署名活動実施中! 国が行う動物実験用ニホンザルの繁殖プロジェクトを終わらせよう
動物実験に使うためのニホンザルを繁殖・供給するナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」。このような国家プロジェクトが20年以上も続けられていることをご存知でしょうか。
ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)とは
NBRPとは、2002年に文部科学省が着手した、動物、植物、微生物といったバイオリソース(生物遺伝資源)、いわゆる研究材料を整備、安定供給させるための一大プロジェクトです。動物では、ニホンザルのほか、マウス、ラット、鳥類、魚類、両生類、虫など様々な種が扱われています(2023年1月現在)。
その中の「ニホンザル」プロジェクトは、「母群1,500~2,400頭を集め毎年300頭を実験用に供給する」という繁殖・供給数が目標として掲げられ、母群とするために、過剰繁殖した動物園や野猿公苑から多くのニホンザルが集められました。そこから産まれた子ザルを実験用に提供していて、提供が開始された2006年度から2021年度までに、計982頭の子ザルが35の大学や研究機関に送られました。
この「ニホンザル」プロジェクトは、代表機関である「京都大学ヒト行動進化研究センター」(2022年の組織改編前は京都大学霊長類研究所)と分担機関である自然科学研究機構「生理学研究所」によって運営されています。
JAVAは母群用のサルを集める時から強く抗議
20年ほど前、母群とするサルを集めるにあたって、国内の3つの動物園が同プロジェトの当時の代表機関である京都大学霊長類研究所とサルの提供で合意していましたが、うち「函館市営熱帯植物園」と「松本市アルプス公園」は、JAVAの強い抗議により中止を決定。
残る「札幌市立円山動物園」に対しては、JAVAは署名活動、文部科学省と札幌市役所前でのアピールアクション、文部科学省・円山動物園・札幌市との面談、住民監査請求、裁判と闘い続けましたが、最高裁がJAVAの上告を退けました。そして、円山動物園は2005年に45頭のサルを京都大学霊長類研究所に移送しました。
2020年からは、文部科学省などに働きかけ
2020年10月に出版された書籍、『犬が殺される―動物実験の闇を探る 増補改訂版』(森映子著/同時代社)の中で、このNBRP「ニホンザル」について、関係者への取材で明らかになった事業縮小や余剰サルの実状が記されたことにより、このプロジェクトの問題が改めて注目されることとなりました。
そのようなことから、JAVAは、動物愛護法改正や化粧品の動物実験の活動などで連携している「PEACE」と共に、文部科学省、京都大学霊長類研究所(当時)、生理学研究所に対して、ニホンザルの飼養状況やこれまでの事業の結果などを確認するために公開質問状の送付や情報開示請求を行ったり、ニホンザルの繁殖・供給の中止やNBRP「ニホンザル」を終了させることを要望したり、働きかけを行ってきました。
しかしながら、母群のサルの導入元、繁殖したサルの提供先などは「公表していない」とほとんど情報を明かさないのです。
批判の声が高い霊長類をはじめ、動物の実験使用からの脱却を
科学において動物の使用を避ける方向は近年ますます強まっていて、世界の趨勢(すうせい)では、例えばEUは、2010年に加盟国に遵守義務のある「実験動物保護指令」において、「動物実験の完全代替という最終目的のための重要な一歩」と明記しました。さらに2021年9月15日には、欧州議会が、実験での動物の使用を積極的・段階的に廃止するための行動計画を確立するよう欧州委員会に求める決議を採択しています。すでに、オランダのように、2025年までに実験動物に頼らないイノベーションの世界的リーダーになることを宣言している国もあります。
認知能力も高く、社会性も強い霊長類を動物実験に用いることに対しては国際的にも特に批判の声が大きく、規制強化の方向性にあるリソースである霊長類、そして、このNBRP「ニホンザル」に将来性はありません。日本も、霊長類をはじめ動物の実験使用の廃止を目指すべきです。
奄美野生動物研究所で飼育されるニホンザルの今後
さらに、NBRP「ニホンザル」に関しては、生理学研究所からNBRP事業の再委託を受けている「奄美野生動物研究所」において、2022年3月31日時点で163頭のニホンザルを飼育していますが、すでに繁殖は行っておらず、このサルたちをどうするかという課題も発生しています。
自然の環境に近く、福祉に配慮された環境で余生を過ごさせるのが、サルを実験利用する研究者や、その実験結果から利益を得る事業者の責任ではないでしょうか。
要望を無視し、第五期をスタート
私たちは、NBRPそのものに反対しているわけではありません。私たちは動物実験を廃止してほしい、そして、動物実験ではない研究手法の開発に国は十分な予算をかけ全力で取り組んでほしい、そのためにNBRPでは、動物ではなくヒト細胞やヒト組織など、代替法に不可欠なリソースを扱ってほしいと訴えているのです。
しかしながら、文部科学省は、私たちの要望に応えることなく、NBRP「ニホンザル」を第五期(2022年4月~2027年3月)も継続することを決定しました。しかも、代表、分担両機関に交付する補助金額は同規模で、プロジェクトを縮小させる考えもないことがわかりました。
文部科学大臣あての署名活動をスタート
2023年4月、JAVAとPEACEは、NBRP「ニホンザル」をこの第五期をもって終了させることを目指し、文部科学大臣に次のことを求める署名活動を開始しました(集約期限 2025年3月31日)。
1. NBRP「ニホンザル」プロジェクトは、第五期をもって終了させてください。
2. 第六期の公募において、ニホンザル以外の動物種に関しても、できる限り採択を減らし、動物実験ではない研究手法の発展につながるプロジェクトをサポートしてください。
ぜひ、オンライン署名プラットフォーム「Change.org」で署名にご協力ください。
(次回は7月10日公開予定です)
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