感動の一冊『犬は愛情を食べて生きている』 動物好きな方に読んで欲しい
映画『犬部!』の主人公のモデルとなった東京・杉並「ハナ動物病院」の太田快作院長の半生に迫った本『犬は愛情を食べて生きている』(山田あかね著/光文社)が発売中。動物を愛するひとには必読とも言える、感動の一冊を紹介します。
太田快作院長の半生をつづった本
太田快作先生について、映画やテレビでご覧になったことのある方が多いのではないでしょうか。今年の7月に公開された映画『犬部!』、それからフジテレビ系『ザ・ノンフィクション』「花子と先生の18年 〜人生を変えた犬〜」で大きな話題になりました。
現在、東京都杉並区の「ハナ動物病院」で院長を務める太田先生は、北里大学に在学中、獣医医科大学で必須とされていた「外科実習」に真っ向から異義を唱えました。実習によって動物は命を落としてしまうからです。
「一匹も殺したくない」という強い気持ちのもと、欧米の大学で一般的な動物実験代替法をみずから考案して実践。本書によると、動物実験代替法を広めるため、なんと日本の獣医医科大学を巡る全国ツアーまでやってらしたのです。
太田先生を中心に、彼に賛同する学生たちで「犬部」が生まれ、動物愛護の観点から発せられる彼の主張が、獣医科大学でしだいに主流になっていきました。
その型破りながらも、動物愛・犬愛にあふれた太田院長の半生に迫ったのが、山田あかねさん著『犬は愛情を食べて生きている』です。動物愛護・動物医療の実態、そして太田先生が愛してやまなかった犬「花子」との出会いと別れのエピソードを織り交ぜながら描かれています。
本書を手がけた映画監督・作家の山田あかねさんは、映画『犬に名前をつける日』では脚本を、また、フジテレビ系『ザ・ノンフィクション』の「生きがい 千匹の猫と寝る女」「犬と猫の向こう側」「花子と先生の18年 〜人生を変えた犬〜」など、犬と猫の命をテーマにした映像作品や書籍をつくられてきました。
まっすぐな視点で物ごとを描かれる方という印象で、ご自身も愛犬家ですが偏った見方はなく、愛情がありながらも淡々に描写される様は心にストレートに、よもやどすんと響いてきます。
動物実験できるの? 動物殺せるの?
読み進めていくうちに見えてくるのは、太田先生に影響を与えた人々の存在です。大学の教授や仲間、牧場の方々、コンビニの経営者、記者、動物愛護団体、獣医師など、多くの出会いが太田先生の人格を形成していったのではないでしょうか。
印象的だったことのひとつに、牧場主の次男・祐治さんが太田先生に尋ねた「動物実験できるの? 動物殺せるの?」という言葉があります。
当時、大学生だった太田先生は「動物実験はできる」と思っていました。しかし祐治さんから「海外には動物実験代替法がある」ということを教わり、太田先生は自分の浅はかさを恥じ、動物実験をすべて否定するのではなく、殺さなくていい方法があるなら、そうすべきだと考えるようになったそうです。この牧場でのエピソードでは、コップ1杯のミルクの重さにもはっとさせられました。
太田先生の全力疾走な行動力もさることながら、志を持った人々のエピソードは、動物愛護にまつわる背景以外に多くのことに気づかされ、考えさせられ、そして励まされます。
不幸になるのは、愛情がないとき
『犬は愛情を食べて生きている』という、本のタイトルからして「どういう意味?」と惹きつけられますが、冒頭の言葉で早々に涙がうるっときてしまうので、抜粋させていただきます。
太田先生のいるハナ動物病院に末期がんのミニチュア・ダックスフントがやってきたときのはなし。
――「ここ(動物病院)に来たという時点で、飼い主さんがその犬を愛しているわけだから、どんな治療をするかなんて、オプションにすぎない。犬はどんな治療でも、飼い主が愛して決めてくれたことなら、喜んで従うと思う」と言った。この言葉は多くの飼い主さんを救うと思う。どこまで治療するか、どれほど手をかけるか。動物と暮らしたことのあるひとなら、迷ったことがあるはずだ。(『犬は愛情を食べて生きている』より引用)――
「不幸になるのは、愛情がないとき」と言う太田先生に対して、山田さんは「それは犬に限らず、ひとでも同じかもしれない」。この神髄に迫る言葉の真意は、ぜひ本書でお読みいただけたらと思います。
- 犬は愛情を食べて生きている
- 著者:山田あかね
発売日 : 2021年6月29日
出版社 : 光文社
価格・仕様:1760円(税込み)、288ページ
*書影をクリックするとアマゾンにとびます。
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