、若い犬やヤンチャな性格の犬よりも、落ち着いた成犬のほうがいいかもしれません。友人やその愛犬と一緒に遊びに出かけたいなら、人や犬に対してフレンドリーな子のほうがいいでしょう。小さな子どものいる家庭であれば、攻撃性のある犬は避けるべきです。

 もちろん、人慣れしていないから、病気があるからといって、選ばないほうがいいというわけではありません。むしろ、人慣れしていく過程も含めて気長に楽しんで付き合える家族であれば、人に慣れていない子を迎えるのもやりがいがあるかもしれません。また、病気の犬や老犬は、別れが早くきてしまう、迎えてすぐに医療費がかかる、またはかかる可能性があるなどのデメリットに注目されることが多く、迎えたい犬の候補として上がらないことが多いです。ただ、施設で亡くなることは決して幸せなことではないので、保護犬の中でも弱い立場にある犬たちに目を向ける余地があるのなら、それはとても意義のあることでもあります。

時間と労力がかかるのは当然と心得る

 保護犬を探すうえで大切なのは、「絶対にこの子がいい」「この犬種でないと嫌」「子犬以外考えられない」といったこだわりを持たないことです。保護団体のスタッフは、行き場を失った犬たちに幸せな居場所を見つけるために、譲渡希望者の家庭環境や家族構成などを細かく確認する場合がほとんどです。その結果、希望の犬を引き取れないこともあるし、条件が合っても他の譲渡先に決まってしまうこともあります。何度か応募を続けてもなかなか決まらないと、心が折れそうになるかもしれません。ペットショップで購入することに比べて、なんて時間や手間がかかるのだろうとも感じるでしょう。

(アニマルレフュージ関西提供)

 しかし、命ある生き物を新たな家族として迎えるのだと考えたら、それくらいは当然とも言えます。時間や労力はかかっても、ぜひ自分たち家族に合う団体や保護犬を、根気よく探してください。大切な命としっかり向き合う、そういう一人ひとりの心構えや姿勢が、保護犬や殺処分を減らし、動物を大切にする社会のあり方へとつながっているはずです。

●監修=奥田昌寿(認定特定非営利活動法人 アニマルレフュージ関西
(取材・文/山賀沙耶)

 次回は、「保護団体がチェックする情報とは?」をお送りします。

(次回は11月10日公開予定です)

【前の回】保護犬を迎えたい! どう探して、どこから迎える?信頼できる保護団体探しがカギ

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
保護犬の迎え方
日本には、さまざまな事情から保護された行き場のない犬たちがいます。犬を家族に迎えたいと思ったら、選択肢に保護犬も入れてみませんか?当連載では、7回にわたって保護犬の迎え方を詳しく紹介していきます。
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