高齢の猫が大声で鳴く、対処法は? まず動物病院で検査、体の不調や認知症の可能性も

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回も、入交先生が読者から寄せられた質問に答えます。

(末尾に写真特集があります)

猫とまったり

 梅雨に入りそうで入らない、そんな毎日ですね。じめじめの季節は洗濯物が乾かないのでつらいですが、外を眺めながら猫とまったり本を読むには最適な時期です。

 今回はたくさんのご質問をいただきました。ご質問の内容がだんだん高度になるので、解答もドキドキしてしまいます。さて、さっそく始めましょう。

高齢猫が大声で鳴く、どうしたら鳴きやんでくれるの?

 Q1、最近、よく大声で鳴くようになりました。15歳の高齢のメス猫なのですが、認知症でしょうか?(ぴっぴさんからの質問)

 Q2、15歳になる避妊手術済の老猫です。私の姿が見えなくなると、大声で鳴き叫び近所に響き渡ります。寝ていても飛び起きるぐらいの声量で、正直ツライです。この子はなぜこんなに鳴いているのですか?どうしたら鳴きやんでくれますか?(うしさんからの質問)

 Q3、猫(メス、10歳)が急に大声で鳴くようになってしまいました。つい先日、同居猫を亡くしたので、そのストレスかもしれません。大声で鳴く猫は、福島からの被災猫で、引き取ったばかりの頃もそんなふうに大声で鳴くことがありました。何かのストレスなのか、または病気が隠れているのか。対処法があったら知りたいです。(ゆきばんからの質問)

猫
急に大声で鳴くようになった、対処法は?

 A、高齢の猫さんが大きな声で鳴くようになった、というご相談を3件もいただきました。一緒に寝ていらっしゃると耳元で大きな声で鳴かれるとつらいですし、集合住宅だとご近所にも迷惑になるかもしれないので、お困りと思います。

 高齢の猫が大きな声で鳴く場合に、考えられることとして、甲状腺機能亢進症、高血圧、認知症があります。ほかにも何らかの体の不調があって、大きな声で鳴いて私たち家族の気を引いている可能性もあります。

 まずは、動物病院で甲状腺ホルモンの検査や血圧と腎臓機能の検査をしていただきましょう。猫も1年に1回は人同様、健康診断を病院でしていただくことをお勧めします。元気な時の検査データを持っておくと、もしも病気をして検査を受けた時にそのデータが異常値なのか、もともとその数値が高い子なのかわかります。

猫もなるべく体と頭を動かす

 もし特に体的に問題がないようでしたら、認知症の可能性もあります。猫も人と同じように認知症になることがあります。夜中に鳴いたり、トイレの場所がわからなくなっておもらししたり、イライラして攻撃的になったりします。

 人と同じように、実は認知症の症状コントロールをするのにお食事は重要です。ぜひ抗酸化成分の入っている食事やサプリメントを動物病院で紹介いただくとよいと思います。また、猫も体と頭をなるべく動かすことで認知症の進行が緩みますので、工夫をしないとおやつやフードが食べられないような「知育玩具」を与えてみたり、おもちゃを使って無理なく少し体が動かせるようにしてみましょう。

「知育玩具」は、ペットボトルの側面に穴をあけて中にフードを入れたり、ガチャガチャのボールに穴をあけたり、お菓子の箱に穴をあけてフードをとらせたり、卵パックにフードを入れてそこからフードをとらせたりするようなおもちゃが作れます。この記事の最後にある写真特集でご紹介してますので、ぜひご覧ください。また「まなびばsippo」では、このような「知育玩具」の実際の使い方など動画で配信しています。

高齢猫が飼い主と楽しめる遊びを

 まだ認知症になっていなくても、大きな声で鳴くことで飼い主の関心が引けるので、あえて大きな声を出している場合もあります。その行動を起こさせる原因は猫との遊びの時間が足りないのかもしれません。猫も人が大好きで、人と遊ぶのが大好きです。ぜひ「夕食後は遊ぶよ」と一緒に遊ぶ時間を忙しい生活の中でも与えてあげてください。

 高齢の猫は猫じゃらしで飛び回る遊びは好まないかもしれませんが、一緒に横にいること、ボールを少し転がしてあげること、トレーニングをして技を教えてあげることなどできると思います。ちなみにうちの猫は「ハイタッチ」や「ついて歩く」のなどの技ができます。猫も楽しくトレーニングしてあげると脳も使うし、飼い主との豊かな時間を与えることができます。

 今回一部しかお答えできませんでしたが、次回もいただいたご質問になるべく多く答えられるようにしたいと思います。

(次回は7月11日に公開予定です)

【前の回】猫が飼い主を激しく襲ってくる 確実に言えるのは「攻撃的にさせたのは飼い主でない」

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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