動物愛護法改正 犬猫だけでなく、爬(は)虫類の飼養管理基準の検討が進行中

現在、動物愛護法の爬虫類の飼養管理基準について検討が進められている

 改正された動物の愛護及び管理に関する法律(以下、「動物愛護法」)が2020年6月1日に施行されて早3年。この改正法に関連した省令の改正作業は現在も続いています。

 改正法第21条により、動物の販売や展示などを行う動物取扱業が遵守しなければならない動物の飼養管理基準を細かく定めることになって、「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」が作られました。この中の犬猫に関する基準(以下、「犬猫の飼養管理基準」)は、具体的なケージサイズ、従業員1人あたりの犬猫の頭数の上限、生涯出産回数などを定めたことで注目され、2021年6月1日より施行されています。

犬猫以外の飼養管理基準の検討が始まる

 第21条において、飼養管理基準を定める対象は、動物取扱業者が取り扱う「動物」となっています。つまり犬猫以外の哺乳類、鳥類、爬虫類も対象になるわけです。しかし、環境省は当初、犬猫以外については、法改正前の基準をほぼそのまま使おうとしました。

 そのため、JAVAは、動物愛護法改正の活動を連携して行ってきた「アニマルライツセンター」と「PEACE」とともに、犬猫以外の動物の飼養基準も改めるよう、環境省に要望書を提出したり、面会して直接申し入れをしたりするなど、働きかけを続けてきました。そして、動物のことを思う皆様からも「1日でも早く犬猫以外の動物の飼養基準もつくって」の声を届けていただきました。その結果、環境省が「犬猫以外の動物の基準もつくる」との方針を示したのです。

体の向きも変えられないほど狭いケースに入れられて展示販売されるゾウガメ(「東京レプタイルズワールド2018春」)

 2022年10月から、環境省の「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」において、犬猫以外の哺乳類の飼養管理基準策定に向けた検討が始まりました。また、爬虫類については、この検討会の下に「爬虫類飼養管理ワーキンググループ」が作られ、同年11月から検討が始まっています。

爬虫類の飼養管理基準について要望

 エキゾチックアニマル展示即売会「東京レプタイルズワールド」のようなイベントで、ヘビやトカゲが身動きの取れない惣菜用パックに入れられたり、カメが体とほぼ同じ大きさのケースに入れられたりといった爬虫類の劣悪な展示・販売が行われていることは、これまでにウェブサイトなどでお伝えしてきました。

エキゾチックアニマルの展示即売会「東京レプタイルズワールド」で、小さな総菜用カップに詰め込まれて売られるトカゲたち

 これらを改善させるには、展示・販売をなくすことが一番ですが、悲惨な現状においての対応としては、爬虫類についても具体的で厳しい飼養管理基準が優先であり、不可欠です。

ヘビは腸の不快感をとるために体をまっすぐにする姿勢をとることが必要だが、「東京レプタイルズワールド」では、このように体を折り曲げられた状態で売られている

 私たち3団体は、2023年2月、現行の省令に逐条の形で下記のような爬虫類の基準を盛り込んだ要望書を作成し、環境省に提出しました。

3団体の主な要望点

  • 現行の基準で犬猫だけに適用されている部分に関し、犬猫以外の種へも適用させることについて全体の見直しをする。
  • 爬虫類については、1匹あたりの飼養施設の規模は下記を最小とし、できる限り広い空間を備えるものとする。ただし樹上性種は高さが必要なため、下記の縦の長さまで飼養施設の高さを上げ、長さは1/3程度にすることができるものとする。複数で飼育する場合には、1匹あたり面積の2割以上を追加するものとし、必ず動物が重なり合わずに飼育できる施設を用いるものとする。

JAVAを含め3団体が環境省に求めている爬虫類1頭あたりの飼養施設の最低規模

  • 全ての飼養施設は、種に適した避難場所(巣、物陰、止まり木等)を有するものとする。
  • 運動スペースは、陸生または水生もしくは半水生であることに配慮がなされており、動物の活動時間内は常時利用できるようにする。
  • 水生・半水生の動物の飼養にあたっては、水温の管理を行い、必要に応じ、水の入れ替え、掃除、規模に見合った濾過装置の使用等により排泄物、残渣その他に起因する水質の劣化を防ぐ措置を講ずる。
  • 本来の生息地の環境を再現するという考え方や必要な器具の要件等の追加を盛り込んだ上で、温湿度、光環境の管理を行う。
  • 本来の形態や習性を損なうような施術、着色、拘束、着衣等をして展示しない。
  • 不必要な輸送が生じないようにする。健康状態を確認し、異常を認められる場合は輸送を行わない。
  • 捕食動物とその被食動物を組み合わせて、もしくは隣接して飼育することは避ける。
  • 群れ等を形成する動物、しない動物、闘争や共食いの可能性があり単独飼育が望ましい動物に対しては、その配慮をする。
  • 動物の組み合わせに関しては、繁殖期における行動の変化や、体の大きさなどの個体差にも配慮をする。
  • 原則として顧客等に動物を接触させない。特に、野生種の動物や産業動物を顧客と接触させることがないようにする。
  • 飼養保管に従事する従業者の員数は、犬猫の規定を指標とする。

ワーキンググループで3団体の要望をアピール

 2月9日に行われた第2回のワーキンググループでは、PEACEの東さちこ代表がオブザーバーとして出席しました。そして、問題事例を写真付きで説明し、海外のガイダンスや論文も示しながら、アニマルライツセンター、PEACE、JAVAの3団体の要望を委員たちに強くアピールしました。

 東代表の発表資料は環境省の「動物取扱業における爬虫類の取扱いについて」からご覧いただけます。

 今後、基準案のパブリックコメント募集も行われる予定です。

 ※2023年6月1日時点の情報です

(次回は9月11日公開予定です)

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JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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