余興のための動物虐待 糸満ハーレーの「アヒル取り競争」、4年ぶりに開催も改善なく
泳いだことのないアヒルが深い海に放り投げられ、合図と同時に一斉に多数の人間が迫りきて、追いかけ回され、頭や首や羽や足をつかまれ、海に沈められながら捕まえられ、その後、殺される。
沖縄県糸満市が支援し、糸満市の港で行われる糸満ハーレーの合間の余興だ。
刑事告発の受理を先送りしてきた沖縄県警
糸満ハーレーは、沖縄の各地で行われる、沖縄で600年前から続く「ハーレー」「ハーリー」などと呼ばれる伝統漁船でのレースだ。これ自体に何の問題もないが、レースの合間に誰でも参加ができる、冒頭のアヒル取り競争というプログラムが組み込まれている。
アニマルライツセンターでは2015年に初めてこの残酷なイベントを知り、それ以降中止と改善を求めてきた。2019年に行われた糸満ハーレーでは、多数の動物虐待があり、文書で改善を求めた。そして4年ぶりの開催となった2023年6月21日の糸満ハーレーでも改善はされていなかった。
私達は動物虐待に当たると思慮される行為と、虐待が発生するとわかっていながらも2019年と変わらない方法で開催した主催者を刑事告発した。沖縄県警は“虐待かどうかの判断ができない”との理由をつけ、告発の受理を先送りにしてきたため、私達は弁護士を通じ再度告発し直ししたところである。
告発がどうなるにせよ、アヒル取り競争はなくしたほうが良い。
理由1.動物愛護法違反
鳥類は動物愛護管理法で規定する愛護動物である。動物愛護及び管理に関する法律に抵触する可能性の高い行為が毎回見られる。アヒルは骨折や窒息、衰弱などの可能性があり、さらに一連の行程による精神的な恐怖やストレスが大きい。
そもそもアヒル取り競争は、環境省が示す動物虐待の定義で環境省が示す「積極的(意図的)虐待」の具体例の
- 身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある行為
- 暴力を加える
- 心理的抑圧、恐怖を与える
に明確に該当している。また、畜産動物であることと、余興やイベントのための利用であることを考慮すれば
- 酷使
にも当たる。
理由2.教育上問題が大きい
走行する船から生きた動物を海に投げ入れ、逃げ惑う動物を大勢の人間が追いかけ、追い詰めるという一連の行為は非人道的であり、このような行為を余興として行うことには、教育上の問題がある。
理由3.景品に生きた動物を利用してはならない
景品として生きた動物を利用することは全国的に廃止に向かっており、多くの企業が廃止している(UFOキャッチャーに生きた動物を利用することの禁止、ハムスターやフクロウの景品廃止等)。
理由4.“感謝して食べる”はどこにいった?
食べ物として利用されるアヒルを、その殺される直前にイベント利用し、追いかけ回し、恐怖や苦痛を与えた上で殺すことは倫理的に許されない。畜産動物のアニマルウェルフェアは世界中で向上しており、アヒル取り競争は時代に逆行している。
理由5.ワンヘルス
人獣共通感染症(特に鳥インフルエンザなど)を拡大、発生させる可能性がある。
理由6.小遣い稼ぎの手段と化している
捕獲したアヒルを売ってお金を儲ける目的で参加した人もいるし、子どもたちまでもがアヒルを捕獲後売り歩いたりもしている。教育上も風紀上も悪影響を及ぼしている。
理由7.持ち帰ったあとも悲劇
素人がと殺する場合、苦しむ方法で殺している可能性があり、監視もできていない。また捕獲したアヒルを飼育する場合であっても景品としてたまたま獲得した動物の適切な飼育ができる環境があるとは考えられず、不適切飼育に陥る可能性が高い。次なる動物愛護法違反を生んでいる可能性がある。
理由8.なくてもイベントが成り立つ
糸満ハーレーは船でのハーレー自体がメインの競技であり、アヒル取り競争がなくても成り立つ。
改正動物愛護管理法は2020年施行。動物虐待に対する罰則は、最大5年以下の懲役、500万円以下の罰金になり、それまでの2倍以上に厳しくなっている。にも関わらず、これまでと変わらずに暴力的な行為、アヒルがけがをする恐れのある扱いや捕獲などが多数確認され、またアヒル取り競争の性質上、心理的抑圧と恐怖は変わらず続いている。これらの行為を行った際の個別の注意はなく、退場になることもなかった。
生きたアヒルを利用することが、たとえ糸満ハーレーを形成する要素となっていたとしても、法律上、社会通念上、教育上好ましくない場合、現代では弊害を生む因習と判断されるのだ。
現在大きな話題となっている三重県多度大社の上げ馬神事も同様だ。伝統も習慣も変わらなければならない。動物をイベントに利用し苦しめても批判されない時代はもう終わったのだ。
(次回は10月9日公開予定です)
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