猫の歯磨きやブラシ、かまれて出来ない時 お手入れされるといいことがあると教えよう

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回も、入交先生が読者から寄せられた質問に答えます。

ブラシや爪切りをするとかむので困っている

 8月に行われる地元の七夕祭りが今年も中止となりました。我が地元の夏の風物詩のイベントなだけになんともさみしいです。世界的なこのパンデミックが収まり、以前の夏が戻ってくることを祈ります。

 Q1:ペットショップから生後4カ月半のノルウェージャンの男の子を迎えました。穏やかで甘えん坊で飼いやすい子ですが、手入れしようとするとかんできます。次第に本気がみになるので手入れをやめています。ブラシ、爪切り、歯ブラシ、などです。毛玉や歯石などの予防をしてあげたいので困っています。

 A:お手入れができないと困りますよね。ノルウェージャンの男の子は、「いやだ、やめて」というために歯を当てているのだと思います。だから強引に行っていくと「絶対に嫌だからね!」と本気になって興奮してくるのでしょう。

 この場合、お手入れされるといいことあるよー、と教えていく作戦で行きましょう。大好きなおやつを使ってください。ブラシや歯ブラシを体や口に1秒だけ当てて、「いい子」と言っておやつを一口あげます。

猫と歯ブラシ
お手入れされるといいことがある、と教えていこう

 これを繰り返していくと、ブラシなどを体にあてられるのは我慢できるようになるので、次は、例えばブラッシングならブラシを体に当てて、3秒待ち、「いい子」と言っておやつをあげます。できたら、今度は5秒、というようにお手入れを徐々に長く我慢できるように練習していきます。そして我慢できたら必ずご褒美をあげましょう。

 うまくできないときは、まずはおやつをあげながらお手入れをしていきましょう。少しできるようになったら、まずはお手入れを1秒だけ行って、おやつをあげる、という手順に移行しましょう。この方法を専門家は「拮抗(きっこう)条件づけー系統的脱感作」と言っています。

同居猫の餌を横取りしようとする時の対処法は?

 Q2:雌7歳、雄6歳の猫を飼っています。雌は保護猫で、雄も知り合いの家の庭で産まれた子です。雌は餌をがっついて食べては吐く、を繰り返しますが、雄はゆっくりかんで食べるので、いつも雌が横で餌を横取りしようと狙っています。一日中餌を要求して鳴いていますが、雄が食べる時にしかあげないようにしたところ、嫌がらせかウンチを所構わずする様になりました。こんな子は初めてで、どうしたものか、この子だけケージで飼うか迷っています。(しげさんからの質問)

フードを食べる猫
2匹以上の猫がいる場合、別の部屋で食事をした方がよい場合も

 A:2匹以上の猫さんのいるご家庭では、食事を猫同士が取り合ってしまうことはよくあります。猫が食事を食べるスピードは違いますから、別のお部屋で隔離して食べてもらうほうがいい場合もあります。ご相談者様のお宅も食事時間は隔離をした方が、どちらの猫もストレスがかかりにくいと思います。

 ちなみに我が家も食事に関しては、長男の17歳の猫はキッチン、次男の2歳の猫はダイニングで食べさせています。もちろん2部屋はドアで行き来できない状態です。

 また、食べ方のスピードもご相談されていました。ゆっくり食べさせるために食事を「知育トイ」「パズルフィーダー」と言われるおもちゃに入れてあげるのも1つです。また早食い防止のお皿も売っていますので、ぜひ探してみてください。

猫トイレに入る猫
猫のトイレもストレスのないものを選ぼう

 所構わずウンチをする行動に関しては、ストレスも関係しているかもしれません。

 一般的に、猫は大きな面積のトイレが好きです。排泄の前後に掘ったり埋めたりができるような大きさのものを用意します。また、システムトイレは、抗菌効果とは言いますが、汚れた砂がずっとあるわけですから、においに敏感な猫にはストレスになると思います。固まるタイプの猫砂を使い、トイレが汚れたらすぐに砂をすくってきれいにしてあげるとよいです。また、狭いトイレでカバーがあるものは一般的に嫌いなので、そのようなタイプのトイレを使われている場合は、トイレの環境改善も考えてみてください。

 最後に、猫が好まない行動をしている場合、叱ったり、たたいたり、音を立てて行動をやめさせるのは余計に猫を怖がらせ、猫との関係性が悪くなります。言葉の通じない動物たちにとって、体罰や叱ることは意味が分からないだけではなく、ただ怖くなって不安になります。家族に対して恐怖を感じながら、なぜ恐怖を与えられているのか理由がわからないまま、ただストレスをためることになってしまいます。

 猫は「単語」の意味を覚えるぐらい頭のいい動物ですが、残念ながらセンテンス(文章)になると意味が分かりません。「これをやっちゃダメでしょう」と言われてもよくわからないのが事実です。

 ストレスになって、ご家族との関係が崩れるので、体罰を与える、叱る、大きな音を出して驚かす、などの方法はやめたほうが良いでしょう。

(次回は8月8日に公開予定です)

(この連載の他の記事を読む)

【前の回】高齢の猫が大声で鳴く、対処法は? まず動物病院で検査、体の不調や認知症の可能性も

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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