庭に母子4匹の猫が居着いていた 初めての保護活動で手に汗を握る
サーフィンやスケボーが得意な愛犬「コーダ」と保護猫「フィーユ」「ガロ」と暮らすドッグトレーナー浅野さんの犬猫日記。第4回は、猫の保護活動をするきっかけとなった、庭にやってきた母猫と3匹の子猫を保護したお話です。
「さくら猫」「TNR」を知って欲しい
こんにちは。犬と猫と暮らすドッグトレーナーの浅野です。桜が咲くこの時期になったら「さくら猫」の存在を色々な人に知っていただきたく、SNSなどで発信することにしています。
「さくら猫」は片方の耳の先をV字形にカットしている猫のことで、耳の形が桜の花びらの形に似ていることから「さくら猫」と言う名前で呼ばれています。お家のないノラ猫を捕獲して、不妊・去勢手術を施したことが一目で分かるように、耳の先をカットし、元居た場所にリリースします。繁殖しない「さくら猫」は保健所の捕獲対象から外れ、殺処分を免れて一代の生を送ることができます。
その活動は、TRAP(トラップ/捕獲)、NUTER(ニューター/不妊・去勢)、RELEASE(リリース/元の場所に帰す)の頭文字をとって、TNR活動と呼ばれています。さくら猫はTNRされた猫と言う意味になります。
地域猫として、お水やご飯の世話をしてもらえる猫はまだマシですが、それでも外の世界で生きて行くことは猫にとって過酷です。交通事故にあったり、他の猫とけんかをしたり、人間に虐待されたり、うちの子みたいにもう二度と治らなくて3年以内に死んでしまう確率が80%と言われている白血病やエイズに感染したり、寄生虫に寄生されたり、運悪く捕獲されて飼い主が見つからずセンターで殺処分されてしまったり、冬は凍えて、夏は暑すぎて……。
人とお家の中で暮らした方が、確実に幸せになれます。また、お家で飼われていても、屋外での放し飼いではこういったリスクがあるのです。
それでも中には人の存在や、人との暮らしに慣れない猫もいます。それから、保護をする側のキャパシティーの問題も。譲渡先は簡単に見つかるものではないし、誰にでも猫を飼育できるわけではありません。
無責任な餌やりに気づいた
以前の私は、犬猫の保護活動をする人は雲の上の存在だと思っていました。
犬や猫の保護活動している方を尊敬していて、頭が下がる思いでしたが、実際に何をしているまでは知りませんでした。きっと殺処分になる犬や猫を愛護センターから引き出し、多頭飼育崩壊やブリーダー崩壊などのネグレクトから救う、保護施設や自宅でお世話をして譲渡するまでの活動をしている人たちなんだろうなと。とにかくすごい、自分には真似できないと思い込んでいました。
そんなある日、親戚の家の庭に子猫がよく来ると言う話が耳に入りました。見に行くと、母猫と子猫3匹が庭で転げまわって遊んでいて、とても可愛いのです。
「親猫がいるなら子猫は大丈夫だから放っておこう」と、その時の私は思いました。
子猫と母猫は頻繁に庭に来ているようでした。何げなく見ていたら、親戚が窓から夕飯の総菜を猫たちに向かって投げていて、それを食べさせていたのです。親戚が餌付けをしていたから、猫が庭に猫が来ているということが分かりました。
ノラ猫にむやみに餌を与えると、栄養をつけ、繁殖して子猫が生まれ、さらにノラ猫が増えてしまいます。猫は他産なので、5匹産む事もあり、その5匹がまた5匹の猫を増やしたら、どうなるか……。保護活動に関わっていない私でも、そのくらいはわかりました。そして、人間用に味付けされた総菜は、猫にとって毒であるともいえます。将来的に内臓に影響が出るかもしれません。
今までノラ猫たちの事は見て見ぬふりをしてきましたが、今回は違います。身内に「無責任な餌やり」をしてもらいたくはありません。そこで、保護する事を決めました。
捕獲は素人の私にできるのか
母猫はTNRをして、子猫は保護・譲渡をするつもりとだと親戚に話し、餌は猫用の物を買って用意し、それを食べさせてもらうことにしました。今回の餌やりは「無責任な餌やり」ではなく「捕獲計画のための餌付け」です。
そして当時はまだ「猫の捕獲器」を持っていなかったし、そういった活動を今後も続けていくか考えていなかったので、行政から捕獲器を貸してもらって捕まえようと、問い合わせましたが、「保護した人が家で飼うという条件なら捕獲器を貸せるが、捕獲して譲渡先を探したり、TNRをして地域に戻す場合は、他の人に責任を押しつけることになるから貸せない」という返答でした。
私がやろうとしていることは他の人の迷惑になるの? 押し付けることになってしまうの? と心が揺れていました。
でも、猫の捕獲計画は実行中。計画的に仲良くなって、警戒されないための餌づけしているから、絶対に失敗できない。このままだと私が原因で、ノラ猫を健康的に太らせて、更に繁殖させてしまいます。捕まえなければなりません。
ノラ猫たちを捕獲する
友人の紹介で知り合った、保護活動をしているトリミングサロン「WANBO」オーナーの猪野わかなさんに相談してみました。猪野さんはサロン経営の傍ら、保健所から保護犬や保護猫を引き出して譲渡先を探したり、TNRをしたり、ボランティアでトリミングもして……と意欲的に活動されている方で、お忙しそうだから連絡はばかれるところだけど、そうは言ってられない、と思い切りました。
いきさつと猫の人慣れ具合などを話したところ、即、「では捕獲しましょう」となり、そんな決まった日程で捕獲できるものなのかと狼狽(ろうばい)しました。
よくよく聞くと捕獲の日を決めておくのは、獣医さんに捕まえた母猫の避妊手術の予約をするためで、母猫の精神的負担を減らすためでした。
結局、猪野さんのお手を煩わすのもなんなので、自分でやることにしました。猪野さんから、「捕獲器ではなくクレートで捕まえると負担が少ない」と教えてもらった通り、小型犬用クレートの扉を取った状態で、奥にご飯を置いて食べさせること2日間。
3日目には、クレートの扉を半分つけて奥にご飯。その間私は、猫たちのそばでスマホいじったり、車を片付けたり、できるだけ驚かせないように、でも視界に入れつつ、猫にはご飯とお水をあげて、“お世話はするけど接触することには興味ない人”というスタンスを貫きました。
迎えた4日目。本番の朝は5時に起きてご飯をクレートに置きに行きましたが、猫たちは起きていたけどクレートに入りません。私は引き続き、出たり入ったり、食べ物を足したり、クレートの隣に座ってスマホいじりの人になります。そして、子猫たちがご飯を食べ終わり、ついに母猫がご飯を食べに入りました。
尻尾がちょっと外に出ていたので若干迷ったけど、素早く扉を閉めて、母子2匹捕獲。猫相手にこんなに心臓がドキドキしたのは初めてでした。
まだ捕獲前の2匹の子猫は、少し遠くで遊んでいたから、母猫と兄弟猫1匹が捕獲されたことに気づいていません。母猫が鳴き出してもクレートに入っているから、触れられないことに困る子猫たち。
クレートのまわりを行ったり来たり、上に乗ったり、鳴いたり……。子猫たちがあまりにもかわいそうで、私も泣きそう。その後、愛猫フィーユのクレートを引っ張り出してきて、1匹を捕獲。午後には愛犬コーダのクレートで、最後の1匹を捕獲しました。
その日のうちに全匹保護できたので良かったです。誰も路頭に迷わせずに済みました。
初めて猫を捕獲してみて、猫をとりまく環境や、さらには人間関係にも気を配らなくてはならないことに気づきました。次回は、直面したトラブルへの対処、捕獲後は何をしたのかと書いていきたいと思います。
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