犬の写真はたくさん撮っておくべき 人に見せるためではなく、自分のために
先代犬の富士丸、いまは保護犬の大吉と福助と暮らすライターの穴澤 賢さんが、犬との暮らしで悩んだ「しつけ」「いたずら」「コミュニケーション」など、実際の経験から学んできた“教訓”をお届けしていきます。
カメラに興味はなかったけれど
私はもともと写真を撮る習慣がなかった。興味がなかったからだ。71年生まれの昭和世代にとって、カメラはそんなに身近な存在でもなかったのだ。ひと昔前は手の届かない高級品だったかもしれないが、私が子どもの頃は1万円くらいで買える手頃な機種(当時はフイルム)もあった、と思う。そんな微妙な世代だが、カメラを持っている人はまだ少なかった。
父親はカメラを持っていたが、たぶん風景とか花ばかり撮っていたので、私の子ども時代の写真は驚くほど少ない。その後、高校生になる頃に「写ルンです」という画期的な使い捨てカメラが発売されたので、友達とキャンプへ行ったときなどにはそれで撮っていた。その程度だ。現像に出さないといけなかったし(現像されるまでどんな写真か分からない)、今よりはるかに面倒臭かったのだ。
そんな私が、初めて自分のカメラ(デジカメ)を買ったのは2005年のことだ(その頃にはデジタルカメラが普及していた)。理由はただひとつ。富士丸を撮るため。しかも、富士丸の成長を記録に残したいというピュアな気持ちからではなく、ブログのために必要だと感じたからだ。
ただ単にブログのために始めてみたら
当時、ライター兼編集者見習いとして関わり始めた雑誌があっけなく廃刊になったので、文章の練習のためにブログでも初めてみようかなと思ったのがきっかけだった。『富士丸な日々』というタイトルにしたのは、広い範囲で毎回ネタを考えるのは大変だけど、犬との暮らしについて絞れば楽かなと思ってのことだった(「ひとりと一匹(小学館文庫)」には書いたが、裏テーマも一応あった)。
そこで、実際にブログを始めてから、改めてその当時人気だったペットブログを巡回して分析してみたところ、どれも素人目に見ても写真がきれいだった。「そうか、文章だけでなく、写真も重要なのか」となり、手頃なデジカメを買うことにしたのだ。しかし、手頃なコンパクトデジカメだと画像が粗い(当時)ことが分かった。そこで仕方なくデジタル一眼レフを買い、3年ぐらい経つと新しい機種に乗り換える、という流れで今に至る。
若い人は「そんなの、スマホで撮ればいいじゃん」となると思うが、当時はスマホなんてなかったのだ。携帯にカメラ機能も付いていたが、画像は粗いし使えたものではなかった。だから仕方なくカメラを買ったのであって、今ならスマホで十分といえば十分である。
撮っておいて良かったと、今は思う
ブログのためという軽い気持ちで写真を撮ることが習慣になったが、今では良かったと思っている。なぜなら、「記録」としてその姿を見ることが出来るからだ。もちろん頭の中の「記憶」としては残っているが、実際に写真を見ると「あぁ、これはあそこへ遊びに行ったときだった」という情景や、そのときのことがよみがえる。これは写真を撮っているときには想像もしていなかったことだ。
当時は、ただなんとなく「後で使えるかな」くらいの感覚でシャッターを切っていた。でも彼がいなくなって13年経つ今、富士丸が写っているすべての写真を撮っておいて良かったと思う。後悔していることといえば、2002年に富士丸を迎えて、その後ブログを始めるまでほとんど写真を撮らなかったことだ。子犬時代の写真は、数枚しかない。いっぽう、ブログを始めてからの写真は数万枚はある。あぁ、最初からもっと撮っておけば……。
自分が見るためだけでいい
ピントがずれていたって、なんのことはないたわいない日常だって、人が見たらどうでもいい写真でも、私にとってはかけがえのない写真になっている。死ぬまで大切にしたいと思っている。
スマホで十分だとは思うが、私は今もデジタル一眼レフで撮っている。別にこだわりはないし、プロカメラマンが使うような上位機種を使っているわけでもない。ただ、明るさとかシャッタースピードなどをすぐイジれるので楽だから使っている。
そして、大吉と福助以外を撮ることは、ほぼない。出かけるときは、大福のためだけに重たい一眼レフを持ち歩いている。でもそれが習慣になっているから苦でもない。だから大吉と福助の写真は、子犬時代からバッチリある。成長してからも、後で振り返ると毎年すこしずつ表情が変わっていることに気づく。それがまた面白い。
そんなわけで、私としては犬や猫と暮らしている人は、なるべくたくさん写真を撮っておくことをお勧めする。その場合、きれいな写真とか、そんなことはどうでもいいと思う。今はスマホもあるし、撮ろうと思えばすぐ撮れる。だから撮っておこう。私がそうだったように、写真に残しておくと後で良かったと思うときがきっと来る、と言っておきたい。
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