はじめて保護した子猫はノミだらけ 母猫のTNRはできるだろうか
サーフィンやスケボーが得意な愛犬コーダと保護猫フィーユ、ガロと暮らすドッグトレーナー浅野さんの犬猫日記。第5回は、はじめて猫を保護した後の猫をとりまく環境や人間関係で直面したトラブル、捕獲後のお話です。
保護した猫を洗ったらノミだらけ
猫の保護活動をするきっかけとなった、親戚による「猫への無責任な餌やり」を目撃。
計画的な餌付けのかいがあり、母子ともに捕獲に成功し、翌日、西日暮里にあるトリミングサロンWANBOへ向かいました。保護活動家のWAKAさん(猪野わかなさん)のお店です。
母猫の避妊手術はまだ少し先になるということで、その時は子猫たちのシャンプーと駆虫薬だけ。気が立つ子猫を、バスタオルが洗えるくらいの大きい洗濯ネットに入れて洗います。
足をつまみ、ネットの網目から爪を出して素早く爪切り。WAKAさんは早い! たぶん私が愛猫の爪を1本切るくらいのスピードで、すでに足1本終えている! トリマーさんの鮮やかな技を目の前で見せてもらえて感激でした。
子猫はずっと洗濯ネットに入れたまま、タライにお湯を入れて、シャンプーを泡立てながら洗い、タオルで拭いて、ドライヤーで乾かすところまでします。乾かすのなら私にも出来そうなので、やらせてもらいました。
ネットの上からだとかまれないし、ひっかかれません。だけど、子猫はたぶんすごく怖がっていて、震えながらもがき、逃げようと必死になっていました。
とはいえ、子猫を洗ったタライのお湯は真っ茶色です。お湯の中にはたくさんのノミが浮いています。シャンプーをしても体についたノミはなかなか取れないため、ノミ取りコームで毛をときました。それでも取れない場合は、手術用で使うはさみのような形をした鉗子(かんし)を使うそうです。
「これがメスのノミ。薄茶色の卵を持ってる。これがオスのノミ。小さい」そんな事を教えてくれたWAKAさん。
ドライヤーで乾かした後は、ノミ・ダニなどの寄生虫駆除薬を首に垂らして、クレートに入れました。
母猫はそのまま預かっていただき、避妊手術の翌日に迎えに行くことに。
私は子猫たちだけを家に連れて帰り、すでにセットしてあった仮家の三段ケージに入れたら、しばらくクレートから出てこず……。のぞくと威嚇してくるのでそっとしておくことにしました。
保護活動には責任と覚悟が必要
母猫の避妊手術の日。避妊手術と一緒に耳をV字にカットして、さくら耳の猫にしてもらいました。TNR(TRAP[トラップ/捕獲]、NUTER[ニューター/不妊・去勢]、RELEASE[リリース/元の場所に返す]の頭文字]をするためです。
一代で天寿を全うする「さくら猫」にすることによって、捕獲されたり、保健所に連れていかれて駆除されない猫になれます。
避妊手術や検査などを含めた医療費は自腹で払います。WAKAさんとお付き合いのある動物病院で手術をしていただいたので、多少費用は抑えられましたが、それでも数千円でできる話ではありません。保護猫だからといって、動物病院が無料で手術をしてくれたり、保護活動家や団体がお金を出してくれるわけではないのです。
だから、保護活動をしている人や団体に、気軽に「猫を保護して!」と言って、助けたような気になるのは間違いなのですね。
手術や薬、麻酔を使うのにはお金がかかります。それもあって保護活動をちゅうちょする人がいるのも現実。前回書きましたが、私が県の愛護課の窓口の人から「自分で飼わない猫を保護するのなら捕獲機は貸せない」と言われたのも、今となってはその理由がわかります。
保護活動は、助けると決めたら、途中で投げ出さないで、責任を持つ覚悟が必要です。しかしながら、責任と覚悟さえ持てれば、誰にでも出来ることなんだともわかりました。私でもできたからです。
また、「もとの場所に返さないで、家で飼えないのだろうか」という考えが頭をよぎりましたが、野良猫はそう簡単に人になれないようです。
自分からすり寄ってくるような子でない限り、ストレス下におくことになります。私はトレーナーなので、なれるようにトレーニングはできますが、トレーニング知識を持った人が少ないことを考えると、一般的にはリリースがいいのではと思います。
母猫を元の場所に返す
母猫を迎えに行く日に合わせて、子猫の1回目のワクチンもする予定でした。段取りをしていただいていたのに、あろうことか私は、うっかり子猫を連れていくのを忘れるというドジをしてしまいました……。獣医さんは笑って許してくれましたが、大変申し訳ないことをしてしまいました。
結局、子猫たちのワクチンは、地元の獣医さんにお願いすることにして、保護猫だろうが家猫だろうが知ったこっちゃないと、通常の病院価格で3匹のワクチンを済ませました。
手術を終えた母猫を車に乗せて帰って、いよいよTNRのR(元の場所に返す)がやってきました。
親戚の家の庭にいた猫なので、そこにリリースする段取りで、ちょうど縁側にいた親戚に、母猫の避妊手術をして帰ってきたよと伝えたそばから、チッチッチと舌を鳴らして「ミー、ほら、おいで」と、今食べていた総菜をつまんでこちらに投げようとしました。母猫は、逃げるのに精いっぱいで食べ物は食べません。
「今何あげようとした?人間の食べ物じゃなくて、あげるなら猫用のフードをあげてよ」と言った瞬間、親戚の形相が変わりました。声を荒らげながら文句を言い、開けていた網戸と窓をバンバンと閉められました。
そもそも庭に居着かせたのはこの人。居つかせてしまった責任を取って、野良猫を保護しようという事になっても、自分は庭にいる猫の家族にただ餌をやりたいだけ。可愛い子猫が将来どうなろうと、今餌を食べている姿が見たいだけ……。
気分が悪いなか、母猫を親戚から見える庭ではなく、敷地の静かなところにリリースしました。
WAKAさんには事前に、「クレートからリリースする瞬間、さくら猫は真っ直ぐ走って行く」と聞いていたので、車などの危険がない場所でクレートを開けたのに、母猫はクレートから出た瞬間、なんとUターンして、子猫たちを探して鳴き初めてしまったのです。
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。