(画像提供:ライオン商事)
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春からはじめる新習慣!愛犬・愛猫のお口のケア 2歳を過ぎると7~8割にトラブル

 ペット保険会社の統計でも、ペットに多いのが「口の中トラブル」。歯周病が悪化すると、その他の病気の原因になることも! 予防すべきなのはわかるけれど、何から始めたらいいのかよくわからない……。そこで、ペットのオーラルケアに詳しい獣医師・遠山洋美先生に話を聞きました。

監修:遠山洋美 獣医師
麻布大学修士課程卒業。日本小動物歯科研究会会員。大学卒業後、動物病院にて犬・猫の診療に従事。その後、ライオン商事株式会社において、ペットの歯みがきセミナーの実施などペットのオーラルケア普及に努め、ペットのオーラルケア製品の開発にも携わっている。

2歳過ぎた犬猫の7~8割に口のトラブルが?

 お話を伺ったのは、獣医師で日本小動物歯科研究会会員でもある遠山洋美先生。ライオン商事株式会社でペットの歯みがきセミナーなどを行い、オーラルケア製品の開発にも携わっています。

「2歳になると、犬で約80%、猫は約70%に、何らかの口腔(こうくう)トラブルがあるという報告があります(世界小動物獣医師会調べ)」

 そんなに若いうちから、そんな確率で? 口の中のトラブルが起きやすい犬や猫はいるのでしょうか?

「小型犬や超小型犬はトラブルが発生しやすいですね。下の図のように、犬・猫・ヒトで歯の本数も生え方も違います。小型犬はとても口が小さいのに、歯の本数は大型犬と同じ。歯の大きさも、大型犬と比べて極端に小さいわけではないので、どうしても歯と歯の間が狭く、汚れがよりたまりやすいんです」

※イヌの場合は犬種や個体によって歯の数が少ないことがあります(画像提供:ライオン商事)

人間の約5倍の速さで歯石ができる?

「歯垢(しこう)が歯石に変化するのにかかる日数は、人間は約25日ですが、犬はなんと3~5日!猫も1週間ほどだと言われています。ちなみに犬や猫にはほとんど虫歯がなく、深刻なのは歯周病なんです。

 歯垢や歯石を処置せずに放置すると、やがて歯茎が炎症を起こし、歯周病の原因になります。悪化すれば、問題は口の中だけに納まらず、全身に影響が出る場合もあるので注意が必要です」

犬は3~5日、猫も1週間ほどで歯石ができる(画像提供:ライオン商事)

歯石ができるとさらに歯垢が蓄積して悪循環に。歯垢ができる前に歯みがきをしましょう(画像提供:ライオン商事)

口の中のケア「はじめの一歩」は?

 では、口の中のケアは何から始めたらいいのでしょう? 遠山先生に進め方を教えていただきました。

  1. スキンシップしながら口のあたりにそっと触れ、触られることに慣れてもらう。
  2. 触れても大丈夫なようなら口の中を見てみる。ただしこじ開けるのはNG。唇をめくって歯や歯茎を見たり、指先で触れる程度に。
  3. 口の中に触れるようになったら、歯みがきシートやガーゼ、シリコーン製の歯みがきサックなどを指に巻いて、軽く歯をなでる・こする。これだけで汚れや歯垢を落とすことができる。
  4. 指先での軽いこすりみがきに慣れてくれたら、ペットの専用歯ブラシと歯みがきジェルを使ってみる。

犬の口元に触れる
まずは口のあたりに触れる程度からはじめよう。新たに家族に迎えた子なら、まず環境と人間に慣れてもらうのが先決。仲良くなる過程で、自然に触れるようになるのがベスト(画像提供:ライオン商事)

 大切なのは「ちょっとでも嫌がったら、すぐにやめること」。そして「できるだけ子犬・子猫のうちから習慣づける」ことだといいます。

「『嫌なこと』として刷り込まれてしまうと、飼い主さんとの関係性がこじれてしまうこともあります。触らせてくれる子・くれない子の個体差もありますし、無理のない範囲で少しずつ。ごく短時間にとどめましょう。そのためにも社会性が発達する前の、子犬・子猫の段階から始めるのが一番。歯がきれいなうちから始めておけばより有効ですし、口元に触れやすい子にしておくと薬を飲ませる時にも楽ですよ」

猫の歯磨き
猫は一度嫌な思いをすると、二度とさせてくれなくなる可能性もあるので慎重に。機嫌がいいときを見計らうとか、お昼寝などでうたたねしているタイミングがチャンス!(画像提供:ライオン商事)

■ペットの歯みがきのポイントは以下の通り!

・嫌がったらすぐやめる、ごく短時間にする
一度に全部みがこうとしないことです。今日は右上だけ、今日は左下、とローテーションして3日で全体がみがける程度にしてもいいでしょう。

・みがく頻度は3~5日周期で
歯垢が歯石に変化するサイクルに合わせて繰り返す。

・うまくできたら、うんとほめて、ご褒美のおやつを少しあげる
ご褒美がセットになることで『いいこと』『うれしいこと』として刷り込まれる。ただし、うまくできたときだけ・直後にほめながら与えること! 

・力を入れ過ぎない、歯ブラシは柔らかいものを
犬の歯茎は人間以上にデリケート。ついついきれいにしなくちゃ!と力が入りがちだが、ごしごしこすらないこと。歯ブラシは毛先が細く柔らかいものを選び、歯垢や歯石が付きやすい、歯と歯茎の溝(歯周ポケット)を中心に優しく。

歯ブラシを使う
歯ブラシは毛先が細くて柔らかいものを。力を入れず、歯の側面と、歯茎と歯の間の溝を軽くこするように(画像提供:ライオン商事)

知っておきたい! 誤解だらけのオーラルケア

誤解1:硬いおもちゃをかむことで歯が強くなる、自然にみがかれる?

 硬いおもちゃをかんでも、歯が鍛えられるということはありません。犬や猫のかみ合わせは上下の歯がハサミのように交差するようになっています。そのため、あまりに硬いものをかむと、上の歯にかかる力が外に向いて、歯が折れたり欠けたりすることも!

 おもちゃをかむことで歯の汚れがこすれて落ちることはもちろんありますが、歯垢や歯石がたまりやすい生え際や奥歯にまで届かないなど、ケアとしては不十分。歯みがきと併用するようにしましょう。

誤解2:歯の黄ばみがとれないのはみがき方が悪いから?

 歯茎付近の黄色い汚れはすでに歯石になったもので、どうがんばっても歯ブラシや拭きみがきでは無理。動物病院で処置してもらわねば取り除くことはできません。一生懸命みがいて力を入れ過ぎると歯茎をいためる場合もあります。気になる場合は動物病院に相談を。

ペットの健康を気遣えるのは飼い主だけ

「トラブルが始まった時、一番わかりやすいのは口臭です。においが強くなってきたな、と思ったら要チェック。そのほかにも『食べにくそうにしている』『よだれが多くなった』『前脚によだれや血がついている』『前脚で口元をこする』などが見られたら、さらに症状が進んでいるかもしれません。動物病院を受診するようにしましょう」

 言葉が話せないペットたちの健康を気遣ってあげられるのは飼い主だけ。まして口の中のトラブルは気づきにくいものです。できることから少しずつ。新しい習慣を始めてみませんか?

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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