制度や法律の改正も夢ではない　動物の問題に関与する弁護士のつながりが未来を照らす

細川敦史

2023/03/26

　ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は、動物の問題に関与する弁護士のつながりと、そこから先に続く未来の展望についての話です。

ごくわずかとはいえ、着実に増えている

　この連載は、『おしえて、ペットの弁護士さん』ですが、ペット・動物の弁護士と言えるような人は、日本にどれくらいいると思いますか？

　現在、日本の弁護士は約45,000人！います。その中で、普段からペットや動物の問題を勉強し、事件に関わっている弁護士はごくわずかで、感覚的には、数十人いるかどうか、100人はいないだろうと思います。それでも、20年前、10年前に比べると、若手の弁護士を中心に、少しずつ増えている実感があります。

　どこにいるのか、具体的な例を紹介していきます。

弁護士たちの間で、何が行われているのか

　まず、「ペット法学会」は、ペット動物の法と政策を研究し、その成果を社会に還元することを目的とする任意団体です。1998年設立と、現在活動している中で、もっとも古い組織ではないかと思います。

　会員は200名ほどで、法学研究者を中心に組織されているように思えますが、事務局長の渋谷寛弁護士をはじめ、弁護士もかなり所属しており、また、獣医師や動物愛護関係者も所属しています。年に1回、法律をテーマにした学術集会（シンポジウム）を開催しています。私も何度かパネリストとして発表したことがあります。

　次に、「動物の法と政策研究会」という任意団体があります。日本で初めての『ペット六法』を編纂（へんさん）し、上記ペット法学会の副理事長でもある吉田眞澄先生が2016年に立ち上げ、現在は私が会長を引き継いでいます。本拠は京都市です。当初は、「ペットの法と政策研究会」でしたが、ペットに限らず動物全般を研究の対象とする方針にあわせて、会の名称も変更しました。会員は20名程度で、弁護士だけでなく、議員、獣医師、動物愛護関係者も所属しています。

　こちらは近いうちに、ホームページで情報公開予定です。

　さらに、一般社団法人日本環境法律家連盟（Japan Environmental Lawyers Federation、略称JELF）という環境問題に取り組む法律家のNGOがあります。弁護士を中心とする会員が460名ほどいるそうです。最近、動物福祉が新しいテーマとして設定されるとともに、動物問題に取り組む部会が設置されました。

　JELFでは、全国各地の10数名から20名程度の弁護士がzoomで会議をしています。ここでは、ペット（伴侶動物）だけでなく、畜産動物、展示（動物園水族館）動物、実験動物、野生動物といった分野について勉強し取り組んでいく予定となっています。

　なお、JELFのWEBセミナーで、４月５日（水）18時～19時、「動物虐待に対する弁護士の役割」と題して、私が講師をさせていただきます。テーマに興味のある方は、お申込みください。

未来に向けて

　また、近年、弁護士会による人権擁護活動（委員会活動）の一環として、社会的弱者ともいえる動物の問題を取り上げる動きがあります。私の知る限り、動物関係のシンポジウム等を開催したことがあるのは、東京弁護士会、兵庫県弁護士会、福岡県弁護士会、和歌山弁護士会、愛知県弁護士会、千葉県弁護士会、そして日弁連です。これ以外の弁護士会においても、検討中のところもあると聞いています。