4歳になった愛猫に贈った爪研ぎ 外で暮らす猫たちの幸せを願った商品だった

爪研ぎと猫
おむすび型の爪研ぎを抱えるはっぴー

 我が家の愛猫はっぴーが、5月で4歳になりました。体が一段と大きくなり、顔も精悍(せいかん)になりましたが、好奇心は子猫時代のまま。プレゼントした爪研ぎハウスが気に入ったようで、遊びながら面白い姿を見せてくれました。その爪研ぎハウスには思いがけない物語がありました。

(末尾に写真特集があります)

ぐんぐん成長

 魚屋さんの屋根が崩落して、保護された我が家のはっぴー。

 ついこの前まで赤ちゃんだと思っていたのに、早いもので、もう4歳です。

 ちょうど1年前、「3歳になり。6㎏超えの立派な青年に」と記したのですが、ぐんぐん体重が増えて、今や7㎏超えです。

 猫の4歳といえば、人の32歳。だいぶオトナになってきたわけですが、はっぴーはまだまだ幼い面もあります。何にでも興味を持ち、遊ぶときは真剣そのもの。そういうところが、とっても可愛いのですが。

猫
おむすびに乗ってみました

贈り物にスリスリ

 今年の誕生日、はっぴーに何をあげようかなと考えていた時、猫の取材に伺ったお宅で”大きなおむすび”のグッズを見かけました。じつは私は無類のおむすび好き。気になって、飼い主さんに聞いてみました。

「何ですかこれ」

「爪研ぎです。のりの部分がのれんになっていて、猫が中に入れるんです」

 飼い主さんによれば、この商品を扱う会社「肉球町」は埼玉にあり、会社のスタッフが猫の保護活動に尽力しているそうです。

 興味を持ち、商品を取り寄せてみました。

 ごま、五目、玄米の3種類から、玄米おむすびを選びました。

 届いた箱を開けると、はっぴーは三角のおむすびに、興味津々。

 ばりばりと爪を研ぎ始めました。上に乗ったり、のれんをくぐったり。7㎏のでっかい体だから中には入れないかな?と思ったら、無事にすっぽり!またたびを振りかけたら、「もう手放さない!」という感じです。

 はっぴーと私は、日ごろから猫じゃらしでよく遊ぶのですが、はっぴーは遊んでいる途中で、必ずどこかに身を隠します。おむすびはその隠れ場にも、もってこい。猫の習性をよく考えて作られているのですね。

 研げて、乗れて、中に入れる、なかなか味わい深い“ウマい”おむすびです。

おむすびの中に入って遊ぶはっぴー

猫に興味のなかった台湾の女性が

「肉球町」のホームページを見ると、おむすびの他にも、パン型のクッションや、のれんつきのトイレなどがあります。

 のれんというのが、何とも和風ですが、じつは、このおむすびを扱う会社を立ち上げたのは台湾の出身の方なのです。

 取締役の楊茜雯さんに、どんな背景で会社をはじめたのか話を聞いてみました。

「私はもともと猫に興味がなかったんですよ。でもいろんな出会いがあって。いつのまにか、深く関わるようになりました」

 楊さんは2014年に、別の仕事で日本にやってきました。

 2016年、元の飼い主が飼えなくなった三毛猫のことをたまたまネットで知り、引き取りました。日本の三毛のきれいな模様にひかれ、猫が好きになったそうです。

 その翌年、楊さんが心を痛めた出来事がありました。

「ジョギング中に寄った西川口の公園に野良猫がいて、餌を探してふらふらとゴミ箱をあさっていた。かわいそうになって猫缶を買ってあげたら、子猫も出てきて……この猫たち、いったいどうしたらいいんだろうと、そこから猫の問題を考え始めました」

 その後、楊さんは公園で猫の世話をする夫婦(私が先日、取材した方のご両親)と知り合い、保護について相談したり、協力しあうようになったといいます。

傘の下の猫
雨の中、傘をたてかけて外の猫に食事をあげた楊さん(楊さん提供)

 楊さんは、おなかをすかせた野良猫を減らしたい一心で、家の近所に住む約80匹の野良猫の避妊、去勢手術をした後、リリースして見守り、子猫については家族を探しました。

 猫の保護を続けるにはお金がかかります。楊さんは「寄付を募ることはしたくない」と考え、2019年11月、保護活動費を捻出するため、ペットグッズなどを販売する会社を作りました。グッズの利益を保護猫のために使うことにしたのです。

「日本人の男性と、知り合いの2人の中国人と自分の4人で出資して作りました。今は、3人で会社をやっています」

 スタッフとともに保護した猫を、日本在住の中国人に譲って交流するためのサイトも作りました。

「日本のやり方に倣い、ワクチンや血液検査、避妊去勢をした上で譲ります。譲った後の猫の情報も聞き、もし中国に帰ることになったり、飼えなくなったら、会社に返してもらう約束も取り交わしています。そうでないと、猫が捨てられたりしてまた不幸になるから」

「肉球町」という社名はユニークですが、犬や猫たちの「肉球を守りたい」という楊さんの動物へ思いが込められています。

「おむすびや、のれん付きのトイレは和風ですが、海外の人がデザインしています。とくに海外の若い人は『日本の文化や美しさ』をよく学んでいますね。私も、日本の美をあらためて伝えたいという思いで商品を選びました。そして、猫が喜んで使うか、家の猫で試しています」

 会社の設立後まもなく、コロナの影響で船便による仕入れが止まってしまい、思うように販売ができなくなった時期もあったようです。でも、楊さんは前向きです。

「まだまだ新しい会社。猫たちのために、これからがんばりたいと思っています。少しでも多くの猫たちが、より幸せに暮らしていけることを願いながら……」

 保護猫はっぴーの誕生日プレゼントに選んだ日本のソウルフード=おむすびの形のグッズには、思いがけない「猫への愛」という具が、ぎゅっと詰まっていました。

 そんな背景を知ってか知らずか、はっぴーはうれしそうに今日も爪を研いでいます。

 はっぴーくん。その調子でバリバリ爪を研いで、今年も健康に過ごそうね!

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は18歳の黒猫イヌオと、4歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ねこ飼い日記
古い魚屋の天井が崩れ、落ちてきた子猫「はっぴー」。その成長と、引き取った筆者との生活ぶりを同時進行でつづっています。
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