ハローキティと一緒に地域猫について考えよう CMに込めた思いとは

新たなキャンペーンCMのポスター(日本動物愛護協会提供)

 ACジャパンが、公益財団法人「日本動物愛護協会」の活動を支援するキャンペーンCM「HELLO 地域猫!」が7月1日よりスタートしました。「にゃんぱく宣言」「犯罪者のセリフ」「一目惚れ」に続く第4弾です。外で暮らす飼い主のいない猫について考える内容で、耳カットについても伝えています。CMにはおなじみキティちゃん(正式名称はハローキティ)と、耳をカットされた猫が登場。日本動物愛護協会の常任理事で事務局長の廣瀬章宏さんに、CMに込めた思いを聞きました。

キティちゃんが地域猫をお世話?

――まずは、CMテーマを「地域猫」とした背景などを教えてください。

「耳カットをした猫、と聞いてピンとくる方はどれくらいいらっしゃるでしょう?動物愛護に携わったり、関心が強い方には、それが外で暮らす猫に対して施した繁殖制限の証しであることがすぐにわかると思いますが、一般の方にはまだ浸透しておらず、『なぜ耳が切れているの?』と思う方も多いのです。そこで、地域猫について広く知ってもらいたいと思いました。地域猫活動がしやすくなり、猫もなるべく生きやすくなる世の中になってほしいというのが、今回のCMの趣旨です」

――キティちゃんの登場にはびっくりしました。

「世界的に子どもからおとなにまで人気のあるキティちゃんに、地域猫・地域猫活動を知ってもらうために登場してもらいました」

――耳カットされた猫も登場します。ポスターでは耳がハートで強調されていますね。

「今回、地域猫として、新しいキャラクターの耳をカットした猫も作成してもらいました。じつはそのキャラクターは、以前、日本動物愛護協会の事務所近くの公園に住み着いた猫がモデルなのです。たまに舌をしまい忘れるので私は『ぺろちゃん』と呼んでいましたが、関わった方から様々な名で呼ばれ、みんなから可愛がられていました」

CMの新キャラのモデルになった耳カットされた猫(日本動物愛護協会提供)

外の猫も世話する人も優しく見守ってほしくて

――今回のCM作りで重点を置いたのはどんなことですか?

「(耳カットや、繁殖制限について)どういう言葉で発信すれば、多くの人にすっと届くのか、心をくだきました。私が今回最もこだわったのは、『優しく見守ってくださいね』という言葉を入れることでした。優しく見守るというのは、飼い主のいない外で暮らす猫、そのお世話をする人、どちらに対しても当てはまる言葉です」

――地域猫活動について、あらためて説明していただけますか?

「世の中には猫の好きな人、苦手な人、どうでもよいと思う人が混在します。猫好きだからといって猫だけを中心に考えるとトラブルが起きます。苦手だからといって虐待などを行うと、動物の愛護及び管理に関する法律により罰せられます。地域で話し合いを行い、飼い主のいない猫のお世話をして管理し、人と猫が共存する優しい地域を目指す。それが地域猫活動です」

――外の猫の世話をする人が、周囲から苦情を受けるという話を聞いたことがあります。

「賛否があることは承知しております。活動する人が罵声を浴びせられた話も耳にします。もし何もしない状態で、外に暮らす猫や生まれた子猫をすべて幸せにできるのなら、活動は不要なのです。でも現実は、手を打たないと旺盛な繁殖力により猫が増えすぎて、殺処分や交通事故の増加につながってしまいます。猫が増えれば、庭を荒らされたり糞尿(ふんにょう)の被害の確率も増えて、苦手な人にとっては耐え難いことになるのではないでしょうか。この活動は、猫が嫌いな人のためのものでもあるのです」

来年6月末まで、駅などで広告も展開される(日本動物愛護協会提供)

地域猫活動はベストに近いベターな方法

――現在、犬猫の殺処分の8割が猫で、そのうちの6割以上が子猫だそうですね。こうした殺処分、交通事故、近隣住民とのトラブルを減らすことが地域猫活動の目的なのですね。

「活動を通し、将来的には飼い主のいない猫を無くすことが目的です。すべての猫が飼い主さんにめぐりあうのがいちばんいいのですが、現状ではどうしても外で生きないといけない子たちもいる。すべての猫を幸せにできるのがベストと考えるなら、地域猫活動はよりベストに近いベターな方法だと思います。だから、猫のことも、世話する人のことも優しく見守ってほしいのです。もちろん『繁殖制限をほどこす』『きちんと餌やり』『トイレの設置と掃除』までして管理することが大切ですから、無責任な餌やりだけでは地域猫活動とはいえません。そのことを、活動をする方へも、今いちどお願いしたいです」

――余談ですが、キティちゃんは、猫ではないのですよね。サンリオの公式サイトには、誕生日は11月1日、明るくて、優しい女のコ……とあります。

「じつは私自身、キティちゃんを猫だと思っていたので、最初にCMの案を頂いた時、『猫が猫のお世話をするの?』と驚きました。スタッフから『キティちゃんは猫ではない、女のコですよ』と言われたのですが、知らないのは私だけでしょうか(笑)。いずれにしても、このCMが、多くの皆さまに届き、地域猫のこと、地域猫活動、ひいては猫の幸せについて考えるきっかけになればありがたいです。CMやポスターは、来年6月末までテレビ、ラジオ、新聞、駅張り広告などで展開されます。ぜひ、心にとめてほしいです」

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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