10.5kg超えの巨漢猫「希千代」 大きな体からやさしさがあふれる愛されキャラ

 リードをつけて庭先にいると、散歩中の小型犬が遠くで固まり、通行人は「何ですか」「これって猫ですか」と確かめに来るという。そんな巨猫・まれ君こと「希千代」に会いに行きました。

(末尾に写真特集があります)

猫トンネルにも詰まる

 とんでもない大猫。そうわかっていて訪ねたのに、取材班の第一声は「わあっ、びっくり!」「すごい!」と、目が真ん丸に。

 10.6kgと言えば、小柄な猫の3匹分である。圧倒的な大きさだ。みっちりした被毛と、口周りのちょび髭模様が、さらに風格を堂々とさせている。

 だが、彼は、大きなお腹を床にこするように、こそこそっと物陰に逃げていくではないか。さらに逃げまどって、猫用トンネルに隠れようとし、頭だけ入れて詰まってしまった。

 図体に似合わぬビビり……いや、繊細でシャイな男なのだった。

 詰まった希千代くんを救出し、抱き上げながら、飼い主の佐々木麻衣子さんは言う。

「どっこいしょ。あー、よっこらしょ。まれを抱えるときは気合いが要るんです。腰にくるんで」

お母さんの麻衣子さんに抱っこされる白黒猫「希千代」
大好きなお母さんの麻衣子さんに抱っこされる希千代

3歳で引き取った

 まれ君は、4年前に、3歳で佐々木家にやってきた。麻衣子さんの親族が、ノラ兄弟を保護したものの、高齢で飼いきれなくなった。別の親族が引き受けていた間、兄弟猫の一匹は外に出て戻ってこなかった。

「放し飼いが心配で、すぐに残る1匹を引き取ったんです。その子は『タッキー』、いなくなった子は『翼』という名でしたが、どう見ても『タッキー』というアイドル顔ではなかった(笑)」と麻衣子さん。

 先住の、12歳の白猫「いちご」と11歳の黒猫「あずき」に続いて「大福」といった名も考えたが、しっくりこない。そこで閃いたのが、「希千代」! 長女の真由さんも愛読してる漫画『BLEACH(ブリーチ)』に登場する「大前田希千代」である。自らの巨体を「ふくよか」と言い張る強烈キャラだ。

 いちごちゃんたちは、やってきた大猫にギョッとしたものの、すぐに「御(ぎょ)しやすい相手」と見抜く。そう、希千代は、この上なく温厚で優しい男なのだ。

黒猫あずきちゃん
人見知りのあずきちゃんは、お客の前には姿を現さない(写真提供:佐々木麻衣子)

どうして大きくなったのか

 やってきたとき、すでに7kg超えだったが、4年でどうしてここまで大きくなったのか麻衣子さんにもわからない。

「家が何度か変わり、仲良しの兄弟もいなくなった希千代が可哀そうで、ちょっと甘やかして育てたかも。だけど、他の2匹と食べるものも量も同じなのに、どうしてこんなに大きくなったのか。動きたがらないせいかなあ」と、麻衣子さんは首をかしげる。

 病気は一度だけ。膀胱炎になって診てもらったところ、他の数値は問題のない健康体とのこと。ただ、肉厚すぎてエコー画面が見えにくいため、「もう少し痩せといたほうがいいかな」と先生から言われてしまった。

 ダイエット食を続け、遊びに誘うが、体を動かそうとしない。リードをつけて散歩に連れ出しても、同じところをちょっとウロウロして満足する。そんなまれ君を遠くから見て、犬たちがおびえるのである。

ホントは強いはず

「気の強い先輩女子には気を遣っているものの、私とふたりっきりになると、もう大ゴロゴロの甘えん坊丸出しに。夫も娘も可愛くてたまらないようです」と、麻衣子さん。

 まれ君は、先輩たちを慕っているのだが、あずきちゃんは、ひとりが好きで2階からめったに下りてこない。この日も、2階のどこかにお籠(こも)り中。いちごちゃんのそばにひっついては「近いのよ!」と怒られたりしている。

 たまに、いちごちゃんの不興を買って食らう猫パンチを「やめて」とばかり押し返すときもあるのだが、「緩すぎて、まったく反撃になってない」のだとか。

白猫いちごちゃんに怒られる白黒猫希千代
「近すぎ。圧がすごいのよ!」といちごちゃんに叱られる。女子には無抵抗主義

「潜り込みの突進力や爪とぎの跡からも、まれの力はものすごくて、本気で戦ったら大前田希千代のように強い男のはずなんです。なのに、いつも穏やかで優しくて。狭いところに突っ込んで出られなくなったり、台から足を踏み外したり、ドジなところも可愛いです」

 昨年暮れ、保護した子猫を譲渡するまでの間、子猫はまれ君のおっぱいめがけて追い回していたそうだ。

一家の末っ子

 居間の日当たりのいい場所に、ベッドが3つ並んでいる。小さな猫用ベッドは、小柄なあずきちゃんのもの。大きめのベッドは、いちごちゃんのもの。中型犬用の大きなベッドは、まれ君のものだ。だが、まれ君は、一番小さなベッドがお気に入り。入りきらずに頭やお尻をはみ出させ、満足そうに寝ているのだとか。

「抱いてみませんか」と、麻衣子さんがまれ君を抱き移してくれた。

 うっ。予想をはるかに超える重みだった。両腕と胸と下腹で支えなければならない。こんな米俵のようなずっしり猫は初めてだ。まれ君は、すまなそうな顔をしている。

 気は優しくて、力持ち。佐々木希千代、ここにあり。これからも健康で、愛される末っ子ととしてしあわせに。
(文・佐竹茉莉子 写真・芳澤ルミ子)

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