シロクマのぬいぐるみのようなスフレ(井上菊さん提供)
シロクマのぬいぐるみのようなスフレ(井上菊さん提供)

【雑種犬図鑑.5】まるでぬいぐるみ! もこもこの白毛がかわいい「スフレ」

目次
  1. 【基礎データ】ウエスティなどテリア系っぽい外見の中型雑種犬
  2. 【チャームポイント】カットによって大きく変わる、キャラクターっぽい見た目
  3. 【性格】怖がりで控えめだけど、同居犬の真似はしたい!
  4. 【生い立ち】生まれ育ちは不明、広島で保護され東京へ
  5. 【暮らし】引きこもりスタイルで楽しむ犬連れ旅

 個性豊かな雑種犬の魅力を犬種図鑑のパロディで紹介する連載企画。第5回は、まるでふわふわのテディベアのような見た目の「スフレ」。どんくさく引きこもりのインドア派ですが、見た目も性格も違う先住犬「ビビアン」とのコンビで、のんびり旅も楽しんでいます。

(末尾に写真特集があります)

DATA
《名前》スフレ Soufflé
《年齢/性別》推定8歳・メス
《役割》引きこもり犬
《サイズ》体高35cm・体⻑50cm・体重10kg
《特性》
ぬいぐるみ感★★★
表情の豊かさ★★★
俊敏さ★☆☆
運動量★☆☆

 シロクマのぬいぐるみのような見た目のスフレ。ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアに似ているようにも見えますが、ウエスティよりは体が大きく、脚も長め。雑種犬には見えないようで、「『ウエスティですか?』と聞かれるか、『何犬ですか?』のどちらかですね」と、飼い主の井上菊さんは話します。

ギズモ? ミッキーマウス? 印象が変わる耳

 音に敏感で、三角形の大きな耳を動かすのが得意。耳の位置や毛の長さによって、映画『グレムリン』に登場する架空の動物「ギズモ」のように見えたり、ミッキーマウスのように見えたり。

耳の毛が長めのときに耳を下げていると、ギズモのよう 右:耳の毛を丸くカットしているきに耳を立てると、ミッキーマウスっぽくも見える(井上菊さん提供)

ヘーゼルカラーの瞳

 独特の瞳の色は、洋犬っぽさを感じさせる明るいヘーゼルカラー。上目づかいをすると白目が目立って、表情豊かに見えます。色素薄めのピンクの鼻もチャームポイントの一つ。

左:光が当たると特に明るく見える瞳 右:白目が見えることで、何か恨めしそうな表情にも見える(井上菊さん提供)

チアガールのポンポンのようなシッポ

 普段はゆるくカーブしているスフレのシッポですが、嬉しいときは立ち上げてくるんと巻き、フリフリと左右に振ります。まるでチアガールのポンポンのようなので、姪の華さんが「チアガール」と名付けたそう。

シッポだけを見ると、ウエスティというよりはプードルっぽい(井上菊さん提供)

 洋犬っぽい見た目から、抱っこ大好きなお座敷犬かと思いきや、性格は少し違うようです。

 スフレは基本的には控えめな性格で怖がり。どんくさいタイプで普段はあまり走りませんが、同居犬ビビアンと遊んでいて興奮すると、ウサギのようにグルグル走り出すことがあるそう。

人や車が多く、いろんな音のする外は苦手

 もともと外に出るのは怖いので得意ではなかったけれど、昨年からは散歩も拒否。「散歩」と言うと、同居犬のビビアンは飛び上がって喜ぶのに対して、スフレはベッドの下に隠れてしまいます。ビビアンが散歩から帰ってくるのを玄関で待っていて、帰ってくるとビビアンの全身のにおいをチェックします。

人や車の少ない早朝の散歩では楽しそうにすることもある(井上菊さん提供)

食いしん坊バンザイ

 美味しいものは大好きで、よく台所をのぞいています。特に好きなのは犬用チーズやヨーグルト。迎えたばかりでまだ人に慣れていなかったころ、華さんはおやつをきっかけにスフレと仲良くなりました。

美味しいものには目がない。犬用おせちにこの表情!(井上菊さん提供)

同居犬が大好き! 真似っこ大好き

 出会ったばかりのころはお互い距離があったスフレと同居犬ビビアンですが、今では大の仲良し。「特に後から来たスフレは、ビビアンのすることをよーく観察しています。ビビアンがソファの端にアゴを乗せるポーズなど、よく真似していますね」と飼い主の井上さん。

家具の脚をかじるいたずらも真似っこ。2匹一緒にやれば怖くない!?(井上菊さん提供)

 井上さん宅に来たときには推定6歳だったというスフレには、どんな過去があったのでしょうか。

 2019年11月に広島愛護センターから保護されたスフレは、そのときすでに成犬で、推定年齢は5歳。保護される以前の情報はないけれど、おそらく飼育放棄ではないかと言われていたそう。センターから広島の保護団体に引き出され、東京の保護団体で預かって飼い主募集をしていたところを、井上さんがインスタグラムで見つけました。

東京の保護団体にいたころ。足だけ茶色なので「カフェオレみたいで変わってますね」と話していたら、糞尿の汚れが染みついた色だったことが判明。過酷な状況で暮らしていたことが想像できる(井上菊さん提供)

 井上さん宅には元保護犬のビビアンがいましたが、ビビアンは3きょうだいで育った子だったことから、遊び相手がいたほうがいいのではないかと悩んでいました。

「保護団体のインスタでスフレを見たとき、先代犬のウエスティに似ていたこともあって、気になって問い合わせたんです。そしたら、名乗り出た人から先着でトライアルできるとのことで、トライアルでビビアンとの相性を見ようと思いました」

家に来たばかりのころは、納戸やベッドの下に隠れていた(井上菊さん提供)

 トライアルの5日間でスフレとビビアンがすぐに交流することはなく、井上さんは迷い、保護団体に相談しました。すると、保護団体からは「スフレは臆病だけれど、他の犬とスタッフとの関係性を見て甘えたりするようになったので、多頭飼いが向いていると思う」との答え。多頭飼いの失敗例や成功例を調べ、さんざん悩んだ結果、最後には「合わなければ別々に2回散歩に行けばいいや」と覚悟を決めて、スフレを迎えることに決めました。

正式に迎えた後、井上さんがリビングで2匹と一緒に寝ていたころ(井上菊さん提供)

 トライアル中は静かだったスフレですが、迎えることが決まった後、なぜか夜に遠吠えするように。そこで、井上さんはリビングで一緒に寝ることにし、1人と2頭のリビング生活が始まりました。

「少しずつ近くで寝てくれるようになって、1カ月ぐらい経ったあるとき、スフレがシッポを振って近づいてきて、手をペロペロなめてくれたんです。そこからは心を開いてくれるようになりましたね」

 こうして、個性豊かな2匹との多頭飼いライフが始まりました。

 最初は家族に対しても警戒していたスフレですが、焦らずスフレのペースで徐々に仲良くなるようにした結果、苦手だった井上さんの父にも3カ月ほどで慣れました。スフレが来たときはまだ生後4カ月程度と子犬だったビビアンは、スフレに無邪気についていくようになり、1カ月後にはワンプロをする仲に。

「今やスフレも家では完全にリラックスしていて、逆に引きこもりのようになってしまいました(笑)。マッサージが好きで、右手でビビアン、左手でスフレのおなかをマッサージする時間は至福の時ですね」

いつも一緒に遊んでいるスフレとビビアン(井上菊さん提供)

 ビビアンとスフレが来てから、犬連れ旅行にも出かけるようになりました。とはいえ、お出かけ好きなビビアンと引きこもりのスフレの両方が楽しめるように、旅先でもあちこち観光して回るのではなく、基本的には慣れた宿の周辺でのんびり過ごすスタイル。人の多くないこぢんまりとした犬連れOKの宿に泊まって、ドッグランで遊んだり、周囲を散策したり。伊豆高原や河口湖によく行くほか、四尾連湖でSUPに挑戦したこともあります。人や車の少ない自然の中に出かければ、スフレも楽しんで散歩できるそう。

あまり走らないスフレだが、ドッグランも楽しむ(井上菊さん提供)

 スフレと暮らしてきた3年間でいちばん井上さんの印象に残っているのは、やはり旅先での出来事。

「スフレを迎えて1年目に河口湖へ出かけたとき、カフェでごはんを食べていたら急に花火が上がって。音に敏感なスフレが大パニックになって暴れて、首輪が抜けてしまったんです。そのときは必死で捕まえて無事だったんですが、1年前だったら逃げてしまっていたかもと思うと、ゾッとしたと同時に、だいぶ家族に慣れてくれたんだなと嬉しくもありました」

誕生日のお祝いはいつも華さんと一緒(井上菊さん提供)

 ビビアンとスフレが来て、早朝に散歩に出るのが習慣になった井上さん。朝の気持ちよさを知って、夜型人間だったのがすっかり朝型に変わったそうです。

 今の課題は、家を安心できる居心地のいい場所にしすぎた結果、スフレが外に出るのを嫌がるようになってしまったこと。スフレのペースでまた少しずつ慣れていけるといいですね!

(次回は5月26日公開予定です)

【前の回】【雑種犬図鑑.4】飼育放棄された母犬、世界を巡る旅犬に! 飾り毛が素敵な「なな」

山賀沙耶
フリーランス編集ライター。北海道大学文学部卒業後、編集プロダクション、出版社勤務を経て、独立。現在は雑誌や書籍、ウェブメディアを中心に、犬やアウトドアなど幅広い分野で活動中。犬メディアとのかかわりは、約20年前の編集プロダクション時代から。プライベートでは、2頭の雑種犬と外遊びを楽しむのが至福の時。

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この連載について
雑種犬図鑑
見た目も性格も個性豊かな雑種犬の魅力を、犬種図鑑のパロディで紹介。毎回1匹の雑種犬にフォーカスし、チャームポイントから生い立ち、暮らしのエピソードまで情報や魅力をふんだんに伝えていきます。
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