愛犬の一番の理解者になりたくてドッグトレーナーに 信頼関係そして知識と準備が大事

 サーフィンやスケボーが得意な愛犬「コーダ」と保護猫「フィーユ」「ガロ」と暮らすドッグトレーナー浅野さんの犬猫日記。新連載スタートです。

(末尾に写真特集があります)

先代犬への後悔、あまりに違った愛犬コーダ

 はじめまして。イングリッシュコッカースパニエルの男の子「コーダ」と、保護した雑種猫の「フィーユ」「ガロ」と暮らす、ドッグトレーニングインストラクターのアサノです。

 2011年にコーダを迎え、2019年にフィーユを。フィーユは当時ルームシェアをしていた友人が迎えたのですが、その友人の転職と引っ越しを機に、もともとお世話係をしていた私が引き取りました。そして去年の11月に保護した推定4カ月の雑種猫ガロが加わりました。

 コーダはサーフィンとスケボーとキックボードができることから、テレビや雑誌からお声がかかるちょっとした人気者になっています。今でこそ「おりこうさんですね」「天才犬!」と言ってもらえるけど、コーダが最初からおとなしくて、何でも素直に聞いてくれるおりこうさんだったら、私はドッグトレーナーにはなっていなかったと思います。

スケボー犬
スケボーをするコーダ

 私がドッグトレーナーになったのは「しつけ」の失敗からでした。

 おとなしかった先代のダックスフントとあまりにも違いました。

 今まで我が家では犬の「しつけ」なんて考えたこともなかったですし、当時私は学生で友達や遊びが忙しいお年頃で、犬の散歩にもほとんど行ったことがありませんでした。

 社会人になったある日、きまぐれに先代犬を連れて海にドライブに行った時のこと。今まで見たことがないような笑顔を初めて見ました。目が穏やかで、口の端っこが上に上がり、舌を出してニコニコ。「犬って笑うのか!」と驚いたのを覚えています。

 しかし仲良くなってから2年位で、先代犬はすい臓がんになり急に亡くなってしまいました。先代犬に対し、今まで何もしてこなかった事をものすごく後悔したので、「次もし犬を迎えるなら絶対に幸せにしよう!」と思いました。

保護猫
フィーユ

コーダに嚙まれ流血の日々、トレーニング法を探る

 そうして迎えたコーダ。

 子犬の頃から「早く賢くしよう」と思い、すぐにトイレ、オスワリ、フセ、マッテ、オイデを教えました。コーダはすぐに覚えてくれるし、なんて可愛くて賢いんだろうと、モデル犬事務所に登録までしてしまいました。親バカの溺愛(できあい)です。

 しかし体が大きくなるにつれて、パワーも強くなってきます。家具を嚙み、ドアは破壊し、留守番させると毎日部屋がめちゃくちゃ、甘嚙みが段々本気嚙みのようになっていき、手から流血する事も多々ありました。そして私はいつの間にか、毎日コーダを叱りまくっていました。

 カリスマドッグトレーナーのテレビ番組を見たり、しつけ本も色々読んで、インターネットも見ながら、ありとあらゆる「困った行動を罰する方法」をコーダに試しましたが、それらはその時は止められるけど、また同じことを繰り返すので、全然効果がありませんでした。お手入れの時も、叱った時も、遊んでいる時も、全部嚙んでくるようになりました。

 散歩では、コーダの舌が紫色になってゼーゼー言うほど引っ張ります。興奮して飛びつきも激しい。自己流ではままならないのでドッグトレーナーを雇って、勧められたチョークカラーをつけるようになってからは更に悪化。コーダが怒ってリードを嚙んでくるので、散歩になりません。

 一方で「オスワリ・マッテ」や「フセ・マッテ」「オテ・オカワリ」などの動きを教えた時はすぐに覚えてくれて、「マッテ・オイデ」では、どんなに距離をあけていても、ビシッとやってくれる……。コーダは教わることが好きなようでした。

 私が教えた事は上手にできて、当時、しつけ法として推奨されていた“困った行動を罰する”をすると、怖がったり逃げたり、うなって噛みついてきました。

 逆に、ほめてご褒美をあげる時だけはこちらの言う事を聞いてくれるので、それならと「ほめる」「しつけ」でネットを検索。まさにそれがターニングポイントでした。「ほめて教えるトレーニング」をする施設があり、叱ったり、脅したりしなくても、犬との関係を良くする方法があることを知りました。

ドッグサーフィン
今ではドッグサーフィンを楽しめるようになった

愛犬の一番の理解者になりたい!

「飼い主と一緒に学ぶ犬のしつけ教室です。愛犬の可能性を引き出しましょう」

 そのウェブサイトにはこう書かれていました。

 飼い主と学ぶ!? 愛犬の可能性!?

 この言葉をはじめて見て、目からウロコでした。犬だけじゃなく、飼い主も学ぶんだ!すごい!それは絶対行ってみたい。自分がドッグトレーナーになれば、コーダにとって一番の理解者になれるかも!

「ならば、ドッグトレーナーになろう」と、飛び込んで行ったことがきっかけで、今の私があるんです。

 人が学べば、犬も変わる。コーダとの信頼関係が築けたおかげで、ライフスタイルも趣味も犬と共有できるものに変わりました。今までやってみたかった事にどんどん挑戦するようになったのです。私の年齢的にはちとキツいことまで楽しんでいます(笑)。

「犬との関係が良くなって、人生そのものが明るく楽しくなっていく」
「家族で協力する事によって会話が生まれ同じ方向に向かって行ける」
「犬と楽しめる趣味が生まれる」

 これらを、私と同じように悩んでいる人に伝えたいと思うようになり、犬に教えるドッグトレーナーから人に教えるインストラクターになり、スクールを開業しました。

 開業時からたくさんの受講者様にレッスンを受けていただいて、レッスンの最後には最初にお越しいただいた時よりも、犬との関係が必ずと言っていいほど良好になっています。

ドッグスクール
スクールの様子

 行動の問題解決をして犬との関係を良好にする事や、家庭犬として身に着けておくべき基礎のトレーニングもしますが、スケボーやドッグサーフィンなどのアクティビティも教えています。また、ご家族と愛犬と一緒に「犬とキャンプ」をするイベントも好評です。

 趣味を一緒に楽しむには、まず信頼関係ができていてこそ。愛犬が困ることなく過ごせるように、知識と準備があることに尽きます。

 次回はそんな「犬とキャンプ」について書いていきたいと思います。

保護猫
「新入りのガロです」

浅野里実
千葉県習志野市のドッグスクール「Perrito」主宰。犬との暮らし方コンサルタント、ドッグトレーニングインストラクター。スクールでは動物福祉を優先し、オーナーの知識の向上による動物のQOL向上をサポート。応用行動分析学・心理学に基づいた科学的根拠のある効果的な方法でトレーニングし「正の強化」をベースにしている。イングリッシュコッカースパニエルのコーダと保護猫のフィーユ、ガロと暮らす。

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この連載について
ドッグトレーナーの犬猫日記
サーフィンやスケボーが得意な愛犬「コーダ」と保護猫「フィーユ」「ガロ」と暮らすドッグトレーナー浅野さんの犬猫日記。
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