愛猫の急な攻撃も慌てず叱らずクールダウン ひどい場合は動物病院へ相談を

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「急な攻撃」についての質問に、入交先生が答えます。

猫が急に飼い主や家族を攻撃する

 皆様から多くのご質問をいただけますおかげで、連載は18回、ご質問に答えるシリーズは第11回を迎えました。本当にありがとうございます。

 今回ご紹介するご質問は猫さんが急に飼い主ご家族に攻撃してしまう場合です。

 Q:穏やかで、甘えていた猫がある日突然豹変して攻撃してきます。マイクロチップの入った捨て猫で、以前の飼い主の飼い方に問題があったのではと思うのですが、目つきが変わって真正面から攻撃してくるのですがなぜでしょうか。動物病院から処方してもらったジルケーンと音楽療法で様子を見ていますが、豹変はなおりますか。(地域猫パパにゃん1212さんからの質問)

 Q:普段おとなしい猫なのですが、最近飼い主と娘に襲いかかっていきました。(かおりさんからの質問)

 Q:夜いきなり部屋を走りだしと思ったら、マットに爪が引っかかったのかシャーと威嚇した後、座っていた私(飼い主)を攻撃してきました。ただ座っていただけで何もしていなかったので驚きました。足元を攻撃されながらも部屋からすぐに出たことで落ち着いたのか、朝になると元に戻ってました。こうなったのは初めてではありません。(無記名)

猫が急に攻撃的になるのはどうして?どうしたらいい?

 猫は小さい動物ですが、本気で攻撃されると、歯と爪という武器を持っていて、空中戦もしかけてくるので本当に恐怖を感じる状況になります。殺されることはないとわかってはいても、攻撃してくるかもしれない、と思うとおそらく猫さんと一緒の部屋にいることも恐怖になってくると思います。ご質問されているご家族の皆様は本当に気が休まらない状況かとお察しします。

まずは落ち着いて、互いの安全を確保

 まずは、猫も人も興奮している状態ですので、お互いクールダウンすること、安全を確保することが重要です。もし猫さんを入れて置けるお部屋があったらそこに猫さんを隔離し、トイレもご飯もお水も入れてしばらく人と猫は距離をとりましょう。最低限のお世話でよいと思います。

攻撃行動が出たら部屋に猫を隔離し、しばらく距離をとる

 また、お部屋を1つ明け渡すことができない場合は3段のケージがおすすめです。ケージを買ってそこに猫さんを入れておき、しばらくかまわずに最低限のお世話だけにしておきます。特別なケージやお部屋に誘導するときは、無理に入れるのではなく、猫さんの好きなおいしいおやつを使って中に誘導します。

 数日たって落ち着いてきたら徐々にケージの外から遊んであげたり、お部屋の外からそっと覗いて遊んであげたりすることから始めます。

ホルモンに起因する激しい攻撃は薬も選択肢に

 しかし、ひどく攻撃的な場合だと、仲直りやケージやお部屋から出す頃合いや、安全なのかどうかもわからないと思います。
 激しく攻撃行動が出ている場合、脳の中の興奮した気持ちや攻撃性をコントロールするセロトニンというホルモンがうまく使えていなかったり枯渇していたりすることが多いので、治療の一つとして、脳内のセロトニンを増やしてコントロールする「セロトニン再取り込み阻害剤」というお薬を使って攻撃行動の治療をすることも多くあります。
 特に攻撃性が強く危険な場合は積極的にお薬を使いながら、徐々にご家族と仲直りをしていただきます。

攻撃行動に対して叱る、大きな音を出すことは避ける

 猫が攻撃的になってしまう理由の多くが不安や恐怖からです。そのため、猫の攻撃行動に対して、叱ったり大きな音を出して脅かしたりしないでください。びっくりさせたり恐怖を感じさせたりすると、余計に攻撃性がなくならないことになります。

 ご家族の猫が急に攻撃的になってどうしたらいいのかわからなかったらぜひ動物病院にご相談ください。お薬のオプションもありますし、獣医行動学という動物の精神科の専門分野があって、その分野が得意な病院や先生にご紹介いただけるかもしれません。猫を連れていかれない場合はまずは飼い主さんお一人でも、動物病院まで勇気を持っていらしてみてください。

動物病院にも相談しながら愛猫といい関係を築いていこう

 本年も1年間お付き合いくださりありがとうございました。来年はいよいよ寅年、ネコ科動物の年です。猫と暮らす皆様に良い1年の幕開けとなりますように。

(次回は2022年1月9日公開予定です)

(この連載の他の記事を読む)

【前の回】猫が大きな声で鳴いて困ってしまう時 理由を考えて対処、動物病院に相談も

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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