動物のライフサイクルに沿って21テーマを設定 アニドネが「AWGs」に込めた思い
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。アニドネは『日本の動物福祉を世界トップレベルに』をミッションに活動を続けています。
今回は、8月9日にスタートするアニドネの新しい取り組み「AWGs(Animal Welfare Goals)」が立ち上がるまでの舞台裏を紹介させてください。動物を愛するsippoの読者さんのような方と共に現在をぐっと良く変えていきたい、と本気で考えたプロジェクトです。
動物福祉のことを正しく知る場を
今年、寄付サイト「アニドネ」は10周年です。これまでの寄付額は約2億1千万円。動物保護や啓発団体などのがんばる動物系団体へ寄付を届け、後方支援をすることで動物福祉の向上を図る活動をしています。この10年間を振り返れば、とてもいい方向へ変わってきていると感じています。犬や猫の殺処分数はぐっと減少し、動物愛護法には数値規制が導入され、なにより「次に暮らすなら保護犬、保護猫を」と考える一般の飼い主さんは確実に増えています。
しかし、一方で犬や猫たちの気持ちに寄り添った暮らし方ができているか、というと自信を持っていい方向に向かっているとは言えない現状があります。コロナ禍でペットがプチブームになっています。本当に先々を考えて暮らすことを選んでいるのか、疑問がわきます。日本にはまだまだ過酷な暮らしをする野良猫たちが多くいて、短い一生を遂げています。人間と共に暮らすしか選択がない犬や猫にとって心地よく暮らしやすい社会なのでしょうか。まだまだ犬猫に優しい国だとは言えないと思っています。
犬猫の立場でSDGsを考えてみた
持続可能な地球環境を考えていくSDGs。地球人として緊急課題ばかりです。しかし、SDGsには、人と共に暮らす伴侶動物のテーマは見当たりません。けれど、SDGsの目標を動物目線に置き換えてみると、同じような問題点が見えてきたのです。
例えば、SDGs目標のひとつである『飢餓をゼロに』は野良猫や虐待にあっている犬猫たちの声なき声です。『すべての人に健康と福祉を』は、もちろん犬猫にだって必要なこと。
アニドネのAWGsプロジェクトチームは、日本における動物福祉の問題について整理しました。動物のライフサイクルに沿って問題を洗い出し、動物の視点から見た問題を体系化。それぞれの問題について、なるべくフラットな視点で事実を探りました。こうして、動物の3つの欲求のカテゴリーごとに、13のゴール・21のテーマを導きだし、アニドネ独自の指標である「AWGs」を設定しました。
8月9日から公開されるAWGsのサイトでは、この21のテーマについて、署名やアンケート、掲示板投稿などを通じ解決に向けて働きかけていきます。
「今を変えたい」という思い
アニドネの強みはさまざまな経歴を持つスタッフが豊富なことです。なにかしらのプロフェッショナルでありながら、動物福祉向上のために自らのスキルを提供してくださっています。今回のプロジェクトは3名でスタートし、ローンチにあたりアニドネスタッフや外部の方、あわせて10名以上が稼働してくれています。
寄付以外のことで私たちに何ができるのかを、昨年末から議論を開始しました。ディスカッションをする中で「知っている人と知らない人の振れ幅が大きいのが動物福祉の問題」という課題が見えてきました。「小型犬は散歩は行かなくてもいい?」「犬の留守番時間の適正ってあるの?」「断尾って何のためにするの?」「猫は自由に外を歩き回ったほうが幸せ?」と身近にいる犬猫なのにさまざまな疑問が出てきます。つまり、正解がない世界。であるならば、まずは問題を知ることができて意見が伝えられるサイトがあるといいのでは、という結論に至りました。
プロジェクトリーダーは望月舞さん。実家で保護猫を代々5匹飼っていて、今はワンちゃんとの暮らしを夢見ている舞さんにAWGsに取り組みにあたって感じたことを聞いてみました。
「AWGsの検討過程で色々な角度から動物業界を見ると、世間一般にはあまり知られていない問題があることや日本と世界のスタンスの違い、都会と田舎の違いなど一筋縄ではいかないことを痛感しましたが、まずは私も含めて知ること、そして少しでもよくなるように行動することが大切だと感じました。プロジェクトリーダーを任されてはいますが、各分野のプロフェッショナルが集まるチームであり、動物を取り巻く環境改善を望むという点で思いはひとつなので、プロジェクトの進行はとてもスムーズです。一人でも多くの人が動物のことを考えてもらうきっかけになればうれしいです」
そして、もう1名コアメンバーの伊藤咲耶さん。コンサル系を本業とする伊藤さんは、動物福祉全般を知りたくてアニドネのボランティアに参加されました。海外で暮らした経験が長い伊藤さんが感じる日本の動物観の違和感。そこが何なのか、国民性や文化の違いがなぜ動物の扱いをこうも変えるのか、そんな議論もしました。
伊藤さんは、「私は今年1月からア二ドネに入り動物福祉の知識が浅いのですが、代表の西平さんや先輩の望月さんの豊富な経験談を頼りに、AWGsゴールやサイトの取り組み案をまとめる役割を担いました。『どうすれば網羅的な動物福祉の“SDGs”を作れるだろうか』という点と、『多くの課題の中でも解決のインパクトが大きいものは何だろうか』の取捨選択を意識しました。13のゴールが普及し、多くの方がこれらのゴール達成を目指し能動的な取り組みをしてくださる日が来ることを願っています」と話します。
多くの人に知ってもらうために
今回、サイトデザインはみなで練りました。SDGsの概念をリスペクトしつつ、社会貢献や動物であることを感じさせること、難しいテーマでありながらポジティブな入口に。WEBデザインを株式会社サビーボの山内優奈さんにお願いしました。
山内さんに思いを聞きました。「デザイン制作では、ロゴはAWGsの顔となる大事なものなので、数ある案の中から慎重に、みなさんで意見交換をし合いながら決定しました。コーポレートカラーである緑を基調にし、AWGsで掲げているゴールの中には深刻なテーマも含まれているので、雰囲気が重くなりすぎないよう、親しみやすさも感じられるデザインを目指しました。様々なコンテンツが盛りだくさんなので、多くの方に興味を持って動物福祉について知ってもらえるとうれしいです」
今回のキモである意見を集める機能を構築してくれたのが、エンジニアの中村真さん。限られた予算の中でありながら、使いやすいシステムを考えてくださいました。
中村さんは「AWGsのシステムを構築する上で、13のゴールとそのターゲットをどのように整理し、どのように皆様へのアクションを促すかが課題でした。アンケート、署名、掲示板の3つのアクションによって、ユーザーの皆様のご意見を広く頂戴出来る仕組みができあがったと思っております。ペットの環境を取り巻く様々な問題が、AWGsによって解決されていければと願っております」と話してくれました。
そして、どんないい企画であっても来訪してくれる方がいないと意味がありません。アニドネボランティア組織クラブアニドネの永田志織さんがSNS担当に挙手してくれました。3人の子育てママで、自分の中にある大切な動物福祉活動を止めたくない、という信念がある方です。
永田さんはこう話してくれました。「SNS発信では、犬や猫と暮らしている、いないに限らず、誰もが自分ごと化できるよう、わかりやすい発信を心がけていきます。Instagramやnoteでは、SNSアンバサダーとして、インフルエンサーの方々にもご協力いただき盛り上げてまいります。是非一緒にAWGsを広めましょう!」
希望に変わる10年にしたい
動物福祉の向上とは、つまり動物に対する概念を変えるのですから、とても難しいことだとわかっています。AWGsをきっかけに興味を持ってくれる方が一人でも増えれば、私たちが懸命に考えたプロジェクトが無駄ではないはず、と信じ進みます。
今回、21のテーマに向かって少なくとも2年間は企画が続きます。その過程で新たなテーマ出てくるかもしれません。変わりゆく日本の動物福祉の未来がもっと明るくなるよう、アニドネは尽力し続けたいと思っています。
(次回は9月5日に公開予定です)
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