猫の引っ越しから人間模様まで 新年の猫映画初めに映画館で見たいとっておき3選
2023年、あけましておめでとうございます。 “猫映画初め”として、お出かけして見られる猫映画はいかがでしょうか。ご紹介するのは、現在公開中のイチオシ猫映画3本です。
迷える猫のような5人と1匹の物語『子猫をお願い』
まず1本目にご紹介するのは、ポン・ジュノ監督作『グエムル-漢江の怪物-』(06)や是枝裕和監督作『空気人形』(09)、『ベイビーブローカー』(公開中)などで知られる国際派女優ペ・ドゥナが、ブレーク直後に出演した2001年の映画『子猫をお願い4K リマスター版』です。
ペ・ドゥナが演じる心優しい夢想家のテヒ、美人で上昇志向が強いヘジュ(イ・ヨウォン)、賢くて才能に恵まれたジヨン(オク・チヨン)、楽天家で仲が良い双子のピリュとオンジョ(イ・ウンシルとイ・ウンジュ)。本作は、20歳という人生の節目を迎える5人の友情や夢、恋、挫折、孤独などを、時にビターテイストで、時にユーモアを交えて、エモーショナルに映し出していきます。
社会へ出てそれぞれに葛藤を抱える5人の人生に、するっと入り込んでいくのが、1匹の迷い猫です。ジヨンが拾って「ティティ」と名づけた猫ですが、観終わったあとで、このタイトルの意味合いを改めてかみしめることに。
『子猫をお願い』は、猫主体ではなく、あくまでもペ・ドゥナら女優陣が織りなす青春群像劇ですが、改めて観直してみると、少女から大人への過渡期にある20歳の女子5人も、まるで迷える猫のように思えてきます。
チョン・ジェウン監督も「主人公の5人は猫のような――柔軟で、自立していて、複雑で、飼い主のもとでの生活が気に入らなかったら出て行ってしまうような子になってほしい」という願いを込めたそうで、まさに本作は5人と1匹の物語となっています。
本作は、チョン・ジェウン監督の長編監督デビュー作ですが、釜山国際映画祭や大韓民国映画大賞をはじめ、ロッテルダム国際映画祭、香港国際映画祭など、世界的にも高い評価を受けました。「銀残し」という手法が取られた映像美も秀逸で、まさにスクリーンで観たい1本となっているので、この機会にぜひ映画館でご覧ください。
『子猫をお願い4K リマスター版』公開中
公式サイト:konekowoonegai4k.com
監督:チョン・ジェウン
出演:ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・チヨンほか
配給:JAIHO
©2001 by IPictures and Masulpiri Pictures.
猫を通して韓国の今を描く『猫たちのアパートメント』
2本目も、『子猫をお願い』のチョン・ジェウン監督が手掛けた最新監督作『猫たちのアパートメント』です。今回は猫たちをたっぷり追った猫ざんまいのドキュメンタリーですが、2作を観れば、この監督が愛猫家であり、猫映画の名手であることは一目瞭然です。
また、『子猫をお願い』との共通点は、猫を通して韓国の今を、目をそらすことなく、しっかり捉えている点でしょうか。息遣いまで聞こえてきそうな猫の生態を切り取りつつ、猫たちと向き合う人々の心のあやまで、丁寧に撮りあげています。
本作の舞台は、ソウル市内・江東区の老朽化したマンモス団地。住民の引っ越しや取り壊し工事が進むなか、そこで暮らす250匹もの猫たちを、どうやって安全な場所に移住させるかという引っ越し大作戦が描かれていきます。
猫たちを守るべく立ち上げられたのは、団地に住むイラストレーターや作家、写真家の女性たちを中心にした「遁村(トゥン チョン)団地猫の幸せ移住計画クラブ」、略称「トゥン チョン猫の会」。地域住民に見守られて団地で暮らしてきた地域猫と人々の交流や別れを、2年半を掛けて撮りあげた意欲作です。
たくさんの猫が登場しますが、なかでも門番をする猫コンスンや、貫禄ある人気猫トゥンイ、一日中毛づくろいをしている美猫パンダルなど、かなりキャラ立ちしている野良猫たちは存在感たっぷり!映画を観ればきっと“推し猫”が見つかるはず。
チョン・ジェウン監督は「猫はこの社会の変化を示す物差しだと思う」と言っていますが、映画を観ると、本当にうなずいてしまいます。いろんなメッセージを受け取れる秀作なので、ぜひ映画館へ足を運んでいただきたいです。
『猫たちのアパートメント』公開中
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/catsapartment/
監督:チョン・ジェウン
出演:トゥンチョン村団地に暮らす猫たち キム・ポド/イ・インギュほか
配給:パンドラ
©2020 MOT FILMS All rights reserved.
ペット探偵の凸凹コンビが猫探し『海岸通りのネコミミ探偵』
3本目に紹介するのは、湘南を舞台にしたユニークなバディムービー『海岸通りのネコミミ探偵』です。“ネコミミ探偵”というのは、猫好きにとってかなりのパワーワードではないでしょうか?
主人公は、その名も“猫塚照”で、演じるのはミュージカル「テニスの王子様」3rd.シーズンやミュージカル「刀剣乱舞」、舞台「キングダム」など、舞台をメーンに活動する牧島輝。バディ探偵の猿岡浩介役は、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」やTBS「陸王」など、舞台、ドラマ、映画などで活躍する和田正人が務めています。
湘南の浜辺でいなくなったペットの猫ミミちゃんの捜索を依頼しに、「ペット探偵猿渡」を訪れた猫塚は、ひょんなことから猿渡と2人で捜索を開始することに。無事に猿渡はミミちゃんを探し当てますが、そこで鈴俣夫婦(伊藤浩志・澁澤真美)と幸せに暮らしていることを知り、心優しい猫塚はそのままそっと見守ることにします。
ところが猫塚はペット捜査の報酬を猿渡に支払えず、仕方なく猿渡のペット捜索を手伝うことになります。そう、ここでペット探偵の凸凹コンビが誕生しました。その後、三浦裕太(菊池爽)という1人の少年が、「ペット探偵猿渡」を訪ねてきたことで、猫塚は裕太の猫・ゴン太探しを始めていきます。
本作には、タレント猫でおなじみのベーコンとぽんずが登場。2匹とも人間顔負けの演技をみせる売れっ子猫で、動物写真家で愛猫家でもある岩合光昭の初監督作『ねことじいちゃん』(19)や伊藤淳史主演映画『ねこあつめの家』などに出演し、好評を博してきました。今回も猫塚や猿渡と堂々わたりあう熱演ぶりに思わず拍手!
また、猫たちとともに、猫塚と猿渡がネコミミをつけるというおちゃめなシーンも猫好きにはたまりません。最後に物語はミラクルで幸先の良い結末を迎えるので、お正月に見るにはぴったりかと。今年もぜひたくさんの猫映画を楽しんでください!
『海岸通りのネコミミ探偵』公開中
公式サイト:https://nekomimi-tantei.com/
監督:進藤丈広
出演:牧島輝、和田正人、菊池爽、尾関伸次、徳井優、ベーコン(猫)、ぽんず(猫)/星野真里ほか
配給:ビデオプランニング
©2022「海岸通りのネコミミ探偵」製作委員会
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