ネコの鳴き声を聞き分けられますか? 「ニャー」に関する最新調査結果
今年9月、“猫語”を研究しているスウェーデン・ルンド大学のシュルツ博士がユニークな研究に対して贈られるイグ・ノーベル賞を受賞しました。彼女の研究チームは2011~2016年にかけて、ネコの鳴き声の音量や周波数などを音響学的に分析した論文を発表し、ネコが場面によって鳴き方を変化させていることを明らかにしました。
つまり、ネコは鳴き声を言語のように使い分けているのです。ではその鳴き方のバリエーションを、人は正しく理解できているのでしょうか。今回は、ネコの鳴き声を人がどのように理解してのるかを調査した論文" If I " What’s in a Meow? A Study on Human Classification and Interpretation of Domestic Cat Vocalizations"を紹介します。
ネコは“ニャー”を使い分けている!
ネコのMeow“ニャー”という鳴き声は、発声時の文脈により変化します。ポジティブな状況時に発声するニャーとネガティブな状況では、音の高さや時間が異なります。そもそも、ネコがニャーと発声するのは、子猫と母猫の間でのこと。大人のネコはネコ同士ではほとんどニャーと鳴きません。野生からイエネコへ家畜化され、さらに人への社会化がなされた結果、ネコは人に対してニャーと鳴くようになったといわれています。
イタリア・ミラノ大学の研究チームは3つの異なる状況で発せられるニャーを人がどのように認識しているか調査をおこないました。調査に参加したのは口コミやSNSの募集記事をみて応募した18歳から70歳までの225人。
まず研究チームは、10匹のメインクーン(6匹のメスと4匹のオス)の鳴き声を録音しました。1人の飼い主さんがおなじ環境で暮らしているネコたちです。そのネコたちが発生する3つの場面の鳴き声を記録します。
ひとつめは、ごはんを待っている時のニャー。ふたつめは、不慣れな場所にキャリーで移動したときのニャー。3つめは、飼い主がブラッシングしているときのニャーです。すべての鳴き声は、首輪に装着した小型のBluetoothマイクで録音しました。収録した鳴き声を生体音解析し、最も代表的な音を比較しました。
正しく“猫語”を理解するために
続いて、録音した3つの場面のニャーを使い、アンケート調査をおこないました。参加者はまず動物の飼育経験のほか、動物やネコに対する共感の度合いについて回答しました。次に、イヤホンを装着し3つの場面のニャーを聴き、それぞれどの場面のニャーなのかを回答しました。
結果は、人は3つの場面を統計的には聴き分けられませんでした。ただ、女性とネコを飼っている人、ネコと一緒に育った人は、そうでない人よりも正解率が高いという結果になりました。3つの場面を比べると、食べ物を待っているときのニャーは40.44%と一番聴き分けることができ、キャリーで隔離されたときは26.67%と一番低い数字になりました。
残念ながらネコの鳴き声を人は正しく理解できないという結果になりましたが、鳴き声だけでなく、耳やしっぽの動きなどのしぐさとあわせれば正解率はあがるでしょう。ネコの鳴き声を翻訳してくれるアプリなどもありますが、鳴き声だけでネコが伝えたいことを正しく理解するのは難しいかもしれません。ネコの様子をじっくり観察すれば、ネコが何を伝えたがっているかきっと理解できるはずです。
【お知らせ】現在、調査に協力してくれる飼い主さんと猫さんを募集中です。
詳しくはこちら https://forms.gle/PBoFg4qEGvQDYrCB8
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イラスト:長崎訓子(ながさき・くにこ)
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