空港で飼い主を待ち続けたロシアの忠犬 実話を映画化した『ハチとパルマの物語』公開

©2021 パルマと秋田犬製作委員会
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 往年の名作『ハチ公物語』(87)や、リチャード・ギア主演のリメーク映画『HACHI 約束の犬』(09)で、今や世界中で忠犬の代名詞となった秋田犬のハチ。本作『ハチとパルマの物語』では、ハチをほうふつとさせるロシアの忠犬パルマのエピソードが描かれますが、これまたハンカチなしでは観られない感動のドラマに仕上がっています。

(末尾に写真特集があります)

空港の滑走路で2年間待ち続けた忠犬

 このパルマは、モスクワで最古とされるヴヌーコヴォ国際空港の滑走路で、2年間飼い主を待ち続けた忠犬です。実は4度目の映像化作品となりますが、過去3作はいずれもドキュメンタリーで、実話をベースにした初のフィクション映画となりました。

 主人公は最愛の母を亡くし、一度も会ったことがないパイロットの父親に引き取られることになった少年コーリャ。自分を見捨てた父親に全く心を開かないコーリャは、空港から故郷に戻ろうとします。

 一方、ジャーマンシェパードのアルマは、飼い主とプラハに行く予定が、搭乗に必要な許可証の不備により乗機の許可が下りず、飼い主によってこっそり滑走路に放たれます。アルマはその後「パルマ」と呼ばれて空港に住み着き、ひたすら飼い主の帰りを待ち続けることに。

 孤独を抱えるコーリャは、ひょんなことからパルマと出会い、お互いに心を通わせていきます。自身の思いも投影し「飼い主のもとへ戻してあげたい」と思ったコーリャは、ある行動を起こします。

©2021 パルマと秋田犬製作委員会
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犬のリリヤは“本物の女優”、ザキトワ選手も出演

 アレクサンドル・ドモガロフJr.監督は、パルマにまつわる新聞記事をインターネットで見つけてから映画化を熱望し、この日ロ合作映画にて待望のメガホンをとることになりました。

 子役を含め、ほぼすべての俳優や犬たちはオーディションで選ばれましたが、演技初挑戦とは思えないコーリャ役を演じた9歳のレオニド・バーソフと、パルマ役に抜擢(ばってき)された7歳のシェパード、リリヤの熱演が白眉です!

 愛する人に裏切られた悲しみを分かち合うコーリャとパルマ。愛を渇望するコーリャの真っすぐなまなざしと、それを受け止めるパルマを見ていると、庇護欲(ひごよく)を大いにかき立てられます。

 パルマ役のリリヤは、照明やカメラ、飛行機の騒音でさえ全く怖がらなかったとか。飼い主に見放されてしょんぼりする表情や、人間たちから追われた時の怒り、コーリャを案じる時の母性を感じさせる目線なども非常にエモーショナルで、スタッフ陣から“本物の女優”とお墨付きをもらったのも納得。

 そして、sippo的に注目したいポイントは、『ハチとパルマの物語』が示すとおり、しっかりと日本が誇る秋田犬もフィーチャーされている点です。モスクワでのロケでは、愛犬「マサル」を溺愛(できあい)するフィギュアスケートの金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手が本人役で出演するほか、秋田犬の里親もしっかり紹介されます。

 また、秋田で撮影したアレクサンドル・ドモガロフと一緒に散歩する犬は、マサルのいとこと同じ血筋の秋田犬ですし、愛くるしい子犬たちも多数登場して、思わずほっこりします。

©2021 パルマと秋田犬製作委員会
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親と子の絆が奇跡のドラマを生み出す

 特筆すべき点は、忠犬と飼い主の絆だけではなく、共に不器用である父と息子が一から絆を作り上げていく過程を丁寧に紡ぎ上げた点です。人だけではなく動物においても、家族として迎え入れることの責任を、深く掘り下げたドラマとなっています。

 父親は若かりし頃に息子を捨てた負い目を感じているし、自身の生い立ちを話すシーンも実に感慨深いです。ある意味、コーリャを迎え入れたのは、その罪滅ぼしの思いもあったのではないかと。また、パルマを空港に置き去りにした飼い主に対する憤りは、過去の自分に向けたやるせない思いと重なるものが大きかったはず。

 さらに本作では、ドモガロフJr.監督と、実父でロシアの名優であるアレクサンドル・ドモガロフとの初タッグが実現したことも、物語に深みを与えたのではないでしょうか。幾重も積み重ねられた親と子の絆は、ロシアのマトリョーシカのように重なり合い、奇跡のドラマを生み出しました。

 コロナ禍で国際交流もままならない今の時代、日ロ合作映画が果たす役割も大きいでしょうし、何よりも人と人、人と動物がふれあえるドラマは、心を豊かにしてくれそう。犬好きにはたまらない感動作なので、多くの方に観ていただきたいです。

『ハチとパルマの物語』は5月28日(金)より全国ロードショー
公式サイト:akita-movie.com
監督:アレクサンドル・ドモガロフJr. 
脚本:アレクサンドル・ドモガロフJr./村上かのん
出演:渡辺裕之、藤田朋子、アナスタシア、壇蜜、高松潤、山本修夢、早咲、アレクサンドル・ドモガロフ、レオニド・バーソフ、ヴィクトル・ドブロヌラヴォフほか
配給:東京テアトル/平成プロジェクト
©2021 パルマと秋田犬製作委員会

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山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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