保護活動におけるノウハウを明文化。プロのアドバイス、法的文書テンプレートなども提供している
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1年がかりで制作した「保護活動マニュアル」初公開! 日本の犬猫たちを救いたい

 公益社団法人「アニマル・ドネーション(アニドネ)」代表理事の西平衣里です。私たちは動物のためのオンライン寄付サイト「アニドネ」を通じて、日本の動物福祉を世界トップレベルにするべく日々活動をしています。この度、新情報コンテンツを公開しました。制作に関わったスタッフの想いとともに、保護活動をどう変えていきたいかをお伝えします。

(末尾に写真特集があります)

構想から約1年かけて、現場ですぐに使えるマニュアルを目指した

 アニドネは中間支援組織です。主たる事業は寄付による助成支援です。しかし寄付金を届けるのと同じくらい大切な活動は、情報による後方支援です。地域の深刻な問題に立ち向かっている保護団体さんの困りごとを常日頃キャッチし、少しでも解決できるよう尽力しています。

 世の中には保護関連の在り方という観点からまとまった資料があまりなく、であれば、中間支援組織であるアニドネで提供すべきでは、と考え作ったのがこのマニュアルになります。

 制作にはたくさんのアニドネスタッフが関わってくれました。中でもディレクション担当の2名は、自身でも保護活動をライフワークにしています。それもあり、「概念だけを提供するものではなく現場で即座に使えるマニュアルにしたい。そのための情報はなにか?」と考え、情報をわかりやすく、見やすいようにと作ったマニュアルになります。

保護活動の工程や大変さを知ることができる

 このマニュアルは、保護動物を迎えるために検討をしている方、保護活動を支援したいと思っている方や企業にも、役立つ内容になっています。実際、文字数が多くて読破するには気合いがいることは否めないのですが、それくらい行き場のない命を救うということは、知るべきこと、やるべきことが山ほどあり、それが命と向き合う保護活動なのです。大切な命をつないでいくことは、動物の環境や健康面から、関わるボランティアさんたちの苦労やメンタル、新しい飼い主さんとの契約まで、簡単ではない命のリレーなのです。

マニュアルは犬と猫で分かれており、過程ごとにコンテンツも別になっている

マニュアル制作ディレクター、2名の想い

 リーダーはアニドネWEBディレクターの山本和子さんと岡部有里さんという、2名のディレクターが保護活動マニュアルの意義に賛同し制作してくれました。忙しい本業の合間をぬって世に出したマニュアルについて、お話を聞かせてくれました。

―工夫をしたポイントは?

山本さん:「犬猫で切り替えて、かつ保護から譲渡までの過程ごとにコンテンツを分け、すぐ欲しい情報に行きつくように構成しました。私自身、犬の保護活動をしている経験を活かして、実践ですぐ使えるようなポイント、注意点を入れることに注力しました。具体的な工夫としては、法律がからむ書類などは、弁護士の先生に監修をしてもらったテンプレートも用意しつつ、現場で活動している団体やプロの先生方のアドバイスを入れました。読み物というよりは、すぐに使える生きたマニュアルにしたかったということです」

アニドネWEBディレクターの山本和子さん。愛犬の花ちゃん、梅ちゃんと。広告編集を本業に持ちながら、ペットシッターの仕事も。犬との暮らしをきっかけに犬の比率が高い人生展開に

―保護活動マニュアルで何を変えていきたいですか?

岡部さん:「意外にも、保護活動されている方同士は横のつながりはなく、あれこれ聞ける関係になかったりします。『自分たちはこうしているよ』『こういうトラブルに巻き込まれたことがあるから注意が必要だよ』など現場の声でマニュアルをアップデートしていき、このマニュアルがハブとなって保護活動の成熟に繋がればと思っています。また、マニュアルを読むと、保護活動と一言で言っても、さまざまなプロセスがあることがお分かりいただけると思います。マニュアルを開かれた状態にすることで、保護活動は一部の特別な人がやるものではなく、何かしたいと思った方が一部分でも挑戦するための後押しとなったら嬉しいです」

―マニュアル制作に対する原動力は?

山本さん:「私自身、預かりボランティアをやり始めた当初、簡単な流れの説明書はあったものの、それぞれの工程の詳細が分からないため、困ったら都度、先輩に聞いてという状態でした。そもそも保護活動全体の流れが分かっていなかったので、どこから引き取るのか、動物病院で何を見てもらうのか、面会では何を聞くのかなど、一つひとつ確認して自分の中で全体図を作っていくという作業を行うことで、やっと保護活動の全容がつかめた気がします。1~2年ぐらいはかかりました。ですので、一連の流れがわかるマニュアルがあることで、日本全体の保護活動がステップアップし、アニドネが目指す『日本の動物福祉を世界トップレベルに』も夢ではないと信じ、制作を進めました」

アニドネでリサーチャーさんとしても活躍する岡部有里さん。生後0日で保護され家族に迎えたもぐちゃんと。自宅のテラスにしつらえた猫専用ベランダcatioにて!

―今まで活動をしてきて、心に残っていることは?

岡部さん:「7年ほど前に最愛の愛猫を突然失いました。猫白血病(Felv)の子で、いわゆるペットロスに陥ったのですが、そこから救ってくれたのはFelvキャリアの双子の姉妹猫でした。私の保護活動への原動力は、この子たちとの約束を果たすためかもしれません。Felvキャリアのように何かしらハンデを持っている子、ゴハンがなくゴミをあさる子、突然家族を失った子……みんなちゃんと、最後まで幸せになる権利があると思います。保護活動マニュアルが活用されることによって、幸せな犬猫が増えたら、と思っています」

今後も成長していくマニュアル

 今回初公開しましたが、今後も成長していくのが、このマニュアルの特徴だと考えています。日本の動物福祉は過渡期だと感じています。法改正などを含め、動物を取り巻く環境の変化に併せて、随時マニュアルを更新することで、保護団体やボランティアさんがスムーズな活動を行うサポートが出来ればと思います。

 また、加えていきたいコンテンツはすでに案としてあがっています。例えば、海外の保護活動を紹介することも有意義ですね。世界的にネットワークのある保護団体の譲渡条件を見ると、軽く50を超える条件があることも。また、ヨーロッパの動物団体ではアプリを使って地域猫の管理をしています。海外だけではなく、日本で活動する団体さんが直接投稿できる仕組みもやってみたいことのひとつ。リアルな声ほど役立つ工夫はないでしょう。

 このマニュアルで、保護活動自体が成熟し、幸せな犬猫たちがもっともっと増えれば、マニュアル制作の苦労も吹っ飛びます!ぜひ一度見てみてください。
アニドネ保護活動マニュアル

(次回は11月5日公開予定です)

【前の回】意見をください! 1周年を迎えたAWGs(アニマル・ウェルフェア・ゴールズ)

西平衣里
(株)リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊メンバー、クリエイティブディレクターとして携わる。14年の勤務後、ヘアサロン経営を経て、アニマル・ドネーションを設立。寄付サイト運営を自身の生きた証としての社会貢献と位置づけ、日本が動物にとって真に優しい国になるよう活動中。「犬と」ワタシの生活がもっと楽しくなるセレクトショップ「INUTO」プロデユーサー。アニマル・ドネーション:http://www.animaldonation.org。INUTO:http://inuto.jp

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この連載について
犬や猫のために出来ること
動物福祉の団体を支援する寄付サイト「アニマル・ドネーション」の代表・西平衣里さんが、犬や猫の保護活動について紹介します。
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