園芸店に捨てられていた黒猫オレオ 急死した愛猫へのペットロスから救ってくれた

 2016年、愛猫を急死で失ったショックから抜け出せずにいたTOMOMIさんは、園芸店で保護された子猫に出会う。衰弱しきった姿を見過ごせず、その場で引き取りを申し出た。「食べ物の名前をつけると長生きする」という縁起を担ぎ、「オレオ」と名づけた黒猫がペットロスから救ってくれた。

(末尾に写真特集があります)

健康だった愛猫が突然

 猫好きのTOMOMIさんは結婚前から連れ添ったマリンちゃんを筆頭に、4匹の猫と暮らしてきた。

 2005年、2匹目に迎えたアメリカンカールのカールくんは、生まれつき心臓と腎臓疾患を抱えていることが判明したが、投薬を続けながら成長。2009年、マリンちゃんが15歳で亡くなったあとには、アメリカンショートヘアのチャッピーくんが加わった。

「ペットショップで売れ残り、少し大きくなってしまっていた子で、行先が気がかりで。ひとりになったカールも寂しそうにしていたので、それならと迎えました」

アメリカンカールのカールくん(左)とアメリカンショートヘアのチャッピーくん
仲良しだったカールくん(左)とチャッピーくん

 2匹はすぐに意気投合し、穏やかな時間が6年あまり続いた。通院生活の続くカールくんと対照的に、健康優良児だったチャッピーくんが倒れたのは2016年2月。前触れもなく肺水腫を起こし、救急で運び混んだ病院でそのまま旅立った。6歳10カ月。病気知らずで過ごしていただけに、ショックは大きかった。

「『心因性の病気は突然なことが多いんですよ』と説明されましたが、あまりにも急で気持ちが追いつきませんでした。本当にしんどくて、なかなか立ち直れませんでした」

猫草を買いに立ち寄った園芸店で

 ペットロスを引きずりながら半年近くが過ぎた。7月半ば、カールくんの猫草購入のために立ち寄った園芸店のペット用品売場に保護された子猫がケージに入れられ、飼い主募集が行われていた。

「お店の駐車場で保護されたそうなのですが、冷房がガンガン効いている店内でタオル一枚のなかに鼻ちょうちんを出してうずくまっていたんです。見るからに具合が悪そうで、こんな寒さのなかにいて大丈夫かなと思いました」

園芸店で保護されていたときの黒猫オレオくん
園芸店で保護されていたときの様子

 新たな猫を迎える気持ちなど、まだなかった。だが、そのとき何かに突き動かされるような気がした。

「元気だったらそのまま離れていたかもしれません。あまりに具合が悪そうな姿が心にひっかかって。すぐにでも出してあげなければと思いました」

 本来は1週間程度かかるという手続きももどかしかった。

「すぐ引き取りたいと説得して、なんとか2日ほどで迎えることができましたが、その間も心配でたまりませんでした」

 引き取りの日はマリンちゃんの命日だった。

「オレオを迎えることをお墓参りで報告をしたあと譲り受けに向かったのですが、その道中、操作していない主人の携帯から私の携帯に電話がかかったんです。それまでもマリンが亡くなった時や四十九日に、一緒に聞いていた携帯の音楽が鳴ったり突然電化製品が動くなど、不思議なことが何度かありました。だから、マリンからのメッセージのような気がしたんです。『これから忙しくなるからね! 泣いている暇はないよ!』って」

風邪の悪化から回復。しかし……

 自力で食べられないほど弱っていたオレオくんを連れ病院に直行すると、1、2日でも遅ければ間に合わなかったかもしれないと告げられた。生後約3カ月。間一髪の状況で救い出されたオレオくんは酸素室に入って診察を受けたあと、自宅で投薬治療を続けたが4日目に急変する。

「口を開けて呼吸が荒くなったので、すぐ病院に連れていき、そのまま入院でした」

黒猫オレオくん
退院後、元気を取り戻したオレオくん

 悪化した風邪から10日ほどで回復したが、今度は別の問題が発生した。

「退院の決まった日にコクシジウムがわかったんです。ひとまず連れ帰り、家族総出でウンチの見張り番。ウンチが出たらすぐ取って、汚したら全部洗って熱湯消毒。見られる人がいない日は病院に預ける、ということを1週間ほど続けました。本人の体は元気になっていたので、ケージから出たくて昼夜かまわず鳴いたり、柵をガシャンガシャン鳴らして大騒ぎ。みんな寝不足でした(笑)。でも、そのバタバタで悲しみが吹き飛んだんです」

先代猫の穏やかさを受け継いで

 元気になったオレオくんをカールくんと対面させると、大喜びで駆け寄った。

「まるで親に会えたかのようにすっ飛んでいったんです。あまりの勢いでカールは一瞬引いていましたが、もともとフレンドリーな子なのですぐになじみ、よく可愛がってくれました」

 昨年末、カールくんは15歳2カ月で旅立った。「何度ももうダメかもという危機を乗り越え、本当に頑張ってくれました」と振り返る。

 1匹になったオレオくんは、その後どう過ごしているのだろう。

「歳をとった猫とのんびり暮らしていたからか、オレオはおとなしく、あまり走り回ったりいたずらしたりがないんです。小さな段差を踏み外したり、昼寝中のステップから落ちたり。どんくさいのですが、そこがいいところですね(笑)。いつも暖かいところでおなかを出して寝ているような無防備な子です」

黒猫オレオくんとアメリカンカールのカールくん
へそ天でくつろぐオレオくん(左)とカールくん

 パンやお菓子作りの腕前がプロ並みのTOMOMIさん。食卓に並べると、その近くにオレオくんがちょこんと座る。その様子をインスタグラムに投稿した写真が好評だ。

「カールやチャッピーも同じだったのですが、『何してるの?』ってのぞきに来て、クンクンしたら近くで寝ています(笑)。穏やかな性格とか人の言葉を理解してくれることとか、カールのいいところを受け継いでくれている感じです」

 涙に暮れていた家族に笑顔を取り戻したオレオくんは、先代猫の魅力を継承し、今日も愛嬌たっぷりにおなかを出している。
(写真提供:TOMOMIさん)

TOMOMIさんのインスタグラム:@marin3

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久保田綾
八ヶ岳山麓で虫やカエルを愛でながら育つ。早稲田大学卒業後、日刊スポーツ新聞社、角川書店でスポーツ記者、編集者として勤務したのち独立。2010年、自宅の庭に現れた子猫(もこにゃん)を保護してからは、本業に支障が出ない程度に働くフリーライターとして糊口をしのぐ。本業は猫の下僕。

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