「無」になる者あれば食べ物に夢中になる者も 犬も猫も爪切りは三者三様 

「心は『無』にするに限る」、爪切り中のメロー

 ドッグトレーナーなのに、我が家は犬1匹、猫が3匹になってしまいました。この3匹の猫たち、同じ家で同じ人が育てているのに、それぞれ行動は全く違い、見ていて飽きず、笑ってしまうことばかり。今回は「猫の爪切り」について紹介します。

(末尾に写真特集があります)

こまめに爪のチェックを

 みなさんは、愛猫・愛犬の爪切りをどうしていますか?

 愛犬の爪切りは「自分ではやらず、トリミングサロンに行ったときにトリマーさんにお任せしている」「動物病院で切ってもらう」「散歩をたくさんするので爪はあまり伸びない」などなど、飼い主が爪切りをする以外にも、他の人が切ってくれるサービスもありますし、「自宅でも爪切りができたらいいなぁ」という感じではないでしょうか?

 でも猫は、長毛種でないかぎり、トリミングサロンへ連れていくことがないので、爪切りは自宅でするか、動物病院で切ってもらうほかありません。

 完全室内飼育のうちの子たちは、時々ハーネスをつけて外を散歩することがあるものの、犬のように歩いているうちに自然と爪が短くなったりはしません。

 爪は伸ばしたままにしていると、気づかぬうちに折れてしまい、爪先に血がにじんでしまったり、けがの元になってしまいます。さらに室内では、ソファやカーテンで爪とぎをして家具がボロボロになったり、飼い主が猫のハイテンション運動会に巻き込まれたときに、うっかりみみず腫れや流血沙汰になりかねません。

犬も猫も爪切りは三者三様

 うちは犬1匹、猫は3匹いまして、爪切りのスタイルは4パターンあります。みんな同じやり方で切れないのです。

 愛犬コーダはオールマイティーで、もはや人に近いのでは?と思うくらい、爪切りでも耳掃除でも歯みがきでも、静かに受け入れてくれるのでお互い苦労はありません。

 大変なのは猫。まず長男フィーユは、動物病院が苦手すぎて、もし爪切りで連れて行くとしたら、2人がかりでネットに入れて押さえていないと大声で叫び、大暴れ。ワクチンなどで獣医にお世話になった後は、クレートの中でだっぷんしたり、しばらく人間不信状態になるのでなだめながら帰宅します。そんなわけで、体調不良や検査以外で動物病院に連れて行くことは、お互いに負担になってしまうタイプ。

フィーユ「はい、どうぞ」

 また、フィーユは子猫の頃からかみつきが強かったので、お手入れをしようとするとかまれてできないので、「おすわり」「お手」「おかわり」などの合図で動いてくれるようにトレーニングしました。今は「お手」と言って、前脚を自分から出してくれた時だけ爪を切って、できたらちゅ~るをひとなめさせます。

 前脚はそれでいいのですが、後ろ脚の爪切りには「リッキーマット」を使います。リッキーマットは、平らなペット用食器で早食い防止食器とも呼ばれているのですが、そのマットの上にペースト状のフードを置くことでなめる行為を長くキープし、集中させることができるのです。

「おいしいものをなめている」というフィーユにとって良いことが起きている間は、脚を持たれてもあまり気にならなくなり、その隙に素早く後ろ脚の爪を切っています。

リッキーマットに乗せたフードを舐めてる隙に……

 続いて次男のガロは、ハーネスをつけて庭に出ているときに爪を切ります。周りの環境が気になって固まっている隙が、チャンスなのです。ポイントはその日に全部の爪を切ろうとせず、脚一本ずつ何日かに分けて切ることです。でも最近は庭に慣れてきてしまったので、次の作戦を考え中です。

 ちなみにガロは白血病キャリアなので、お手入れ道具は爪切りもブラシも他の猫と共有せず、ガロ専用のものを使っています。

ガロ専用のお手入れグッズでケア中

 末っ子のメローは、普通の抱っこだとジタバタしてすぐに逃げようとするのに、爪切りの抱っこのときだけは急に「無」になります。全身の力を抜き、仰向けにしても「虚無」という感じ。前脚の爪を切ろうが、後ろ脚の爪を切ろうが、爪切りが終わるまでただただ人形のようになってくれています。

「おりこう」と表現するのも何か違う、その時だけ意識が他の星に行っているような感じです。

「……」

うちの子にあった接し方を見つけて

 私は爪切りやブラッシングなど、動物のお手入れは結構好きです。けれど動物にとってお手入れは「自然なこと」ではなく、基本的には「嫌なこと」です。しかし、お手入れや医療などのケアを提供することによって、健康を保ったり、寿命を伸ばすことにつながるので、してあげた方がいいに違いありません。

 お手入れは、嫌なことという認識ではなく、気持ちのいいこと、体の不快を取り除くこと、飼い主との関わりの機会が楽しいと思って受け入れてくれたら、お互いのQOLが向上します。

 ご褒美を使って少しずつケアに協力してもらう方が合っているタイプもいれば、嫌なことはテキパキさっさと終わらせた方が合っているタイプもいます。犬も猫もタイプはそれぞれなので、「うちの子」に合った接し方を工夫して、愛犬や愛猫ともっと仲良くなれるきっかにしてみてください。

【前の回】同じ人が育てたのになぜ? 保護猫3匹の個性の違いに笑いが絶えない

浅野里実
千葉県習志野市のドッグスクール「Perrito」主宰。犬との暮らし方コンサルタント、ドッグトレーニングインストラクター。スクールでは動物福祉を優先し、オーナーの知識の向上による動物のQOL向上をサポート。応用行動分析学・心理学に基づいた科学的根拠のある効果的な方法でトレーニングし「正の強化」をベースにしている。イングリッシュコッカースパニエルのコーダと保護猫のフィーユ、ガロと暮らす。

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この連載について
ドッグトレーナーの犬猫日記
サーフィンやスケボーが得意な愛犬「コーダ」と保護猫「フィーユ」「ガロ」と暮らすドッグトレーナー浅野さんの犬猫日記。
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